漫画みたいな毎日。「21世紀の海賊たちからの贈り物。」
「10月は、お母さんの誕生日強化月間だからね。」
有り難いことに、毎年10月は、家族による「お母さん誕生日強化月間」が執り行われる。
私としては、誕生日前祝いで美術館に併設されているカッフェのランチビュッフェに行き、それだけで、十分満足だ。もし、ビュッフェにいかなくても、まったく問題ない。
特に、どうしても欲しいものがあるわけでもなく、最近は、どうしても食べたいというものもない。しいて言えば、ゆっくりしたい。家から出たくない、とやや引きこもり気味の思考である。
「ねぇ、ケーキっていつ焼けばいい?平日はみんな忙しいから、土曜か日曜に誕生会をしよう!」と長男から提案があった。
長男は、スポンジケーキを焼けるので、誕生日には自分でショートケーキを作っていたが、「お母さんの誕生日にガトーショコラを焼きたいから教えて。」とのことだった。
私が焼くガトーショコラは、卵や乳製品を使わない簡単レシピ。基本的には材料を計量し、混ぜて焼くだけ。とにかく簡単である。
長男は、「誕生日前に、何回か練習して、当日は一人で焼くようにしたい。」と言っていたが、なかなか教える時間が取れず、今日、簡単に伝えながら初めて作る事となった。
夕飯の希望を聞くと、二男が「餃子!」と即答するので、夫がパスタマシーンで皮から作ってくれることになり、餃子の具の材料になるキャベツも鶏肉も豆腐もなかったので、買い出しに出かける。
買い物先は、ハロウィン一色である。
末娘が、9月の自分の誕生日の時に、「どうしてハロウィンの飾りばっかりなの?私の誕生日が先なのに!」とほっぺたを膨らませていた。
うんうん、あなたの誕生日はめでたいけれど、社会的にはハロウィンの方が有名で、経済効果もあるのだよ・・・と説明した。
今回も、「お母さんの誕生日が先なのに、ハロウィンのが有名なんだね。仕方ないね。」とブツブツ言っていた。「ハロウィンがクリスマスだったらいかった(良かった)のに!」と、ハロウィンの仮装では、おばけや魔女が怖い末娘は、はやくサンタさんが来ればいいのに、と連日真剣に語っている。
買い物には、長男も付いてきてくれ、荷物をもったり、末娘と手をつないでくれたりする。二男は人混みと買い物が苦手なので、夫と留守番である。
帰宅すると、餃子班とケーキ班に分かれ、準備をする。昨日は、皮を作る際の水分量の関係か、生地が固くなるのがはやく、生地を伸ばす作業に夫も四苦八苦していた。
助手として動きながら作り方を長男に伝えると、彼は、レシピを見ながら自分で手早く計量などを済ませ、材料を混ぜ合わせると、オーブンに放り込んだ。
「材料は多めだけど、簡単だからね。」と話すと「うん、そうだね。次はひとりで作ってみるよ。今日は、誕生日祝いなのに手伝わせちゃったから。」と普段はツンデレであるが、可愛いことを言うではないか。
二男は夫を手伝い、必死にパスタマシーンを回している。「うおぉぉぉ~!腕が痛い~!重い~!固っ!」と言いながら、大変そうなのに、顔は笑顔で楽しそうなのが二男の凄いところだ。
生地が出来上がったら、私が順次、具を入れて包んでいく。高速餃子包みマシーンと化して、150個の餃子を包む。
夫が餃子を焼いてくれている間に順番にお風呂を済ませ、皆で揃って餃子で「お誕生日おめでとう!」と乾杯?の音頭をとってくれる。
段々とめでたいのか、めでたくないのか、わからない年齢になってきているが、家族の皆が、嬉しそうに祝ってくれることは、ありがたいことだなぁ、としみじみとする。
餃子でお腹いっぱいにも関わらず、「ケーキ食べよう!」と張り切る子どもたち。長男が、百均でアルファベットのシリコン型を買っていた。何にするのかな?と思っていたら、せっせとカカオマスを溶かしてアルファベットチョコレートを作り、デコレーションしてくれていた。
「Kを2個作るの忘れた・・・今から作るか。」
いやいや、いいですよ。そんな。KをCにしたら?KEIKOでなくて、KEICOも、オサレではない?と提案すると、「なるほど。」とせっせとアルファベットを並べる長男。
ケーキに蝋燭を立て、「ハッピーバースデートゥーユー♪」を熱唱していただき、蝋燭を消すと、クラッカーが鳴り響く。
そして、それだけでは終わらず、そこから二男のギターコンサートが始まった。二男もトランペットを選定した日に、ギターを買い替えたのだ。音程がしっかりしている喜んで、練習にも精を出している。
ハッピーバースデーの曲から始まり、スピッツの「空も飛べるはず」「チェリー」を弾き語り。その後、長男が、トランペットでハッピーバースデーとジュラシック・パークのテーマを披露してくれた。末娘は横でハーモニカを独自に吹いていた。
豪華な誕生会だなぁ・・・と子どもたちの成長をしみじみと夫と眺めていた。なんとも、平和で、あったかくて、ほのぼのした気持ちになった。
自分の誕生日を迎える度に、感じるのは、子どもたちの成長だったりする。ケーキつくりに餃子作り、音楽の演奏。
そんな感慨にふけっていると、2階からバタバタと大きな音を立てて、長男が大きな箱を抱えて降りてきた。
「お母さん、お誕生日おめでとう!」
その箱は、なにやら宝箱のようである。長男が手づくりしたものらしい。受け取るとずっしり重い。これはいったい?
