大腿骨近位部骨折者の心
📖 文献情報 と 抄録和訳
大腿骨近位部骨折は心理社会的影響が大きい;質的研究の系統的レビュー
[背景・目的] 大腿骨近位部骨折は高齢者によく見られる深刻な外傷であり、予後不良を特徴とする。目的本システマティックレビューは、大腿骨近位部骨折を負った人々に対する心理社会的影響に関する定性的なエビデンスを統合することを目的とした。
[方法] 大腿骨近位部骨折の心理社会的影響を報告する定性的研究を5つのデータベースで検索し、参考文献リストの確認と引用追跡調査で補足した。 データを帰納的に統合し、方法論的な質、一貫性、関連性、妥当性を考慮して、定性的研究のレビューにおけるエビデンスの信頼性アプローチを用いて、調査結果の信頼性を報告した。
[結果] 57件の研究が対象となった。 919人の大腿骨近位部骨折患者(3件の研究を除くすべての研究で年齢中央値が70歳以上)、130人の介護者、297人の臨床医から、周術期から骨折後12ヶ月以上の期間にわたってデータを収集した。
図の左側は、心理的反応を表している。「人生を変える出来事」の周りには3つの主な感情やテーマが含まれている:
1. 深い喪失感(Profound Loss) :患者は、身体機能や自立性、さらには社会的役割を失うことに対する深い悲しみを感じることが多い。
2. 将来への不安(Worried about the Future) :患者は、今後の生活、健康、再発のリスクに対する不安を強く抱くことがある。
3. 否定的な感情(Negative Emotion) :不安、鬱、ストレスなどの否定的な感情が、骨折後の生活で長期間持続することがある。
・これらの感情は、外部からの「否定的な社会的態度(Negative Societal Attitude)」によってさらに強調される。これは、患者が周囲からの期待やサポート不足、あるいは偏見により、心理的な負担が増すことを示している。
・図の右側には、患者が最終的に受け入れる「新しい現実(New Reality)」が示されている。これは、時間の経過とともに、かつての生活に戻れないという現実を受け入れるプロセスを表している。患者は新たな状況に適応し、元の生活様式とは異なる新しい日常を受け入れることになる。
これらの調査結果については、中程度から高い信頼性が認められた。
[結論] 大腿骨近位部骨折は生活を一変させる出来事である。多くの人々が、否定的な社会の態度という状況の中で、大腿骨近位部骨折後に深刻かつ長期にわたる心理社会的苦痛を経験している。リハビリテーション中の心理社会的苦痛の評価と管理は、大腿骨近位部骨折後の人々の結果を改善する可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
僕たち医療者は、何といっても、入院を必要としていない、健常者である。
「私の本当の気持ちは、分からないわよ」
という類の言葉を、複数回かけられたことがある。
「そうだよな」と、心からそう思う。
僕たち医療者は、ほとんどの場合、当事者としての気持ちは、分からない。
だが、相手を知ろうと勉強したり、そこから想像したり、努力したり、することはできると信じたい。
今回の抄読研究は、リハビリテーションの対象となる主要な疾患である大腿骨近位部骨折患者を対象として、その心を推しはかるためのシステマティックレビューを示してくれた。
このレビュー論文をしっかり読み込むことで、積み上げられてきた実際の患者さんの心を、少しでも理解したいと切に願う。
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