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高度専門理学療法士。診断,管理能力の是非


📖 文献情報 と 抄録和訳

高度専門理学療法士は運動器障害患者の診断とトリアージを行いながら効果的なケアを提供できる:系統的レビュー

📕Lafrance, Simon, et al. "Advanced practice physiotherapists can diagnose and triage patients with musculoskeletal disorders while providing effective care: a systematic review." Journal of Physiotherapy (2023). https://doi.org/10.1016/j.jphys.2023.08.005
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✅ 前提知識:高度専門理学療法士(advanced practice physiotherapists, APPTs)とは?
・患者を評価・診断する役割を果たし、手術や浸潤などの他の医学的治療が必要な場合にのみ、整形外科に紹介する(📕Lowry, 2020 >>> doi.)
・患者/クライアントへのケアを安全かつ適切に行う責任、リスク管理の責任を担う(🌏WCPTポリシーステートメント_日本語版 >>> site.)

[背景・目的] 高度理学療法士(advanced practice physiotherapists, APPT)と医師との診断および手術トリアージの一致度は?通常の医療と比較した高度理学療法の臨床的有効性は?デザインメタアナリシスを含むシステマティックレビュー。

[方法] 文献検索Medline、Embase、Cochrane CENTRAL、CINAHLを2022年3月まで検索した。研究選択基準APPTと医師間の診断または外科的トリアージに関するコンコーダンス研究、および運動器障害を有する参加者に対する通常の医療と比較した高度理学療法(APP)ケアモデルの臨床的有効性を比較した無作為化比較試験。データの統合メタアナリシスは、一致率と臨床転帰について行った。エビデンスの確実性を評価するためにGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)を用いた。

[結果] 19件の一致研究(n = 1,745)および6件のランダム化試験(n = 1,960)が組み入れられた。

■ 診断 & 外科的トリアージのAPPTsと医師の一致
・中程度の信頼性のエビデンスに基づくと、APPTと医師間の診断一致度のプールカッパは0.76(95%CI 0.68~0.85、n=1,108)であった。
・高信頼性エビデンスに基づくと、外科的トリアージの一致に関するプールのKappaは0.71(95%CI 0.63~0.78、n=1,128)であった。

■ 疼痛軽減と障害の減少
・中等度確実性の証拠に基づくと、APPケアは、中期追跡調査時に通常の医療と比較して、同等以上の疼痛軽減をもたらした(MD -0.92 out of 10、95%CI -1.75~-0.10、n=494)。
・確実性の低い証拠に基づくと、APPケアは、中期追跡調査時に通常の医療と比較して、同等またはそれ以上の障害の減少をもたらした(SMD -0.31、95%CI -0.67~0.04, n = 535)。

[結論] APPTと医師との間の一致は、運動器疾患の診断においてはおそらく良好~非常に良好であり、外科的トリアージにおいてはおそらく良好~非常に良好である。APPケアモデルで管理された筋骨格系障害患者は、通常の医療と比較して、おそらく同等かそれ以上の痛みと障害の軽減を報告している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近の文献抄読において、アメリカにおける理学療法士独立の軌跡を追った。

今回の抄読文献は、ヨーロッパ諸国(英国、オーストラリア、カナダ等)において発達してきた高度専門理学療法士の能力や効果を、医師、通常ケアと比較している。
その結果、理学療法士の高い診断/外科的トリアージ能力や、障害/疼痛への効果が明らかとなった。

立場論に固執しすぎれば、僕たちは現在の立ち位置や大陸から、今いる集団の常識から、外に出ることができなくなってしまうだろう。
だが、以前の文献抄読でも論じたことであるが、『理学療法には、病態診断へのアクセスを含まざるを得ない』

理学療法を実施しようとすれば、そこに病態へのアクセスは、リンクは、必ずある。
そのアクセスは、川が海とリンクしているように、途切れようのない、自動的な流れが。
現時点では、それを表出しているか、していないか、という問題だ、多分。
どうしたって、機能レベルの評価が、病態仮説とリンクしていないことが、望ましいとは思われない。
だから、現時点の制度の中で、表出の仕方は考える必要があるけれども、『自分の頭で考え、自分で判断し、自分の責任をもって、自分の足で歩いていく』ということの中には、病態的な診断への思考アクセスやミクロな判断は含まれる、含まれざるを得ない、と思っている。
僕らは楽曲をつくらないシンガーであるべきではない。
楽曲を創造しながら、すべて思いを乗せて熱唱するシンガーソングライターにならなくては、と。

米国における理学療法士独立の軌跡より引用

その場合において、自分たちの力を卑下する必要はない、仮に力がないなら、つけたらいい!
より高品質な理学療法を提供しようと思えば、一個人内(一療法士内)に閉じた病態診断-治療のループが求められる。
今回の論文で、理学療法士にその力があることが、一部証明された。
力はあるのだ、たとえ埋もれていたとしても、力はあるのだ。
それを信じぬこう。

本気になれば、力は出るのだ。
恐ろしい力も出るのだ。
世界も動くのだ。
皆が一致するのだ。
そして力が燃え上がるのだ。
少なくもそれだけの力が真心にあるということは信じよう。
本気さが足りないくせに力がないなぞと云うのを恥じよう。
力はあるのだ、自分達に力はあるのだ。

武者小路実篤『自分達に力がないと云うことを恥じよう』から一部抜粋

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