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夏を探しに 〜ときがわ町、川島町〜
書かねばならぬコラムがありつつも、どこかへ行きたいという気持ちが募った。
子どもらを送ったり、送り出したり。すでに時間は9:00。
けれど、朝はどこに向かうも道は混んでいるし、電車を使おうにも遅延しており、それはそれで読めない時間はストレスになるので諦めた。
グループホームにパンツとパッドを届け、図書館に延滞した資料を返しに行き、ついでに書類を市役所で取得した。ここですでに11:00。
このまま家でダラダラするか、どこかに気分転換に出かけるか、迷った。
困ったのは、目的がないことだ。
どこに行くにしても、何か感覚的にでも目指すものがなければ、モチベーションが上がらない。カフェでもいいし、道の駅でも農産物直売所でもいい。
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わからない。
わからないので、西に向かった。
途中で、写真を撮った。
夏らしい写真が欲しい。
目的は決まった。
夏を探しに行くんだ。
どこへ行こう。
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明覚駅に来た。
比企郡ときがわ町の最寄り駅、明覚。
無人駅。
思い出の夏は、母方の実家、遠野。
夏休みは必ず1週間は行っていた。
80年代、それでも誰もいないような村。
川遊びをした。
流されるような川ではなく支流のちょっとした小川。
まだ、護岸工事もされず、ガードレールの脇から易々と降りて遊ぶことができた。
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都幾川。
川遊びできるところはもっと上流。
そこは駐車場代1000〜2000円。
ここは散歩コース。
整備されてなくて遊べないけど、思い出の川に似ている。
石をどかすと、カジカがいた、あの川。
護岸工事が始まり、僕らも思春期を迎え、川で遊ばなくなった。
川遊びをした従兄弟も、転職に転職を重ねて、今は都内。
その弟は引きこもり。
無邪気に、思う存分遊んでいたはずなのに。
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向こう岸へ。
飛び石。
都幾川には、いくつか飛び石スポットがある。
町民の散歩コース。
埼玉県民にも認知されていないときがわ町(私はよく遊びに行きます!)。
低山を背に、八高線の通り道。
最近は、グランピング施設もたくさんできている。
脳内メーカーを模した埼玉地図では、「隠れた秘境」とされることも。
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ときがわ町、嵐山、鳩山町、越生、毛呂山。
もうちょっと山が高いけれども、遠野のように見えなくもない。
私の夏はどこにある?
遠野といっても、南のハズレの上郷村。
母方のおじさんは、おらおらとひとりいぐも、の若竹さんと小中学校の同級生。
今は高速の出口コンビニも出来(と思ったら閉店したっぽい?)、風景は様変わりした。
あの風景は、もうどこにもない。
オリジナルがないから、探すのだ。
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向こうには何がある?
ぶらぶらしてたら、陽も落ちてきた。
あの夏の空の色があるのは、11:00〜13:00の間。
もっと明るく、シャープに見えてはいなかったか。
角膜やレンズが、老いてきているのか。
だから、少しでも、彩度を上げる。
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誰もいない駅。
岩手上郷駅も、無人駅だ。
子どもの頃は、無賃乗車し放題じゃないって無邪気に思った。
ここは明覚。
上郷駅よりは十倍大きい。
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オフィーリアが流れてきそうな色合いにしたかった。
夏は藻が繁茂して、臭くはないが、若干色が悪い。
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それでもメダカは元気に泳いでいる。
ハヤもいた。
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夏は見つかったか?
おそらく。
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どこにあった?
心の中に。