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『魔道祖師・脇役列伝』

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『魔道祖師』の脇役にスポットを当てた記事です。アニメや小説を一度見た人向け。現在の連載は「藍思追」。毎週土曜日更新予定です。合間に(水曜日ごろ)考察記事も書いてます。
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#藍思追

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー9)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー8)の続き) 「こちらは宋嵐、宋子琛[ソン・ズーチェン]道長だ」  莫玄羽(魏無羨)は藍忘機に紹介する。宋嵐は正気に戻っており、その両目には清らかに澄んだ漆黒の瞳があった。  しばらく沈黙したあと、莫玄羽(魏無羨)は膨らみのない小さな鎖霊嚢を二つ、懐から取り出して宋嵐に渡した。 「暁星塵道長と、阿箐[アージン]さん」  阿箐は少女の幽霊の名前だ。宋嵐は微かに両手を震わせながらそれを受け取ると、手のひらに乗せた。  莫玄羽(魏無羨)は暁星塵の遺

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー8)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー7)の続き)  例の少女の幽霊が、突然ある棺の上にふっと姿を現した。  少し前に莫玄羽(魏無羨)に言われ、少年たちは既に少女の容貌を細かく観察していたので、血を流す両目や舌を抜かれた口内を見ても、それほど恐怖を感じなかった。  少女は棺の蓋を叩いたり、身振り手振りで何かを伝えようとしてくる。今度の動きはかなりわかりやすく「開けて」という動きだった。 「もしかしたら、この中には彼女の遺体が置かれていて、私たちに埋葬して欲しいんでしょうか?」

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー7)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー6)の続き)  床に倒れていたはずの暁星塵は片手で頬杖をついて座り、微かな笑みを浮かべていた。そして彼は黒い手袋をはめた左手を上げると、パチンと指を鳴らした。  すると宋嵐は自分を押さえていた陰力士四体を一気に跳ね飛ばし、あっという間に彼らをばらばらの紙屑に変えてしまう。そして、長剣を莫玄羽(魏無羨)の首元にひたりと当て、少年たちを威嚇する。 「大人同士で話をするから、子供たちは出ていってね」  暁星塵が手で合図をし、宋嵐は世家公子を店の外に

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー6)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー5)の続き)  金凌は声に出さず口の形だけで言葉を伝え、埃まみれの卓にその文字を書いた。『霜華』。暁星塵の剣だ。  男の様子からこの場にいる皆は、彼が櫟陽常氏の事件のあとに失踪した暁星塵だと思った。  暁星塵と思われる男は霜華を持ち、屍毒で屍変する前に一体でも多くの彷屍を退治しようと、外に出ようとする。外には何百もの彷屍が集まってきているようだ。  二体の紙人形だけでは守りきれないと思った莫玄羽(魏無羨)は、白紙の呪布を持っている者がいないか

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー5)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー4)の続き)  そんな時、通りのずっと先の方から、慌ただしく走る音と苦しげな息が聞こえてきて、少女の幽霊が突然ふっと消えた。  莫玄羽(魏無羨)が一旦外した木板を元に戻し、世家公子たちも皆窓に近づいてその隙間から外を覗く。  だんだんと濃くなり始めた白い霧の中から追い詰められた様子の人影がこちらへ走ってくるのが見えた。 「例の覆面の男(墓荒らし)か?」  藍景儀の問いかけに、藍思追は声を落として答えた。 「違うと思う。あの男とは身のこなしが全

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー4)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー3)の続き)  藍思追は小声で囁いた。 「あのお年寄りの部屋の扉が……開いています」  莫玄羽(魏無羨)が一人で中に入っていき、手仕事をしていたらしい老婆に声をかけて、その針に糸を通すと、何事もなかったかのように扉を閉めて戻ってきた。彼女のことを「妖怪老婆」と呼ぶ金凌に顔を顰めると、彼は言った。 「あの老婆は、活屍[かつし]だ」 「活屍ってなんですか?」と思追。 「肉体は死んでいるのに生きている、それが活屍だ」  体は硬直し、食事も必要として

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー3)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー2)の続き) 「すみません。少し台所をお借りしてもいいですか?」  「勝手に使いな」と言う老婆。莫玄羽(魏無羨)が手伝いを募ると、すぐさま藍思追が「私が行きます」と応じた。  台所はひどい悪臭に満ちていた。ついてきた金凌に莫玄羽(魏無羨)命じて、悪臭の元になってたいた木箱を捨てに行かせた間に、思追と莫玄羽(魏無羨)は裏庭の井戸から水を二桶汲んできて、台所を掃除し始めた。 「お前ら、何をやってるんだ?」と戻ってきた金凌。 「見ての通り、かまどを

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー2)

