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回復期脳卒中患者におけるMini-BESTestのMCID


📖 文献情報 と 抄録和訳

亜急性期初期の脳卒中患者におけるMini-Balance Evaluation Systems Testの臨床的意義のある最小変化量のプール: 多施設前向き観察研究

📕Tamura, Shuntaro, et al. "Pooled Minimal Clinically Important Differences of the Mini-Balance Evaluation Systems Test in Patients with Early Subacute Stroke: A Multicenter Prospective Observational Study." Physical Therapy (2024): pzae017. https://doi.org/10.1093/ptj/pzae017
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] バランス障害は脳卒中患者によくみられ、Mini-BESTestはバランス機能を測定するための信頼性が高く有効な評価ツールである。臨床的意義のある最小変化量(minimal clinically important difference, MCID)を決定することは、治療効果を評価する上で極めて重要である。本研究では、亜急性期早期の脳卒中患者におけるMini-BESTestのMCIDを決定することを目的とした。

[方法] この前向き多施設共同研究では、入院でリハビリテーションを受けている早期亜急性期脳卒中患者53名を対象とした。患者の平均年齢は72.6歳(SD=12.2)であった。評価ツールとして、予期的姿勢調節、姿勢反応、感覚指向、動的歩行など、バランス機能のさまざまな側面を評価する14項目からなるMini-BESTestを用いた。MCIDを算出するための外部アンカーとして、参加者と理学療法士が記入した変化に対するグローバル評価(global rating of change, GRC)尺度が用いられた。GRC尺度は、バランス機能の主観的な改善を測定するもので、-3(非常に有意に悪化)から+3(非常に有意に改善)の範囲とし、GRCスコア≧+2を意味のある改善とみなした。MCIDの算出には、GRCが2の参加者の平均値、受信者動作特性に基づく方法、予測モデリング法、および改善率に基づく予測モデリング法の調整の4つの方法が用いられた。これらの方法で得られたMCID値から、単一のプールMCID値を算出した。

[結果] 4つの方法で得られたMini-BESTのMCID値は、理学療法士のGRCスコアをアンカーとした場合、3.2~4.5ポイントの範囲であったが、参加者のGRCスコアを用いて算出することはできなかった。Mini-BESTest のプール MCID 値は、3.8(95% CI = 2.9~5.0)であった。

[結論] 本研究で得られたMini-BESTのMCIDは、亜急性期初期の脳卒中患者におけるバランス機能の改善を確認するために有用である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

理学療法、リハビリテーションという領域は、なんとセラピストの独りよがりとなりやすい領域だろうか。

「(患者があまり気にしていない部分の)関節可動域が5度よくなりましたよ」
「バランスの検査(例えばMini-BESTest)が3点良くなりましたよ」
「(患者があまり気にしていない部分の)歩き方のここが少し治りましたよ」

一切合切、『So What? (だから何)』状態である。
僕たちがよくしたいのは、機械的な人間の身体か?
それとも、僕たち(セラピスト、医療者)が考える問題点の改善か?
リハビリテーションとは、最も根源に降っていったときに、その主役は誰か?

分かりきったことで、それは患者さんである。
患者さんが、患者さん自身のために、自分で治療を選択し、自分自身が良くなる、のだ。
だから、極限すれば、患者さんが重要だと感じない改善は、少なくとも患者さん自身には求められていない余事といえる。
(もちろん、患者さん自身が重要だと思う部分を動かしていく行動変容などの必要性は疑うべくもないが)

そこで、MCIDである。
患者さん自身が、「ああ、よくなったな」と感じることのできる、点数の向上とは何点か?
その目安を与えてくれるもの。
今回抄読した研究は、日本の回復期脳卒中患者56名を対象、患者さんの主観的なバランス改善をアンカーとしてMCID(2週間の時間間隔)を算出している。
4種類の方法で算出されたMCIDをプールした結果として、「3.8」が明らかになった。
この点数は、独りよがりになりがちなセラピストを抑止する、1つの防御壁となることだろう。

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