仮面夫婦に捧げるバラード
※
「キミとの結婚生活を、終わらせたいんだ」
それは、こっちのセリフよ、あなた。
「いったい、どこに『ピリオド』を隠した?もう、教えてくれないか」
私は、手の中にある、黒くて丸い点『.』を握りしめた。今、この『ピリオド』を渡してしまえば、あなたの都合のいいように、扱われてしまうだけ。
「ソファーの下、冷蔵庫の中、下駄箱の奥。そんなところにあるはずもないのに。どこを探しても、見つからない。わかった、ここだな?」
あなたは、薬棚まで、あさってる。
「いくら、色ツヤ、形が似てるからって、正露丸の中に、紛れ込ませてなんかないわよ」
私は、隠れて『ピリオド』を飲み込もうとした。
そこへ、やってきた息子。
「父さんを、自由にしてあげたら。ボクのことは、考えなくていいから」
優しい子に、育ってくれたわね。でも、これは、私のプライドの問題。
家中探しまくった、あなた。ジュエリーボックス、ひっくり返し、結婚指輪の箱を見つけたわ。
「何だ?これ」
箱を開け、中にあった『※』を見つめてる。
「『※』は『繰り返し』の意味よ。毎回、ご苦労さま、あなた」
「どういうことだ?いったい、どこから繰り返すんだ?」
私は、そっと、歌詞の冒頭を指差した。