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サルコペニア者の歩行特性
📖 文献情報 と 抄録和訳
地域在住高齢者のサルコペニアに関連する歩行特性の検討:足底圧に着目した研究
📕Yamagiwa, Daiki, et al. "Examination of Gait Characteristics Related to Sarcopenia in Community‐Dwelling Older Adults: A Study Focusing on Plantar Pressure." Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (2024). https://doi.org/10.1002/jcsm.13634
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✅ 前提知識:サルコペニアとは?
・サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量と筋力の減少を特徴とする症候群。
・ギリシャ語の「筋肉」と「喪失」を意味する言葉から派生した用語で、「加齢性筋肉減弱現象」とも呼ばれる。
・40歳頃から徐々に進行し、60歳を過ぎると加速度的に悪化する。
・主な原因はタンパク質摂取不足と運動量減少による筋肉分解の促進と考えられている。
・サルコペニアは日常生活動作の困難さを引き起こし、介護が必要な状態につながる可能性がある。
・一次性(加齢が主因)と二次性(疾患や生活習慣が原因)に分類され、適切な運動と栄養摂取が予防・改善に重要。
[背景・目的] サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量の減少と筋力の低下を特徴とする状態であり、歩行速度の低下を招く。サルコペニアの高齢者における歩行速度の低下は、転倒や死亡などの有害事象につながる可能性がある。これは大きな健康問題であり、サルコペニアにおける歩行速度についてはいくつかの研究が行われている。しかし、足底圧については十分に評価されていない。足底圧は歩行速度を含む歩行分析を容易にし、転倒や死亡などの有害事象の予防に重要な役割を果たす。そのため、本研究では、サルコペニアを患う地域在住高齢者の足底圧を含む歩行特性を検証することを目的とした。
[方法] 本研究では、2013年から2018年の間に健康診断を受診した60歳以上の地域在住日本人成人を対象とした。サルコペニアは、臨床的定義に基づく筋肉量と筋力の測定により診断した(非サルコペニア:n=7662、サルコペニア疑い:n=1208、サルコペニア:n=477)。歩行パラメータ(歩行速度、相対的足底圧、歩調、歩幅、歩隔、足部角度を含む)は、コンピュータ制御の電子式歩行路を使用して、快適な速度で測定した。 グループ間の歩行パラメータは、年齢とBMIを調整した共分散分析により比較した。 さらに、事後解析はボンフェローニ補正により実施した。
[結果]
■ サルコペニア者の歩行特性:足底圧
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1. 前足部足底圧 (Forefoot plantar pressure)
・非サルコペニア群では前足部における足底圧が高く、サルコペニア群は最も低い。
・群間で有意な差があり、特に非サルコペニア群はサルコペニア疑い群とサルコペニア群に比べて高い足底圧を示している。
2. 後足部足底圧 (Rearfoot plantar pressure)
・後足部の足底圧では、サルコペニア疑い群とサルコペニア群の方が非サルコペニア群よりも高い傾向がある。
・これは、歩行中に体重を後方へ移動させる特性を反映している可能性がある。
3. 内側足底圧 (Medial plantar pressure)
・サルコペニア群では内側圧が他の群に比べて有意に高い。
4. 外側足底圧 (Lateral plantar pressure)
・外側の足底圧は、サルコペニア疑い群が最も高く、サルコペニア群では低い。
■ サルコペニア者の歩行特性:その他パラメータ
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1. 歩行速度 (Gait speed)
・非サルコペニア群は歩行速度が最も高く、サルコペニア疑い群、サルコペニア群の順に低下している。
2. ストライド長 (Stride length)
・非サルコペニア群の歩幅が最も大きく、サルコペニア疑い群、サルコペニア群の順に短くなる。
3. 歩幅 (Step length)
・歩幅もストライド長と同様に非サルコペニア群が最も大きい。
4. 歩調 (Cadence)
・歩調(1分間あたりの歩数)も非サルコペニア群が最も多く、サルコペニア群が最も少ない。
5. ステップ幅 (前額面、Step width)
・サルコペニア疑い群は他の群と比べてステップ幅が広い。
6. 足角度 (Foot angle)
・サルコペニア群では足の外側への角度(外向き角度)が最も大きい。
[結論] サルコペニア群、サルコペニア疑い群、非サルコペニア群では、足底圧をはじめとした歩行特性に違いがみられた。サルコペニア疑い群およびサルコペニア群に対しては、歩行特性を考慮した運動指導が重要であると考えられる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
第一印象というのは大切だ。
パッと見たときに、「ん?なんだかおかしい」と思えること。
その印象から、「これってあれじゃない」と思えば、その詳細を評価する行動につながるだろう。
人間の思考の多くは、芋づる式だ。
ちょっとした手がかりをつかめれば、真実に近づくことができる。
今回の抄読研究は、サルコペニア者を特定する上で、第一印象イメージを形成するのに大いに役立つ研究だと感じた。
この研究の結果から、サルコペニア者の歩行特性として、
・後方重心傾向で、前足部荷重が小さい
・歩行速度がゆっくり、歩幅が小さく、足部進行角が大きい
このような歩容を見かけたとき、「ん?この方、サルコペニアかな?」と疑えるようになる。
サルコペニア者の歩行時のペルソナ(像)を形成できた。
さらに、鶏と卵を逆転させて、そのような歩容を改善させていく中で、サルコペニア自体を改善させることにつながる可能性だってある。
役立てていきたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕サルコペニア者の歩行特性
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) January 13, 2025
・地域在住高齢者(≧60歳)🇯🇵
・健常7662人/サルコペニア疑い1208人/サルコペニア477人
サルコペニア者は,
🔹後方重心傾向で, 前足部荷重が小さい
🔹歩行速度が低下, 歩幅が小さく, 足部進行角が大きい
N数が大きく, 信頼できそうなデータですね😲#サルコペニア #歩行 pic.twitter.com/ARNjOiLAsw
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