いのち短し金魚が教えてくれたこと。
40代主婦、初めて金魚を飼う
私は、これまで一度も生物を飼ったことがない。
両親が生き物全般苦手
親の遺伝か、私も生き物苦手に(猫は大丈夫)
ペットの毛にアレルギーあり
ペット禁止のマンションに住んでいた
夫もまた、ペット飼育未経験者だ。
なので、今後もきっと生き物の飼育に縁がないと思っていた。
二男が金魚すくいで、金魚を1匹ゲットするまでは。
「お母さん!見て見て!ぼくの捕まえた金魚!」
「すごいね!でもさ、飼うの?」
「うん!ぼく、面倒見るから、持って帰る!」
「本当に面倒見てくれる?エサあげるだけじゃダメなんだよ」
「大丈夫!ぜったいお世話する!」
このやり取りを聞いていた露店ののおじちゃんが、持って帰るならと金魚をさらにサービスして袋に入れてくれた。
計6匹の金魚が、我が家にやってきた。
とはいえ、生き物を飼ったことがない我が家。
当然、金魚鉢や水槽はない。
しかし、袋のまま放置するわけにもいかない。
夏祭りの後、居酒屋へ向かう予定を急遽変更し、家に帰った。
我が家で一番大きなタライに水を張り、袋の水ごと金魚をうつした。本来なら、「水慣れ」という作業をしなければならないことに後で調べて気づいたが、この時は、とにかく今より広い場所で泳がせるのが最善としか考えていなかった。
金魚を水に放ったことで安心した私たちは、居酒屋で予定通り暑気払いをした。
塩水浴で一安心!?
翌日、金魚の飼い方を調べていた夫が、塩水浴という方法を見つけた。
塩水ならすぐに用意できるので、慌てて夫と私は、塩水浴用の食塩水を準備し、金魚をうつした。すると最初は戸惑っていた様子の金魚たちが、時間が経つにつれて生き生きと泳ぎ始めたのだ。
エサの食べ方や泳ぎ方にも個性がある。観察すると面白い。
後ろ向きで泳ぐ黒い出目金は、子どもたちから「マイケルジャクソン」と名付けられた。大きな体なのに、動きが早い。
4匹で群れを成して泳ぐ和金たちは、よく見ると体格に差があるが、どの子もエサを与えると我先に食いつく。動きも素早い。
白いからだに頭の赤いこぶが目立つ丹頂は、ゆったりとした動きが優雅で華がある。尾ひれをなびかせる様子が美しい。しかし動きが遅く、エサをあげると和金や出目金に取られる。少し心配だが、本人はいたってマイペースな様子。
エサを逃してしまう丹頂のために、水槽かバケツを増やして分けようかと考えていた矢先。
8日目の朝、丹頂が亡くなった。
亡くなった金魚を襲う、更なる悲劇
前日にエサをあげた時は、相変わらずゆったり泳いでいた丹頂。
「また明日ね」と挨拶したのが、最期だった。
丹頂はプカプカと白い腹を見せて浮いていた。
口もひれも動かず、命の灯が消えたのは一目瞭然。
優雅に泳ぐ姿は、もう見られない。
目の前で生き物が亡くなる経験がない私は、ひたすら泣いた。すでに我が子と同じぐらい愛情を持っていたからだ。7日しか生きられなかったのが残念でならないし、辛くて悲しい。
何がいけなかったのかと、思わず自分を責めた。
泣いている私をなだめつつ、夫が丹頂をすくおうとした時だった。
和金と出目金が、亡くなった丹頂をつついている。事態を飲み込めない私たちは、思わず手を止めて見つめた。
和金と出目金は、仲間だったはずの丹頂の死体を食べ始めたのだ。
金魚って、共食いするの?
金魚の生態をよく知らなかった私たちは、目の前で起きたことが信じられず言葉を失った。あまりの衝撃に、泣いていた私の涙も引っ込んだ。
そんな私たちなどお構いなしに、金魚たちは死体を次々と啄む。そのたびに、濁っていくタライの水。
これ以上放置するわけにいかないと判断した夫は、何とか丹頂をすくい、庭の片隅に深い穴を掘って埋めた。
そしてカルキを抜いておいた塩水に、残りの金魚を移し替えた。
夫が世話をする間も、私はショックで動けなかった。
本当は「ちょっと」どころじゃない。
無念で、悲しくて、自分の無力さを思い知らされ、落ち込んだ。
改めて金魚の生態を探る
私たちは、金魚についてあまりにも知らなさすぎる。
必死に気持ちを切り替えて生態を調べたところ、こんな情報を見つけた。
「和金と琉金の組み合わせ」
我が家、やってはいけない混泳をさせていた。
何も知らず、水に泳がせておけば大丈夫と思った私たちが間違っていた。
亡くなった丹頂は、「琉金」という金魚の体型に近い。丹頂とは体型も泳ぎ方も違う「和金」との混泳はタブーだったのだ。
では、残った出目金と和金の混泳は…?
おそらく避けるのがよさそうだ。
水槽をまた一つ、増やさなければならない。
命を扱う難しさとこれから
金魚で、私たちは飼育の難しさに直面した。
特性や習性を知ること
「かわいい」だけでは育てられない
少しでも世話を怠ったら、死ぬ
寿命が短いから、いつかは死ぬ
人間と違って感情があるわけではない
理解していたつもりだったことが、全く出来なかった。しかし、いくら悔やんでも、丹頂の命は帰ってこない。
この件で私たちは、真剣に金魚を育てる覚悟が出来た。
愛情をかけるだけでは、金魚は生きていけない。
手間暇を惜しまず、世話をしなければならない。
生き物を飼うって、そういうことなんだ。
悲しい思いをして、やっとわかった。
残った5匹と長く一緒にいられるよう、よく勉強して世話をしようと私たちは誓った。
そして、備忘録として、noteに記す。