パーキンソン病者の40.4%が末梢神経障害
📖 文献情報 と 抄録和訳
パーキンソン病における末梢神経障害:有病率と歩行とバランスへの機能的影響
[背景・目的] 末梢神経障害は、パーキンソン病の患者さんによく見られる問題である。パーキンソン病における末梢神経障害の有病率は4.8~55%の間で変動し、一般人口では9%であるのに対し、パーキンソン病では5%である。末梢神経障害がパーキンソン病における運動能力の低下を招き、移動能力の低下やバランス障害の増加をもたらすかどうかは依然として不明である。我々は、パーキンソン病患者における末梢神経障害の有病率と種類を明らかにし、歩行とバランスに対する機能的影響を評価することを目的とした。
[方法] UKブレインバンクの基準に基づいて運動障害の専門家が評価した連続したパーキンソン病患者のコホートは、横断的なデザインで末梢神経障害のタイプと病因を特徴付けるために、臨床、神経生理学的(神経伝導試験と定量的感覚検査)、神経病理学的(皮膚生検パンチの表皮内神経線維密度)評価を受けた。歩行とバランスは、薬物療法がオフとオンの状態でウェアラブルヘルステクノロジーを使用して特徴づけられ、検証されたアルゴリズムを用いて主要なパラメータが抽出された。
[結果] 平均年齢67.2歳(±10歳)、平均罹病期間6.5年(±5年)のパーキンソン病患者99名を評価対象とした。
■ パーキンソン病者の末梢神経障害有病率
臨床、神経生理学、神経病理学的な総合評価に基づき、パーキンソン病患者の40.4%が末梢神経障害を呈し、小繊維神経障害が優位であることがわかった(グループの70%)。
■ 末梢神経障害と歩行の関係性
OFF状態では、末梢神経障害の有無は、直進歩行時の歩幅の短さ(P = 0.029)、歩行速度の遅さ(P = 0.005)、つま先立ち角度の小ささ(P = 0.002)と有意に関連し、円形歩行時にも速度の遅さ(P = 0.019)とつま先立ち角度の小ささ(P = 0.007)が顕著に見られた。ON状態では、上記の効果は中程度に減少するものの、残存していた。
■ 末梢神経障害とバランスの関係性
バランスに関しては、末梢神経障害のあるパーキンソン病患者とないパーキンソン病患者の間で、OFF投薬状態において、発泡スチロールの表面で目を閉じて立脚する際に有意差が観察された。ON状態では、これらの差は観察されなかった。
[結論] 我々は、末梢神経障害がパーキンソン病で一般的であり、モバイルヘルス技術で測定される歩行とバランスパラメータに影響を与えることを示した。本研究は、パーキンソン病患者の歩行を改善し、バランス関連の障害を最小化するために、個別医療をターゲットとした末梢神経障害の認識と指示された治療を追求する必要があることを支持する。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
コアアウトカムセット、という概念がある。
近年では、大腿骨近位部骨折において、5つの領域からなるコアアウトカムセットが報告されている(📕Haywood, 2014 >>> doi.)。
脳卒中なら、・・・という評価項目のセット。
脊髄損傷なら、・・・という評価項目のセット。
それぞれ、あると思う。
では、パーキンソン病者のコアアウトカムセットとなると、何が入るだろう?
ぜひ、末梢神経障害の検査を加えたい。
今回の研究とその結果は、そう思わせた。
パーキンソン病者の40.4%が末梢神経障害を有しているという。
そして、それは歩行やバランスといった理学療法分野で最も注目すべきアウトカムとつながっている。
「パーキンソン病」→じゃあ、末梢神経障害の検査(感覚検査、反射 etc...)はしておこう。
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