見出し画像

食本Vol.7『江戸の食卓に学ぶ』車 浮代

☆今日から使える!江戸庶民の知恵がいっぱい詰まった本

これは本当に偶然だったのですが、久しぶりに書棚からこの本を引っ張り出してページをめくってちょっと驚きました。
そうですね。福引でティッシュじゃない、その次の賞品がもらえた時ぐらいの驚き。

この本の「はじめに」の書き出しがちょうどTOKYO2020が決まった!という内容の書き出しだったのです。
一瞬、まるでタイムスリップしたような気分でした。

著者がなぜTOKYO2020について触れていたのか、というと、この年~2013年~には同年12月に『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されたからで、その年の頃からでしょうか、メディアでも和食に関する特集があちこちで組まれたように記憶しています。

そんな年の2年後の2015年に発行された本書は、現在の「和食」「日本料理」の礎を確立した時代~江戸時代~の庶民の食卓にスポットを当てて、江戸っ子の食の知恵を大変読みやすい文章で伝えています。
そう。
本書で一番のキーワードは「庶民」。
お公家さんでも僧侶でも医者でもない、「庶民」なのです。

画像1

副題の”美味しすぎる”知恵とは。。。???

画像2

日本橋の魚市場の賑わいを描いた歌川国安「日本橋魚市場繁栄図」より。
魚市場で働く男たちの表情や動きが生き生きと描かれています。

☆『一日三食 、一汁三菜』は江戸時代から
江戸時代は日本の歴史全体を見ても約260年という長い期間続いた驚異的な時代です。この時代の中で様々な文化が生まれ、その多くは令和の現代においても多大な影響を受け続けているものが多いと思います。
その中でも食に関わること。
今でも自分の家の食卓を見渡すと無意識のうちに江戸時代と同じような形式や内容になっている、と気づきます。

その一つが一日三食、一汁三菜。

あいにく、私自身は現在一日三食ではありませんし、一汁三菜でないことも多々あります。
でも、本当は「一日三食にしたほうが良いかもなあ」とか「今日は一汁一菜になっちゃったなぁ」とか思ってしまうことがある。
ということは、食事の基本は「一日三食、一汁三菜」である、という考え方が親からも教えてもらった考え方だからなだろうな、と思います。
そして親からのこの”教え”はなんと400年以上も前の江戸時代に確立されたもの、つまり江戸時代の人々から現在に至るまで脈々と伝えられている”教え”なのだということです。
他にそんな”教え”ってある?

いや、昨今、様々な研究者や学者さんたちが色々な考え方を出されていて「一日三食はもう古い!」とか「一汁一菜のススメ!」みたいなものもありますからなんとも言いませんよ、私は。

でも400年以上続く、しかも日本人みんながおそらく知っている”教え”って。。。私には思いつきません。

☆目次
第1章 日本料理の発祥
第2章 江戸料理とは?
第3章 江戸っ子の食生活
第4章 江戸前の四天王
第5章 禁断の肉食文化
第6章 江戸の外食産業
付 録 江戸の食材辞典

なぜ、江戸時代に一日三食が定着したのか。
これは第3章の『江戸っ子の食生活』に書かれています。
一説によると1657年の明暦の大火が影響をもたらした、と言われています。江戸時代最大の大火事 明暦の大火。結果的に江戸の6割ほどが焼失。
死者は最大10万人とも言われている、歴史に残る大火事です。
この大火のあとの復旧作業のため日本各地から集められた大工や左官などの職人たちが朝から晩まで作業をするわけですが、そうするとハードな労働の合間の食事は重要。一日三食ぐらい食べないと「やってらんないぜ!」ということで一日三食、というスタイルが定着したのではないか、という事です。他にも諸説あるようですので、ご興味ある方は本書を読んでみてくださいね。

☆江戸時代に既に流行!「節約・時短クッキング」番付表⁉~江戸の節約おかずランキングがおもしろい!

江戸時代には戦乱の時期が終わりを告げたことで、庶民が食を楽しめるようになり、急速に食文化が栄えたようです。
そして、庶民が作り出す知恵と工夫のいわゆる「江戸料理」の特徴としては次の4つがポイントでした。
その1 旬の素材を使う(冷蔵庫がないので)
その2 調理に時間をかけない(燃料費が高い)
その3 油をほとんど使わない(調理法は切る・焼く・煮る)
その4 肉をあまり食べない(四つ足食の禁止)

なるほど~
その1,その2はよく使われる「節約時短クッキング」ではないか!

そして江戸の庶民の間ではこんなものが大流行していたようです。
タイトルも粋なもので「日々徳用倹約料理角力取組」
今風に言うならば「チョー簡単!便利!節約おかずランキング」!

お時間があったらよ~くご覧ください(^▽^)/

画像3

相撲の番付表になぞらえるところもなんだか粋。江戸庶民が知恵と工夫によって日々の生活を楽しむ様子が伝わってくるようです。

☆今回の”旅”で江戸庶民から教わった「食」「食べる」こととは?
今回江戸庶民から教わったこと、それはとてもシンプルです。
食べること、それは知恵と工夫でいくらでも楽しくできること!決して贅沢をすることだけが楽しさではない!ということでした。
明暦の大火から立ち直り、様々な文化を生み出した江戸時代。
そして庶民が大活躍した江戸時代。
本書を通して知った江戸庶民の食の知恵を通じて感じるのは、江戸庶民のたくましさとしたたかさ。江戸庶民のどんな境遇にあっても楽しさにつなげてしまうどこか楽天的な懐の深さ。
「豊かさって、ホントはなんなの?」と思います。

☆今回の食本
『江戸の食卓に学ぶ~江戸庶民の”美味しすぎる”知恵』東 浮代著(ワニブックスPLUS新書)

☆本日のおまけ~江戸時代にも大人気だった”たまごふわふわ”。

画像4

画像5

とある地域の料理教室で教わった「たまごふわふわ」
昨今は静岡県袋井市のご当地グルメとして知られていますが、もともとはなんと江戸料理。弥二さん喜多さんの「東海道中膝栗毛」にも登場。
かの近藤勇も大好物だったとか。
今風に解説すると、メレンゲ状に泡立てたたまごをあつあつのお出汁に乗せて蒸す、という料理です。
実は、私が教えていただいたたまごふわふわは長野県飯綱町婦人会のお母さんたち。江戸で生まれて静岡に行って、さらに長野に。。。
当時の”あちこちの弥二さん喜多さんたち”が各地に広めていったのでしょうかね。
いつの時代も旨いものは口コミで広がっていくものなんですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?