(◎脇役列伝その1:藍思追(4ー2)の続き)  ちょうどその時、左前方の迷霧の中から、新たな足跡が聞こえてきた。  さらに真正面、右前方、後ろからも同様の足音が聞こえてきた。生臭い腐敗臭が漂う。彷屍だ。莫玄羽(魏無羨)が口笛を吹くと、それに向かって襲ってきた。  避塵の凍てついた青い剣芒が白い霧を切り裂き、彼らの周りを一周すると、宙に一瞬だけ、ふわりと鋭利な光の輪が現れ、彷屍たちの腰辺りを真っ二つに斬って、再び鞘に戻った。  藍忘機が禁言を解いてくれて話せるようになると、

◎脇役列伝その1:藍思追(4ー1)

 深い霧が立ち込める蜀東の「亡霊の棲む町」、義城。  藍思追、藍景儀ら藍家の門弟、金凌、他の仙門世家の公子たちは、揃ってその場所にいた。  深い霧の中を一団となって歩いていると、いきなり前方から何かが投げつけられ、彼らは瞬時に剣を抜いて反撃する。だがその剣芒は、一筋の剣の軌跡によって全て打ち返された。手強い相手の登場に慌てふためく少年たち。  その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「金凌? 思追?」 「莫公子ですか? もしかして、含光君も来ていらっしゃるんですか?」

◉『陳情令』の藍思追

 『魔道祖師』原作のドラマ『陳情令』で、藍思追を演じているのは鄭繁星[ジェン・ファンシン]だ。とても可愛くて、もし彼が親戚の子だったらほっぺをぷにぷにしてみたい。  物語の最初の方の出番をまとめた動画があるので紹介しよう。  よく隣に立っているのは藍景儀、額に赤い印をつけているのは金凌、仮面を被っているのが莫玄羽(魏無羨)だ。 [FMV] Lam Tư Truy【蓝思追】| Trịnh Phồn Tinh【郑繁星】- Nhất Tiếu Khuynh Thành  『陳

◎脇役列伝その1:藍思追(3−2)

(◎脇役列伝その1:藍思追(3−1)の続き)  ここからは第五章「陽陽」。翌朝の場面だ。  藍思追は藍景儀と共に、莫玄羽(魏無羨)を起こしに行った。静室の木の扉を軽く二回叩き、声をかける。 「莫公子? 起きてますか?」 「起きてるけど、こんな朝早くにどうした!?」 「早……早い? でも、もう巳の刻ですよ」  思追は戸惑ったように言った。藍家の人間は皆、卯の刻に起床し、亥の刻に就寝するという非常に規則正しい生活を送っているからだ。起床時間を二時辰も遅れているのに? と。 「ま

◎脇役列伝その1:藍思追(3−1)

 小説一巻第四章「雅騒」は、藍氏の仙府[せんふ]・「雲深不知処[うんしんふちしょ]」の静かに美しい描写から始まる。  その清澄な雰囲気を全て台無しにするのが、山門の前で泣き叫ぶ莫玄羽(魏無羨)だ。  「はいはい! もうやめてください。雲深不知処で騒ぐことを禁ずる、ですから!」と面倒くさそうに言う藍景儀。「泣かせておけばいい。疲れて泣きやんだら、中に引きずってきなさい」と藍忘機は冷徹だ。  「……俺は男が好きなんだ。藍家は美男子だらけだから、我慢できなくなるかもしれないぞ」と

◎脇役列伝その1:藍思追(2−3)

(画像はアニメ『魔道祖師』前塵編二話より 莫玄羽を心配する蘭思追) (◎脇役列伝その1:藍思追(2−2)の続き)  失魂者たちは天女像に願い事をした結果、それを叶える代償に魂魄を吸い取られたと考えられ、既に金凌や多くの修士たちも、その標的にされていることが判明した。  莫玄羽(魏無羨)の乗っていたロバが、いきなり足を止め、逆方向へ走り出そうとする。ロバに振り落とされた莫玄羽(魏無羨)が手綱を引っ張った時、前方から「ガジガジ」「ゴクゴク」という音が聞こえてきた。見れば、伏せ

◎脇役列伝その1:藍思追(2−2)

(画像はアニメ『魔道祖師』前塵編二話より 動き出す天女像) (◎脇役列伝その1:藍思追(2−1)の続き) 「これはまるで……」  藍思追が言いかけた時、石窟全体が赤く光りだし、供物台と石窟の隅にある線香と蝋燭に勝手に火がついて燃え始めた。皆が警戒する中、そこへ莫玄羽(魏無羨)が駆け込んできて、薬酒入りのひょうたんを天女像に向かってぶちまけ、呪符を石像に投げつけると、石像からは烈火が燃え上がった。  「全員外に逃げるんだ! これは食魂天女[しょっこんてんにょ]だ、気をつけろ