デュアルタスク能力。何歳から落ちますか?
📖 文献情報 と 抄録和訳
スペインの中年成人における二重課題歩行への認知機能の加齢による寄与:集団ベースの研究からの考察
[背景・目的] デュアルタスク歩行パフォーマンスの低下は、65歳以上の成人における転倒や認知機能低下のリスクと関連している。いつ、なぜ二重課題歩行能力が低下し始めるのかは不明である。本研究では、中年期(40~64歳)の年齢、二重課題歩行、認知機能の関係を明らかにすることを目的とした。
[方法] スペイン・バルセロナで進行中の縦断コホート研究であるBarcelona Brain Health Initiative(BBHI)研究に参加した40~64歳の地域在住成人のデータの二次解析を実施した。参加者は、介助なしで自立歩行が可能で、解析時に歩行と認知の両方の評価を完了している場合に参加資格があり、研究プロトコルを理解できない場合、臨床的に診断された神経疾患や精神疾患がある場合、認知障害がある場合、歩行異常を引き起こす可能性のある下肢の痛み、変形性関節症、関節リウマチのある場合には参加資格がない。歩幅と歩幅変動は、シングルタスク(すなわち、歩行のみ)とデュアルタスク(すなわち、連続減算を行いながら歩行する)の条件で測定された。各歩行結果に対するデュアルタスクコスト(Dual-task cost, DTC:シングルタスク条件からデュアルタスク条件への歩行結果の増加率)を算出し、解析の主要指標として使用した。グローバル認知機能および5つの認知ドメインの複合スコアは、神経心理学的検査から得た。年齢と二重課題歩行との関係を明らかにするために局所的に推定された散布図平滑化を用い、認知機能が生物学的年齢と二重課題との関連を媒介するかどうかを確立するために構造方程式モデリングを用いた。
[結果] 2018年5月5日から2020年7月7日の間に996人がBBHI研究に採用され、そのうち640人がこの間に歩行および認知評価を完了し(初診から再診までの平均24日[SD 34])、解析に含まれた(男性342人、女性298人)。
■ 年齢とデュアルタスクパフォーマンスとの関係性
・非線形の関連が観察された。
・54歳から、ストライド時間に対するDTC(β=0.27[95%CI 0.11~0.36];p<0-0001) とストライド時間変動(0.24[0.08~0.32];p=0.0006)は、年齢の上昇とともに増加した。
■ 認知機能低下とデュアルタスクパフォーマンスとの関係性
・54歳以上の高齢者では、グローバルな認知機能の低下は、DTCのストライド時間に対する増加(β=0.27 [-0.38 to -0.11]; p=0.0006)とDTCのストライド時間変動(β=0-19 [-0.28 to -0.08]; p=0.0002)の相関が見られた。
■ 年齢、歩行、グローバル認知機能との関連性に関する構造方程式モデリング
・高齢者グループ(すなわち54~64歳)で実施した構造方程式モデル解析では、グローバルな認知機能が年齢とストライドタイムおよびストライドタイム変動に対するDTCとの関連を媒介することが示された。
[考察] 二重課題歩行能力は、人生6年目から低下し始め、それ以降は、認知の個人差によって二重課題歩行能力のかなりの部分が説明されます。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
伝説の研究がある。
この研究者は、歩行中の高齢者に対して話しかけたときにどうなるかを観察した。
すると、58人中、12人が会話が始まると歩行を停止した。
そして、その12人のうち10人までが、6ヶ月間の追跡調査中に転倒したのだ。
これが、かの有名な『Stop walking When talking』研究だ。
調べてみたら、なんとこれも『Lancet』であった。
被引用数>1000のお化け論文である。
今回の『Lancet』論文は、そのようなデュアルタスク能力が、結構早めから低下することを明らかにした。
その年齢、54歳。
54歳といえば、まだまだ働き盛り、バンバン管理職などをこなしている年齢。
ただ、その最中において、すでにデュアルタスク機能は衰えを見せ始めているのだ。
この年代においては、デュアルタスク課題などをトレーニングに組み込むこと、例えばコグニサイズなどの実施が望まれるのかもしれない。
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