まちがえたっていいんだよ。やり直せるなら。
「人間はミスをする生き物」といいますね。
私も数十年生きてきて、本当にその通りだと痛感しています。
でも私には、ミスを許せなかった過去がありました。
過去を思い出したのは、息子の授業参観がきっかけです。
授業参観の直後、教室にあるものを見つけました。
黒板の上に飾ってあった、『教室はまちがうところだ』という本です。
表紙が子どもたちによく見えるように、置かれていました。
本の内容は分かりませんが、Amazonで見る限り、「まちがうことはこわくない」などと描かれているようです。
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私が子どものころは、間違ってもいいなんて言ってくれる先生は少なかったような気がします。肉親ですら、私がミスしたら反射的に叱るという環境でした。
子どものころは、間違えたら怒られるという雰囲気にのまれ、さらに私の生真面目な気質も手伝い、ミスに対して恐怖心を抱いていました。間違えてはいけないという思いは強迫観念にも似ていて、私の人格形成に大きな影響を及ぼしました。
社会人になったころ、良かれと思って間違いを指摘した結果、同僚を傷つけてしまいました。正論を盾に上司のミスにかみつき、職場で孤立しそうになったこともあります。
失敗を重ねても、心の底では「間違うほうが悪い」と思いながら、表面上はやり過ごす日々でした。今振り返ると、「何て嫌な奴だ」と自ら突っ込みたくなります。いくら若気の至りと言えども、度が過ぎている。友達にいたら、付き合いたくない。
そんな私でも、だんだんミスを恐れなくなりました。子育てのおかげです。
子どもたちが幼い頃は、育児書のような理想的な子育てを目指していました。しかし、実現できませんでした。今考えると、育児書のように上手くいくことなんてほとんどありません。しかし当時は、失敗するのは育て方を間違ったせいだと本気で思い込んでしまい、自分を責め立てました。大事な子育てでのミスが、どうしても許せなかったのです。
子育てで何度も失敗を繰り返し、周りの力を借りながら何度も立ち上がってきました。おかげで、間違うことへの耐性がつきました。今は、恐怖から解放されつつあります。
それでもたまに、「間違えてはいけない」という思考が、頭を巡ることがあります。そのたびに「ちがう。大丈夫。後からやり直せる」と思い直すのです。
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『教室はまちがうところだ』という本が、教室内のすぐに目に付くところにあるのはとても素敵なことだと感じました。
間違いを恐れない大人になってほしい。
失敗しても立ち直れる、しなやかな心を持つ大人になってほしい。
子どもにはこれからも、「やり直しがきくなら、まちがえたっていいんだよ」と伝え続けます。間違えてからが、本番。やり直せばいいんだ。
痛い目に遭って辿り着いた、私の教訓です。