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アスリート自身が報告する。検出漏れが少ない傷害監視方法

📖 文献情報 と 抄録和訳

スポーツ傷害・疾病の発見におけるサーベイランス手法の影響について

📕Mashimo, Sonoko, et al. "Influence of Surveillance Methods in the Detection of Sports Injuries and Illnesses." International Journal of Sports Physical Therapy 17.6 (2022): 1119-1127. https://doi.org/10.26603/001c.37852
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] スポーツ傷害・疾病に関する疫学データは、傷害監視方法と健康問題の定義に依存する。傷害監視方法の違いがデータ収集に及ぼす影響については、オーバーユース傷害については調査されているが、外傷性傷害・疾病などの他の健康問題については調査されていない。研究の目的:本研究の目的は、オスロスポーツ外傷研究センター(OSTRC)が開発した、任意の苦情定義に基づく新しい傷害監視方法(新方式)が、時間損失定義に基づく従来の傷害監視方法と比較して、健康問題を特定できるかどうかを検討することである。

[方法] 研究デザイン:記述的疫学研究。日本人アスリート62名を18週間前向きに追跡調査し、新手法と従来法の両方で特定された健康問題の差異を評価した。選手は毎週、日本語版OSTRC質問票に回答し、チームのアスレチックトレーナーはタイムロス定義で健康問題を登録した。それぞれのサーベイランス手法で確認された健康障害の件数を算出し、両者の結果の違いを比較した。

✅ 選手の健康問題の記録に使用されたOSTRC-H2.JPとは?
・このアンケートは、過去7日間の怪我や病気の症状や結果に関する4つの主要な質問から構成されている。
・健康上の問題があった場合、その問題が怪我なのか病気なのかを定義するよう、アスリートに求める。
・怪我については、外傷性か使いすぎかの分類と、部位について質問。また、怪我と病気の両方について、完全にトレーニングや競技に支障をきたすと定義されるタイムロスの日数も報告された。
・4つの重要な質問に対する選手の回答に基づいて、各健康問題の重症度スコアが0~100の尺度で計算される。
【★】参考文献のsupplementにアンケート原本あり

📕 Mashimo, Sonoko, et al. PloS one 16.4 (2021): e0249685. >>> doi.

[結果] OSTRC-H2.JPの週単位の平均回答率は82.1%(95%CI、79.8-84.3)であった。この新しい方法では、従来の方法に比べて3.1倍多くの健康問題(怪我3.1倍、病気2.8倍)が記録された。両サーベイランス手法のカウントの差は、外傷性傷害(2.5倍)よりも使いすぎによる傷害(5.3倍)の方が大きかった。

[結論] 本研究の結果、新手法は従来法に比べて3倍以上の健康問題を捉えていることがわかった。特に、オーバーユース傷害では、外傷性傷害よりも両手術のカウントの差は大きかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

僭越ながら、僕たちが過去に行った研究に「中学校野球部におけるスポーツ現場の実態調査-障害カレンダーから見た医療機関受診状況-」がある(📕海津, 2013 >>> メディカルオンライン.)。
この研究は、中学校野球部を対象としたアンケート調査で、その結果わかったことは以下のことである。

●スポーツ現場での症状発現に対し, 約40%の選手が医療機関受診までの間に我慢期間を有し, 症状を我慢している選手が3人に1人以上存在している
●アンケート結果より, スポーツ現場にて発現した症状に対し, すぐに医療機関を受診する行動パターンと, 医療機関を受診せず, 自らケアを行おうとする行動パターンの2つが存在している

つまり、報告の主語がアスリート自身でない限り、かなりの症状や傷害を取りこぼしてしまう。
そんな研究をしていた僕にとって、今回の研究は、輝いてみえた。
まさに、その問題を解決する研究だったからだ。

この研究が秀逸なのは、報告方法にGoogle formを用いたことだ。
スポーツ現場でトレーナーに症状や傷害を報告することは、勇気がいる。
その報告により、試合に出られなくなる可能性もある。
Google formでの入力は、その勇気の需要を引き下げている。
より気軽に報告できる、それも自分の好きな時間、タイミングで。

これで、真面目で、いまに全力を尽くしすぎる選手を、何人か救えるかもしれない。
この方法、トレーナー活動をさせてもらっている高校野球部で実践してみたい。
まずは、Google formでアンケートを作成していこうと思う。

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