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パーキンソン病の世界的有病率(1980-2023)


📖 文献情報 と 抄録和訳

1980年から2023年までのパーキンソン病有病率の経時的傾向:系統的レビューとメタアナリシス

📕Zhu, Jinqiao, et al. "Temporal trends in the prevalence of Parkinson's disease from 1980 to 2023: a systematic review and meta-analysis." The Lancet Healthy Longevity 5.7 (2024): e464-e479. https://doi.org/10.1016/S2666-7568(24)00094-1
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[背景・目的] パーキンソン病は、神経変性疾患の中で2番目に多い疾患であり、有病率は増加傾向にある。本研究では、パーキンソン病の有病率、1980年から2023年までの経時的傾向、および地域、年齢、性別、調査期間、社会人口統計指数(SDI)、人間開発指数(HDI)、研究特性(サンプルサイズ、診断基準、データソース)による有病率の差異を調査することを目的とした。

[方法] この系統的レビューとメタアナリシスでは、データベースの開始から2023年11月1日までの一般人口におけるパーキンソン病の有病率を報告した観察研究を、PubMed、Cochrane、Web of Science、Embase、Scopus、Global Healthで検索した。対象とした研究は、オリジナルの観察調査であり、一般人口または地域社会ベースのデータセットから参加者を集め、パーキンソン病の有病率に関する数値データを95%信頼区間(95% CI)または95% CIを算出するのに十分な情報を提供しているものであった。特定の集団を対象とした研究、サンプルサイズが1000未満の研究、総説、症例報告、プロトコル、会議抄録、手紙、コメント、短報、ポスター、報告書は除外した。論文の特徴(筆頭著者および出版年)、研究実施地(国、WHO 地域、SDI、HDI)、調査期間、研究デザイン、診断基準、データソース、参加者情報、有病率データは、標準フォームを用いて論文から抽出された。2名の著者が独立して適格性を評価し、相違点については3人目の著者の協議により解決した。95%信頼区間(CI)の推定値をプールするために、ランダム効果モデルを使用した。パーキンソン病の有病率の経時的傾向を評価するために、推定年間パーセント変化(EAPC)を算出した。本研究はPROSPERO、CRD42022364417に登録された。

[結果] 37か国から83件の研究が分析対象となり、56件の研究が全年齢の有病率を、53件の研究が年齢別有病率を、26件の研究が全年齢および年齢別有病率の両方を報告していた。パーキンソン病の全世界における有病率は1,000人あたり1.51例(95% CI 1.19–1.88)であり、男性(1,000人あたり1.54例 [1.17–1.96])の方が女性(1,000人あたり1.49例 [1.12–1.92]、p=0.030)よりも高かった。調査期間が異なる場合、パーキンソン病の有病率は、1000人あたり0.90人(0.48~1.44、1980~89年)、1000人あたり1.38人(1.17~1.61、19 90~99年)、1,000人あたり1.18人(0.77~1.67;2000~09年)、1,000人あたり3.81人(2.67~5.14;2010~23年)

この図は、1980年から2023年までのパーキンソン病の有病率に関する研究結果を示している(Zhuら, 2024)。縦軸は「パーキンソン病の有病率(1000人あたりの患者数)」を、横軸は「年齢」を表している。また、データは世界保健機関(WHO)によって分類された地域ごとに色分けされており、円の大きさは各研究のサンプルサイズを表している。特に、西太平洋地域(紫色)では比較的大きな円が見られ、この地域でのサンプルサイズが大きく、パーキンソン病の有病率も高いことを示唆している。ヨーロッパ地域(オレンジ色)は、全体的に有病率が高い傾向にあり、他の地域と比べても顕著である。

パーキンソン病有病率のEAPCは、2004~23年の期間では16.32%(95%CI 6.07~26.58)、p=0.0040と、1980~2003年の期間(5.30%(0.82~9.79)、p=0.022)よりも有意に高かった。6つのWHO地域全体で、有病率に統計的に有意な格差が認められた。有病率はHDIまたはSDIとともに増加した。異なるサンプルサイズまたは診断基準に基づくパーキンソン病の有病率のプール値には、かなりのばらつきが認められた。有病率は年齢とともに増加し、60歳を超えると1000人あたり9.34例(7.26~11.67)に達した。

[結論] パーキンソン病の世界的罹患率は1980年代から増加しており、特に過去20年間で顕著に増加している。パーキンソン病の罹患率は、HDIまたはSDIの高い国々でより高い。特にSDIの低い国々において、パーキンソン病に関するより質の高い疫学調査を実施する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

2024年、一人一人、カラーの違う病院や、臨床環境で過ごしている。
そして、一人一人は、一度には、その時、その環境しか経験し得ない。
厄介なことは、一人一人は、その環境で経験することを、世界全般に当てはめがち、ということ。
たとえば、その病院にパーキンソン病患者の受け入れが低ければ、「最近、パーキンソン病患者って少ないよね」という感覚になってしまう。
このように、自分の所属する病院にくる患者傾向が全病院に当てはまると感じること, 思い込むことを過剰一般化バイアス、と呼ぶ。

疫学を学ぶことで、自分の経験と、全般的な知識の両視点から眺めることで、そのバイアスを打破し、自分の自分の属する環境以外の状況,それと比較した自分の環境の特徴を理解することができるようになると思う。
そういった意味で、疫学を学ぶことは重要である。
今回の抄読研究においては、パーキンソン病の世界的な有病率の疫学を示してくれた。
経時的に見ると、徐々にパーキンソン病リスクは高まっていて、特に西太平洋地域やヨーロッパで顕著なようだ。
自分自身の眼が曇らないよう、世界的な疫学を学んでいきたい。

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