見出し画像

アンメットニーズ。高齢者の自立支援需要を察る

📖 文献情報 と 抄録和訳

後期高齢者の自立支援に対するアンメットニーズに関連する要因:量的および質的エビデンスのシステマティックレビュー

📕Spiers, Gemma Frances, et al. "Factors associated with unmet need for support to maintain independence in later life: a systematic review of quantitative and qualitative evidence." Age and ageing 51.10 (2022): afac228. https://doi.org/10.1093/ageing/afac228
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:アンメットニーズとは何か?
・対象者の満たされていない需要のことで、さまざまなアウトカムについて用いられる用語
・今回の場合には日常生活(activities of daily living, ADL)の自立をアウトカムとしている
<ADLをアウトカムとしたアンメットニーズ評価の例>
・アンメット・ニーズは、BADLとIADLについて、少なくとも1つの利用できないニーズが存在することとした。
・BADLまたはIADLの実行が困難であると報告した個人は、それぞれの活動を行うために個人的な援助を受けたかどうかを尋ねられ、3つの可能な回答があった。
・1)はい、2)いいえ、必要ありません、3)いいえ、利用できる助けがないためです。
・その回答に基づいて、参加者は次のように分類されました。1)必要性を満たしている(「はい」と答えた、行うのが困難なすべての活動に支援がある)、2)満たされていない(「いいえ」と答えた、行うのが困難な一つ以上の活動に支援がないため)、に分類されました。BADLとIADLは別々に評価した。

📕Andrade et al. Revista de Saúde Pública 52 (2018): 75. >>> doi.

[背景・目的] 長期介護の恩恵を受けられるにもかかわらず、必要な支援を受けられない人々は、「満たされないニーズ(unmet need, アンメットニーズ)」を持っていると考えられている。長期ケアへの公平なアクセスを達成するための政策的取り組みには、アンメットニーズのパターンを理解することが必要である。システマティックレビューを実施し、高齢期の自立支援に対するアンメットニーズに関連する要因を明らかにした。

[方法] 7つの書誌データベースと4つの非書誌的エビデンスソースを検索した。高所得国の 50 歳以上の集団において、自立を維持するための支援に対する満たされていないニーズと関連する 要因を報告している定量的観察研究および定性的システマティックレビューを対象とした。出版年の制限は設けない。研究の質を評価し、データを視覚化するためのフォレストプロットでサポートしたナラティブシンセシスを使用した。

[結果] 43 件の量的研究と 10 件の質的システマティックレビューが含まれた。複数の研究による証拠から、以下の要因がアンメットニーズに関連していることが示唆された。

  • 男性

  • 若年

  • 一人暮らし

  • 低所得

  • 自己評価の低い健康状態

  • うつ症状の重症度と数

  • 機能的制限の多さ

定性的レビューからの証拠は、満たされないニーズにおける一人暮らしと経済的制約の認知の重要性を確認し、これらの要因に関する定量的な証拠と一致している。

[結論] このレビューは、自立を維持するために必要な支援を受けられないリスクが最も高い高齢者グループを明らかにするものである。高齢化の平等とケアへの公平なアクセスを達成するための政策努力を支援するために、満たされていないニーズを継続的にモニタリングすることが重要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

高齢者の在宅医療やリハビリテーションの大きな課題の1つは何だろう?
僕は、訪問リハビリテーションに従事した経験があり、そのときに強烈に感じた課題があった。
それは、『高齢者は適切な情報収集や社会資源にアクセスできない』、ということ。
在宅で支援が必要な高齢者のための、情報掲示や社会資源。
だが、高齢者はそれらの情報にアクセスしたり、利用したりすることが最もしにくい人口集団なのだ。
それは、デジタルスキルの欠乏であったり、その他諸々の要因によって。
そこで起こっていたのは『救いたい人ほど、救いにくい』という現象。
これは、かなりパラドキシカルなことなのだ。
今後、以上のような現象を『救済のパラドックス』と名づけたい。

救いたい人を救うための情報や支援。
だがしかし、救いたい人ほど、その情報を見つけにくく、支援を利用しにくい。
だったら!
その人の背景情報から、アンメットニーズの存在を察することができたなら。
もうちょっと押し付けがましく、それらの人々に情報や支援を提供することが叶う。
救いたい人を救う、そのためには、救い手の創意工夫が必要。

⬇︎ 関連 note✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集