身体活動量に対する動機づけ面接の効果
📖 文献情報 と 抄録和訳
成人における身体活動の結果に対する動機づけ面接を用いた行動介入の有効性:系統的レビューとメタ分析
[背景・目的] 動機付け面接を含む行動介入が成人の身体活動アウトカムに及ぼす有効性を評価すること。
[方法] デザイン:システマティックレビューとメタアナリシス。研究選択:開始から2023年3月1日までに発表された、成人の身体活動の結果について動機づけ面接を含む行動介入と動機づけ面接を含まない比較対照を比較した無作為化対照試験を7つのデータベースから検索した。関心のあるアウトカムは、身体活動総量、中等度から強度の身体活動(MVPA)、および座位時間の定量的測定における変化の差異であった。データの抽出と統合 2名の査読者がデータを抽出し、偏りのリスクを評価した。研究の集団特性、介入要素、比較群、アウトカムを要約した。全体的な主効果については、ランダム効果メタ解析を用いて標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を報告した。追跡期間、比較対照の種類、介入期間、参加者の疾患または健康状態に基づく差効果も検討した。
[結果] 97件の無作為化対照試験を報告した129の論文、合計27,811人の参加者、105の比較対象が含まれた。
1. Total physical activity(総身体活動): 76件の研究、86件の比較、19,732人の参加者を対象にしたメタ分析の結果であり、標準化平均差(SMD)は0.45(95%信頼区間0.33〜0.65; 1323歩/日増に相当)であった。これは、MIを含む介入が対照群に比べて身体活動を増加させる効果があることを示している。
2. MVPA(Moderate to Vigorous Physical Activity、中等度から高強度の身体活動): 42件の研究、44件の比較、10,683人の参加者を対象にしたメタ分析の結果で、SMDは0.45(95%信頼区間0.19〜0.71; 95分/週増に相当)であった。これは、MIを含む介入が対照群に比べて中等度から高強度の身体活動を増加させる効果があることを示している。
3. Sedentary time(座り時間): 22件の研究、24件の比較、2,673人の参加者を対象にしたメタ分析の結果で、SMDは-0.58(95%信頼区間-1.03〜-0.14; -51分/日に相当)であった。これは、MIを含む介入が対照群に比べて座り時間を減少させる効果があることを示している。
同程度の強度の比較対象群と比較した結果における差のエビデンスは不足していた。効果の大きさは時間の経過とともに減少し、1年を超える動機づけ面接の効果の証拠は不足していた。ほとんどの介入は特定の健康状態の患者を対象としており、MVPAの増加または座位時間の減少に対する動機づけ面接の効果に関する証拠は、一般集団サンプルでは不足していた。
[結論] 成人の総合的身体活動促進のための複合的行動介入の一部として動機づけ面接を用いたエビデンスの確実性は低く、MVPAと座位時間については非常に低かった。エビデンスを総合すると、動機づけ面接による介入は身体活動を増加させ、座位行動を減少させるが、動機づけ面接の効果を分離できる研究では差が認められなかった。有効性は時間の経過とともに低下し、1年を超えても身体活動を増加させる動機づけ面接の有益性を示す証拠はなかった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
自分自身の中にエンジンを持っていてこそ、例えば回復期病棟であれば退院後でも自走できるようになる。
そして、そのエンジンをつくる技術こそ『動機づけ』だと思う。
身体活動量の増大、座位行動の減少を目的とした場合、その技術の1つとして『動機づけ面接』が威力を発揮しそうだ。
今回の抄読研究は、97RCTを対象とした規模の大きいメタ解析において、身体活動量の増大、座位行動の減少に動機づけ面接が効果的であることを明らかにした。
その効果は、総身体活動で1323歩/日、MVPAで95分/週の増加、座位行動で 51分/日の減少をもたらす。
MVPAは週150分間以上が推奨されており、95分/週の増加というのは、大きな効果であると思われる。
例えば、動機づけ面接を退院支援の一環として行うことは、退院後の患者の身体活動の維持・向上の一助となりそうだ。
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