見出し画像

パーキンソン病の進行で起こる4つの変化

📖 文献情報 と 抄録和訳

パーキンソン病におけるモチベーション:いつの間にか無関心に

📕Manohar, Sanjay G. "Motivation in Parkinson’s disease: apathetic before you know it." Brain 147.10 (2024): 3266-3267. https://doi.org/10.1093/brain/awae279
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[レビュー概要]

パーキンソン病におけるドーパミン系の変性が進行するにつれて起こる一連の変化を示している。横軸は時間を表し、縦軸は各要素の相対的な強度を示す。

・線条体ドーパミン濃度(緑の線):パーキンソン病の進行に伴い、線条体(主に運動機能に関与する脳の部位)でのドーパミン濃度が徐々に低下する。このドーパミン減少が、さまざまな症状の発現の基盤となっている。
・報酬感受性(赤の線):報酬感受性は、目標達成や報酬に対する反応性を指す。線条体ドーパミンが減少し始めると、まず最初にこの報酬感受性が低下する。ドーパミンは報酬系において重要な役割を果たしているため、減少が進むことで報酬への動機づけが失われ、無関心が増していくと考えられる。
・運動症状(青の線):ドーパミン減少がさらに進行すると、運動症状が出現する。これは、パーキンソン病に特徴的な震えや筋硬直、動作の遅さ(徐脈症)といった運動制御の障害を指す。運動症状の発現は、報酬感受性の低下よりも遅れて起こる。
・自己申告による無関心(紫の線):最終的に、患者自身が無関心を感じるようになる。これは、報酬への反応性が低下し、日常活動に対する関心が失われていく過程を反映している。自己申告で無関心が報告される段階では、すでにドーパミンの減少や運動症状が進行している。例えば、パーキンソン病の初期にはアパシーの有病率は20%だが、進行期には40%に達する(📕Banwinkler, 2024 >>> doi. https://doi.org/10.1093/brain/awae214)。

ここから示唆されるのは、パーキンソン病における無関心や動機づけの低下は、運動症状の出現よりも早期に発生する可能性があるという点である。したがって、パーキンソン病の診断や治療においては、運動症状だけでなく、報酬感受性の低下や動機づけの変化にも注意を払うことが重要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

進行したパーキンソン病者のリハビリテーションにおいて、感じることがある。
運動意欲(リハ意欲)の低下、無関心、である。
これまで、何となくそれを感じていたのだが、今回の抄読研究、そして📕Banwinkler, 2024の研究によって、その実態の一部が明らかになった。

パーキンソン病の進行に伴い、報酬感受性は低下し、自己報告による無関心は増大する。
これは、大きなジレンマを引き起こす。
より多くの運動介入が必要となる進行期にも関わらず、報酬感受性の低下と無関心の増大によって、運動意欲が盛り上がりにくいという状態になってしまうのだ。
それにより、運動量が低下し、廃用性の要素も加わり、運動機能はますます低下していく・・・、という負の連鎖が想像される。

この連鎖を知った上で、さらに断ち切るために、僕たちには何ができるのだろうか?
まず、パーキンソン病者の運動意欲低下に対して、根性論で立ち向かわないことだ。
「この人、やる気ない!→何やってんですか!!!」というスタンスで接することは、フラストレーションしか生まないだろう。
この運動意欲低下は、あくまでも疾患による症状の1つである、という客観的で良い意味で冷たい態度が重要である。
そして、その疾患の症状である運動意欲に対する効果的な介入方法を知ることだ、これは今後の勉強だと思っている。
少しずつ実態を知り、少しずつ良い治療や態度が取れるように、進みたい。

⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪

↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集