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大腿骨転子部骨折患者の歩行バイオメカニクス

📖 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨転子部骨折に対する髄内釘術後の歩行バイオメカニクスについて

📕Sivakumar, Arjun, Mark Rickman, and Dominic Thewlis. "Gait biomechanics after proximal femoral nailing of intertrochanteric fractures." Journal of Orthopaedic Research® 41.4 (2023): 862-874. https://doi.org/10.1002/jor.25427
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[背景・目的] 高齢者の大腿骨近位部骨折は、自立性、可動性、QOLの著しい低下と関連している。この前向き研究は、以下を目的とした:
(1) 大腿骨転子部骨折(ITF)患者(A1およびA2 AO/OTA)の術後6週間および6ヶ月の歩行バイオメカニクスを調査し、同様の年齢の高齢者対照群と比較する。
(2) 大腿骨オフセット短縮(femoral offset shortening, FOS)と外側ラグスクリュー突出(lateral lag screw protrusion, LSP)が術後の時点での歩行バイオメカニクス変化と関連するか調査する。

[方法] 34名の患者について、術後6週間と6ヶ月の時点で股関節のX線写真と歩行データを収集した。歩行データは、同様の年齢の対照者からも収集された。FOSとLSPは、X線写真から測定した。股関節、膝関節、足関節の関節角、関節トルク、パワーを算出し、統計的パラメトリックマッピングを用いて、ITF患者と健常対照者の時点間で比較した。歩行速度、歩幅、股関節外転ピーク、股関節外転最大トルクとX線写真の関係については、ピアソン相関を用いて評価した。

[結果] 股関節外転トルクと股関節パワーは術後6ヶ月で改善したが、片脚立ちでは健常対照者と有意差があった。

LSPは、術後6週目の最大股関節外転モーメントと中程度の相関を示した(r = -0.469, p = 0.048)。FOSは関連を認めなかった。

これらの結果は、ITF後の機能的転帰に関する新たな詳細と、機能的欠陥に起因する可能性のあるメカニズムを提供するものである。ラグスクリューの隆起は、高齢者のITF後の機能的自立を維持し、二次的転倒のリスクを最小限に抑えるための重要な要素である可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、大腿骨近位部骨折の中でも、頚部骨折と転子部骨折では別物である、という文献抄読をした。

この論文中において、全般的に転子部骨折患者の転帰が不良であることが示された。
今回の文献は、その仕組みの一端を明らかにしたかもしれない。
転子部骨折患者は、健常高齢者と大きく違う歩行バイメカニクスを示し、それは改善を示すものの6ヶ月後も健常者とは異なっていた。
さらに、この歩行バイオメカニクスの違いには、転子部骨折患者へのオペであるラグスクリューのLSPが関わっていた。

僕の個人的興味としては、このLSPという指標が股関節骨折後の膝関節疼痛出現(post-hip fracture knee pain, PHFKP)に関わっているのではないか?、ということだ。
なぜなら、PHFKPも転子部骨折患者で多いことが明らかにされているから。

また研究種が1つ増えてしまった…。
プライオリティを考えて、1つ1つ、全うしたい。

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