膝関節疾患におけるハムストリングスの重要性
📖 文献情報 と 抄録和訳
膝関節には大腿四頭筋以外にも様々な部位がある:緩徐に発症する膝関節障害のある患者におけるハムストリングスの筋力
[背景・目的] ハムストリングの筋力、柔軟性、形態の障害は、膝のバイオメカニクス、疼痛、機能の変化と関連している。徐々に発症する膝関節障害のある患者において、これらの障害の有無を判断することは重要であり、評価やリハビリテーションの目標を示す可能性がある。このシステマティックレビューでは、徐々に発症する膝関節障害を有する患者におけるハムストリングスの筋力、柔軟性、形態の障害の有無を明らかにするために、文献を統合することを目的とした。
[方法] 5つのデータベース(MEDLINE、Embase、CINAHL、SPORTDiscus、Web of Science)を開始時から2022年9月まで検索した。徐々に発症する膝関節障害を有する患者と、障害のない手足または痛みのない対照群との間でハムストリングのアウトカム(筋力、柔軟性、形態など)を比較した研究のみを対象とした。各膝関節障害のメタアナリシスを実施した。アウトカムレベルの確実性は、Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluationを用いて評価し、エビデンスギャップマップを作成した。
[結果] 4つの異なる漸増性膝疾患(すなわち、変形性膝関節症(OA)、膝蓋大腿部痛(PFP)、膝蓋軟骨軟化症、膝蓋腱症)にまたがる79の研究が対象となった。
■ ハムストリングスの筋力
・膝関節症患者では、等尺性収縮(SMD=-0.76、95%信頼区間(95%CI):-1.32~-0.21)および求心性収縮(SMD=-0.97、95%CI:-1.49~-0.45)において、無痛の対照群と比較してハムストリングスの筋力が低下していた。
・等尺性収縮(SMD=-0.48, 95%CI : -0.82 to -0.14)、同心性収縮(SMD=-1.07, 95%CI : -2.08 to -0.06)、遠心性収縮(SMD=-0.59, 95%CI : -0.97 to -0.21)において、PFP患者では無痛対照群と比較してハムストリングスの筋力が低下していた。
・膝蓋腱障害のある人では差は認められなかった。
■ ハムストリングスの柔軟性
・PFP患者では、痛みのない対照群と比較してハムストリングの柔軟性が低下していた(SMD = -0.76, 95%CI : -1.15 to -0.36)。
エビデンスギャップマップでは、膝蓋軟骨軟化症とハムストリングの形態については、すべての漸増性膝関節障害においてエビデンスが不十分であることが確認された。
[結論] 我々の知見から、膝OAまたはPFPの患者には、リハビリテーション中にハムストリングスの筋力と柔軟性の障害を評価し、ターゲットとすることが推奨されることが示唆された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
ほとんどの理学療法士は、『大腿四頭筋』と答えることだろう。
その理由は多岐にわたるだろうが、1つには重要性が高いと思われるから、である。
やはり膝を動かす主動作筋の筆頭は大腿四頭筋であろう。
その次に見逃せない理由として『計測しやすいから』という理由があると僕は感じている。
大腿四頭筋、つまり膝関節伸展の筋力は測りやすい。
だが、ハムストリングスは少しだけ測りにくい。
そのちょっとした差が、臨床現場において測る、測らないに影響する。
だが、今回の抄読研究によれば、膝関節疾患において、ハムストリングスの筋力を測ることは重要そうだ。
無痛群、非障害肢と比較して、ハムストリングスの筋力、柔軟性の低下を認めた。
もちろん、大腿四頭筋は重要だ。
だが、最も重要なものだけが重要である、というわけではないだろう。
ハムストリングスの筋力と柔軟性、少なくとも何らかの評価は行いたい。
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