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Perfect days大好きだけど春眠で暁は覚えられない。

学期末の飲み会と並行のレポート地獄もひと段落し、長い夏休みのリハビリがようやく終わったと思いきやまた春休みである。いやまださすがに春じゃない。これじゃ「春まで休み」じゃないか。
むこう2か月暇だと予告されると、映画をたくさん見ようとか、本をたくさん読もうとか、語学を勉強しようとか、いろんな計画を立てる。
いつも計画倒れなのだけど。

1月の終わり、perfect days を見てきた。初めてkinocinemaに行って、リクライニングする椅子に感動しながら、これから始まる二時間に耐えるために体をうんうん伸ばした。
ちょっと乗り遅れた感は否めないが、前情報なしで行ったので、いつ役所広司がペラペラ語りだして私に状況説明をしてくれるのかと待っていたら、してくれなかった。二時間ずっと、彼は私に何も説明してくれなかった。冒頭でまた同じ彼のルーチーンが繰り返し始めたとき、本当に芸術に全振りした作品で、このまま二時間これを繰り返してきたらどうしようかと不安になった。

次に私がびっくりしたのは「トイレ!!??」である。トイレ清掃の仕事をしている。それも東京の公衆トイレの!絶対日本一やりたくない仕事だ。多分ランキング作ってもワースト5位までには入るだろう。だって超絶汚いもん。日給百万でもよほど生活に困っていたら半年に一回やることを検討するレベルでやりたくない。しかもたぶん給料も良くない。あと、彼が帰ったあとつなぎを一週間部屋の壁にかけているのもちょっとやめてほしかった。

曙の頃に家を出て、明るいうちに仕事を終え、銭湯に行き、屋台飯を食う。そういう生活すっごく憧れる。すごいやりたくないけど、トイレを掃除した後ってそれ以外では味わえない達成感があると思う。だから、その達成感を抱えながら味わう銭湯からの屋台は絶対すごいいい。自転車も気持ちいい。布団の中で好きな本を読んで眠りにつくことも、絶対わたしにはめんどくささで実現できないけれど、完璧な生活だ。

ただ、そう思うけれど、また箒の音がして目覚めてしまったとき、あぁ、また朝が来てしまったと、ほんとうに勝手に憂鬱になった。ちょっとずつ違う毎日とか知らない。私だったら絶対まず転職する。

どうして私は、何も説明してくれないこの平山さんがこんなに好きになれたのだろう。なんというか、恋愛でも友情でも愛情でもなく、同性でも異性でも間に関係があるかないかなしにとても好きになれる人っている。そういう好きだ。彼が公衆トイレで迷子の子供を助けたとき、ネズミでも見るような顔で平山を見た母親が、ほんっとうに母親一般に気持ち悪さを覚えそうなレベルで嫌だった。私が代わりに一発入れてやりたい、ああでも、きっと平山さんは何も言わずに私を止めてくれるだろう、そんな妄想がはかどるくらいには平山の存在は好感が持てるものだった。姪が来て誇らしげなのも素直に「よかったね!!」と言いたくなるし、無理なシフトの穴埋めを任されたときは会社に爆弾を仕掛けてやりたいと思ったし、スナックのママが元夫と抱き合っているのを見てやけ酒と多分久しぶりのたばこを買うのも、親友が降られた!みたいな、しょうがねぇなっていいながら駆けつけて一晩中語明かす相手になりたいような、そのくらい大好きになれた。

Save the cat を読んだことがあって、そういえばそこに主人公が嫌な奴だとどんな面白い映画も売れないというようなことが書いていた気がする。それでも、言葉なしにこんなに平山さんを好きにさせる、すごい映画ってこういうのか、と思った。ちょっと、高級すぎて味がしないフレンチみたいでもあった。


まだパソコンに向かってキーを打つ習慣が残っているうちに、結局レポートで使えなかったperfect days を思い出しながら、私が言うことができる感想を書いた。今年こそあの平山さんのようなルーチーンで完璧な春休みを手に入れたいと思っている。そのためにまず部屋をきれいにしようと思いながらやらずに最初の一週間を消費したあたり、やっぱり望み薄なのだけど….。


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