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自分の生き方を自分で選択している人と出逢えることは、〈まなび〉そのもの。
長男のトランペットが不具合を起こしてしまったので、トランペットの先生に紹介された楽器店に修理の予約を入れ、早速、状態を見ていただくことになりました。
予約して訪れた楽器店は、お店の空間造りも、店員の方ひとりひとりの対応も細かい所まで行き届いていて、心地よく感じられる場所でした。
修理のカウンターで、予約の旨を伝えると、早速、修理依頼の伝票をおこしてくださいました。
その係の方が、トランペットを手にした瞬間、長男が、「・・・持つの、慣れてますね。」というと、係の方は、「トランペットをやっていたんです。」と微笑んだ。「先輩だ!」と長男は嬉しそう。
まもなくして、実際の修理点を見てくださる方がいらっしゃり、トランペットを手にして、軽くピストンを動かしただけで、
「1番と3番が動きが悪いですね。でも、2番も良くはないです。」
「今のだけでわかるの?凄い。」と長男も驚き。
「他には、ここと、ここもあまり良くないですねぇ・・・」
係の方は、トランペットの状態を丁寧に調べながら、長男のトランペットの状態があまり良くないことも踏まえ、メンテナンスの仕方を丁寧に教えてくださり、実際にメンテナンスしてくださいました。
メンテナンスしながら、興味が湧いた私は、係の方に質問をしてみました。
「今まで、何の楽器を演ってきたのか」
「学校ではどの程度の練習などをしてきたのか」
「どうして、この職業を選んだのか」
「ご家族は音楽に携わっているのか」・・・などなど。
この仕事を選んだ理由は、高校でクラリネットをやっていた時に、自分の技術面が問題で、先生の指導についていけていないのでは?自分のせいでは?と思っていたのが始まりだったのだそうです。
その時、クラリネットの先生が、「楽器をみてもらいなさい」とアドバイスしてくださり、その結果、楽器に不具合があり、メンテナンス・修理によって、今まで自分の問題点であったと思っていたことが、一気に解消され演奏が充実した、という経験があったのだそうです。
そして、その時、楽器を修理・メンテナンスする職業があることを知り、高校卒業と同時に、全寮制の学校で1年間学び、今のお仕事に就いたとのことでした。
「学校は厳しかったので、大学に行った友達をみると、大学生活を満喫していたりして、自分はああいう経験がなかったなぁ・・・とか思うこともありますけどね。」と彼女は笑っていましたが、そこには、友人に対する羨ましさより、自分好きな仕事を見つけたという誇りが感じられました。
音楽に携わる仕事といっても、思い浮かぶものは、数えるほどしかないと思います。
演奏家、教える仕事、楽器をつくる、ステージの構成、衣装をつくる、音響関連・・・
楽器のメンテナンスのお仕事がある、と今日、知ったことは、私と長男の世界がまた少し広がった気がしました。
丁寧に且つ、手際よくメンテナンスしていただいたトランペットは、滑らかな動きを取り戻し、しばらくは使うことができるまでになりました。職人技を見せていただきました。
そして、〈道具をメンテナンスする〉ということは、単なる調整、ではなく、自分の可能性を広げることでもあるのだなぁ・・・と感じたのです。
夫が鍼灸師として、日々、色々な方のお身体に触れさせていただく仕事をさせていただいていますが、身体も、私たちと共にある〈道具〉のひとつで、そのメンテナンスを怠ると、自分のやりたいことも、思うように出来なくなると思うのです。
楽器と身体、似ていないようで、とても似ていると思いました。
音楽を奏でる時、自分の奏でたい音を出すには、その音を奏でるツールとなる楽器を、十分にメンテナンスする必要がある。
私たちが、自分の成したいことを叶えるには、その表現のツールである身体を、十分にメンテナンスする必要がある。
長男は、トランペットの手入れのレクチャーを丁寧にしていただき、「できるだけ、このトランペットと一緒にいたいから、手入れ頑張ろうっと。」帰り道でつぶやいていました。
私も、自分を十分によく生きるための大事な道具とも言えるこの身体のメンテナンスに、もっと目を向けていこう。
ついつい無理したり、負担をかけたりしてしまいがちですが、身体の声を聴くことを、忘れないようにしなくちゃなぁ・・・としみじみと思いました。
そして、不具合があるときには、専門家のちからを借りるのも大事。
自分だけでは、わからないことが、私たちの生きている世界には、たくさんあるんですよね。
〈専門家〉と言われる方々の仕事振りは、いつみても格好良いです。
この楽器店では、店員の方々の仕事に対する姿勢が、お店を形作っているのだ、と伝わってきました。
最後まで、新しいトランペットの購入を強く勧められるということは、一切ありませんでした。こちらのお店では、「今、使っている楽器を大事にする。」ことを一番に考えてくださっているのだと感じ、次の購入を視野に入れた時、「是非、このお店で購入したい。」と思いました。
そんな素敵な空間で時間を過ごさせていただき、「なんだか凄い」「なんだか格好良い!」と思える、〈自分の生き方を自分で選択している人〉と出逢えることは、子どもにとって、私にとって、なによりの〈まなび〉なのだと感じたのでした。
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