お題 デジタル混入島
「やっぱ離島にして正解だった」
例年の長期休みはいつも海外に行っていたが、今年はふと離島に来てみた。
澄みきった空気は緑の香りと小鳥のさえずりを運んでくれる。ゴテゴテと飾られていない素朴な料理は体の芯まで滋味が染みわたる。
「おや、お客さん。お散歩かい? 今日は暑くなるからコレを持っておいきよ」
なんせ人が温かい。民宿のおばちゃんから受け取った麦わら帽子を被り、当てもなく歩き出す。
とかく都会ではホスピタリティとかおもてなしとか言葉や理屈が前面に出て来るが、そうじゃない。答えはもっとシンプルだ。人の気持ちを受け取り、人が感謝する。ただそれだけで幸福を得られるのだ。
『ピーンポーンパーンポーン』
木の柱に括りつけられたスピーカーから、この村に似つかわしいどこか暢気な案内音が鳴った。
「村内放送かぁ。ここではまだ残ってるんだな」
『村民の皆さんにお知らせです。定時です。それぞれの体に合うケーブルを持って村役場までお越し下さい。尚、旅行者様には村民の充電作業が終わるまで、ご不便をお掛けしますが何卒ご容赦下さいませ』
了 (456字)