骨格筋の廃用。初期値が高い者ほど注意
📖 文献情報 と 抄録和訳
筋力および心血管フィットネスにおける筋の廃用性の役割:システマティックレビューとメタ回帰
[背景・目的] 我々は、筋力(muscle strength, MS)、筋肉量(muscle mass, MM)、および心血管フィットネスに対する筋力廃用の影響を評価することを目的とした。
[方法] (1)MM、(2)最大酸素摂取量(VO2max)および/またはMSの両方に対する筋力低下の影響を評価するヒト研究を同定するためにデータベースを精査した。ランダム効果メタ分析とメタ回帰を行い、初期体力とプロトコールの長さを先験的に決定されたモデレーターとした。51の異なる研究を定量的に分析し、有意水準はp<0.05とした。
[結果] 14の研究の参加者のデータは、VO2max(SMD:-0.93;95%CI:-1.27~-0.58)とMM(SMD:-0.34;95%CI:-0.57~-0.10)の両方の低下を示した。47の研究データは、筋力(-0.88;95%CI:-1.04~-0.73)と質量(SMD:-0.47;95%CI:-0.58~-0.36)の低下を示した。
■ 骨格筋の廃用①:筋量低下×筋力低下
・MSの減少はMMの減少の2倍であったが、解剖学的部位によって差があった。
・上腕(●)のデータは回帰線がほぼ水平に近く、筋力の低下に対する筋肉量の変化が小さいことを示している。
・下腿(▲)は急な傾斜の回帰線を持ち、筋力低下に対して筋肉量も大きく減少する傾向がある。
・大腿(■)も同様に筋力低下に対して筋肉量が減少するが、下腿よりはその傾向が緩やかである。
■ 骨格筋の廃用②:初期筋力×筋力低下
・初期筋力が高いほど、筋力の低下量が大きい傾向が見られる(負の相関)。
・例えば、初期筋力が約150 Nmの被験者では筋力低下が約-20 Nm程度であるが、初期筋力が約300 Nmの被験者では筋力低下が-80 Nmから-100 Nmに達している。
■ 骨格筋の廃用③:初期筋量×筋量低下
・初期の大腿四頭筋体積が大きいほど、筋の体積減少も大きい傾向が見られる。
・例えば、初期体積が1000 mL程度の被験者では体積減少が約-50 mLであるのに対し、初期体積が2000 mLを超える被験者では体積減少が約-150 mLから-200 mLに達している。
[結論] 筋力が高い被験者では、筋力低下がより深刻であることが報告された。このことは、アスリートにとって生理学的に重要である。しかし、筋力の低い高齢者では、筋力廃絶期間が壊滅的な結果をもたらす可能性があることに留意すべきである。
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“伸びしろ” という言葉がある。
以上のように、良い方向性への可能性、のように使われる言葉である。
今回抄読した研究においては、その逆に、骨格筋の廃用においては、筋力・筋量の初期値が高いほど、“下がりしろ” が大きいことが明らかになった。
これから、中長期間の廃用期間が予測され、初期値が大きい場合、骨格筋の廃用の “下がりしろ” が大きいため注意が必要である。
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