機械学習による膝軟骨損傷の予測因子
📖 文献情報 と 抄録和訳
歩行、身体活動と脛骨大腿軟骨損傷:Multicenter Osteoarthritis Studyにおける縦断的機械学習分析
[背景・目的] (1)進行した変形性膝関節症でない患者において、2年間の大腿脛骨内側の軟骨悪化を予測するために、歩行と身体活動を組み込んだ機械学習モデルを開発し評価すること、(2)モデルにおいて影響力のある予測因子を同定し、軟骨悪化に対するそれらの影響を定量化すること。
[方法] デザイン:多施設変形性膝関節症研究(Multicenter Osteoarthritis Study)の歩行、身体活動、臨床データ、人口統計学的データから、追跡調査時の軟骨MRI変形性膝関節症スコアの悪化を予測するアンサンブル機械学習モデルを開発した。モデルの性能はクロスバリデーションを繰り返して評価した。100の保持されたテストセットにわたる転帰の上位10予測因子が、変数重要度測定によって同定された。結果に対するそれらの効果は、g-計算によって定量化された。
[結果] 解析対象となった947脚のうち、14%が追跡調査時に内側軟骨の悪化を経験した。100のホールドアウトテストセットにおける受信者動作特性曲線下面積の中央値(2.5~97.5パーセンタイル)は0.73(0.65~0.79)であった。Baselineの軟骨損傷、Kellgren-Lawrenceグレードの高さ、歩行時の痛みの大きさ、側方地面反力の大きさ、臥床時間の長さ、垂直床反力除荷率の低さは、軟骨悪化のリスクの高さと関連していた。同様の結果は、ベースラインの軟骨損傷がある膝のサブセットでも認められた。
[結論] 歩行、身体活動、臨床的/人口統計学的特徴を組み込んだ機械学習アプローチは、2年間の軟骨悪化を予測するのに良好な性能を示した。このモデルから潜在的な介入目標を特定することは困難であるが、内側脛骨大腿軟骨の悪化を抑制するための潜在的な早期介入目標として、側方の床反力インパルス、臥床時間、垂直方向の地面反力除荷率をさらに調査すべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
今回の研究は、理学療法士にとっては重要であり、朗報であるかもしれない。
この種の予測因子を明らかにする研究において、やや落胆する結果とは「いや、この因子に対してPTとしてやれることないんですけど・・・」というものだ。
すなわち、保存療法において可変的な因子が明らかになることは、そのアウトカムを改善しうる可能性を有していることと同義だ。
今回の結果の中で可変的だった要素としては、①歩行時の痛み、②側方地面反力の大きさ、③臥床時間の長さ、④垂直床反力除荷率の低さ、があった。
特に②、④は歩行練習で、③は患者教育によって影響を及ぼしやすい項目と言える。
そして、こう見ると例えば退院支援などで「ただ歩く量を確保してください」は危険と思われる。
歩き方として、負荷量の少ない歩き方を習得した上で、「歩く量を確保してください」が有効になる。
1歩1歩の負荷量が大きい段階で、歩く量だけ増やしても、それはむしろ膝にとって暴力ともなりうるかもしれないのだ。
まず1歩の質を高めて、その量を確保してもらう。イメージを持とう。
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