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IBN寮物語—入寮審査会2—
4月4日の午後9時に入寮審査会が始まった。新入寮生12名は全員1階談話室に居て、一人ずつ4階談話室に上がっていく。まずは、名前の早い順に初めの新入寮生が上がっていき、入寮審査会が行われる。早速猪俣がトップバッターとして行き、10分ほどすると戻ってきた。面接内容を聞くが、特に答えず、どことなく表情が曇っている。どうも新入寮生歓迎会は勝手が違うようだ。
とりあえず、一人10分と言うことは、12人
IBN寮物語—新入寮生歓迎会3—
私と猪俣が4階談話室に戻ろうとしているとき、4階の便所の流し台で、初めての手術を終えた外科医のように、手を洗っている坊主頭がいる。嘉門である。話を聞くと、嘉門は口上(こうじょう)を済ませた上に、自力で便所で吐いて、その後自分の手や口をゆすいでいたとのことだった。そして、「二人とも口上(こうじょう)まだやってなかろう。みんな待っとうよ」とまるで自己紹介を済ませていない我々をIBN寮内の寮生が待っ
もっとみるIBN寮物語—嘉門、登場—
鹿本がピルクルを買いに行くといって、一階談話室(IBN寮の半地下の部屋)を出てしばらくすると、一階談話室の扉が開いて、「シャース(こんちわーす)」と挨拶してきた。新入寮生イレブンの新たなメンバーである。
彼は嘉門と言い、福岡出身で、鹿本と同じ理学部の地学(地球科学)系である。嘉門は坊主頭で、肌が黒く焼けており、引き締まった体系をしているので、高校球児のようである。ただ、嘉門が高校球児と異なるこ
IBN寮物語—半地下の生活—
IBN寮(小学校の廃屋)から出てきたのは小柄な男性であった。法学部の3年生という彼は受け答えもしっかりしており、玄関先の受付でいくつかの事務手続きをてきぱきとこなしてくれた。廃屋に住んでいるとは言え、住人は礼節を守っているようであり、これなら自分もIBN寮でうまくやっていけそうだと少し希望の光が見えてきた。
手続きが終わって、あとは自分の部屋に行くだけになり、部屋番号を聞くと、「無い」と言う。