見出し画像

告白 (1分小説)

「私の名はブライアン・ジャクソン、27歳。スパイ容疑でナチスに追われ、命からがら亡命してきました」

男の身体は小刻みに震えている。

「ブライアンさん、安心してください。われわれには守秘義務があります」

私は静かにドアを閉めた。

「スイス国旗が見えた時、助かったと思いました。ここは永世中立国ですから」

彼は、部屋に飾られている旗を見あげた。

そして、助けてくれたお礼に、国家機密を教えると言ってきた。

「この戦争が終わったら、ユダヤ人はイスラエルという国を作るつもりなんです」

私の顔を、じっとのぞきこむ。

「信じてないでしょ?でも、事実ですから」


彼が部屋を出ていった後、私はペンを走らせた。

「2021年1月20日
患者名:坂田信二(43歳) 。赤十字マークを、スイス国旗と思い込んでいる」

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集