宝箱を開いてみると、こんなメッセージが蓋の裏に書かれていた。
ちょっと!泣いちゃうじゃないか!と思いつつ、堪える。
宝箱の中身は、なんと、「ハリーポッター・全11巻」、全てハードカバーだった。ちなみに、ハリーポッターの作者は、J・K・ローリング。長男の名前の頭文字はK。
重たいはずだ。
ネットで注文した気配も無く、いつ準備したのか、まったくわかならなかった。夫も2日前まで、このプレゼントについて知らなかったとのことで、出資者は夫ではないとのこと。一人で計画し、準備したのだ。然程、多くもないお小遣いをはたいて。
いつ買いにいったの?と尋ねてみた。あまりにも気配がなかったので、不思議でならなかった。
「うろこ雲が凄いねって言ってた日だよ。末娘も一緒に買い物にいって、自分だけ科学館に行くからと別れた後に、ブックオフにいったんだよ。もとからそのつもりだったんだけど。」
その後に、ハードカバー11冊をリュックに詰めて背負ったらしい。さぞ重たかったであろう。
やけに科学館に「はやく迎えにきて」と言った日があったことを思い出した。長男は、ブック島オフ村にて、ハードカバー11冊をリュックに詰め、歩いて科学館まで移動し、迎えの要請をしたのだった。私に買い物したことがわからないように。
そして、密かに自室で、段ボールで、木目まで書き込んで本物顔負けの宝箱を作っていたのだ。
私が末娘や二男にもわかるようにと、メッセージを読み上げると、「音読とか予想してなかったから、恥ずい・・・」と長男。
ツンデレ。
母はすぐに気がつくから、と、悟られないよう、細心の注意を払い、一生懸命考え、準備してくれたのだろう。本気で驚いた。こういうのを〈サプライズ〉というのだろう。
二男は先日、作ってくれた「おいもくん」に加え、ハロウィン南瓜のトーテムポール?雪だるま?をプレゼントしてくれた。誕生日から気持ちが、ハロウィンに寄っているね・・・。ハロウィンの方が社会的には有名だからね、うん・・・。収穫祭、大事。
末娘は「お母さんの欲しいものはなあに?」と聞いてくれる。そして、自分のできることを一生懸命考えて、絵を描いてくれたり、紙粘土でクマさんを作って、プレゼントしてくれた。
しかし、改めて考えてみても、やはり欲しい物はない。
ありきたりな言葉ではあるが、家族皆が、こうして元気で楽しく暮らしているのが、何よりのプレゼントだ。こうして今年も、元気に誕生日を迎えられたことよりも、スバラシイことなどないと思っている。
いつだって今が一番しあわせだ。
もう少し時が経てば、子どもたちも、それぞれ別の船に乗ることになるだろう。そして、お互いの航海にエールを送り合うようになるのだと思う。
今しばらくは、同じ船に乗る仲間として、何卒、宜しくお願い致します。
しんどくて落ち込むような出来事があっても、あなた達の姿を見ていると、生きている限り、大体のことはどうにかなるし、どうにかできると思える。最後には、どんなことも笑ってしまえるから不思議だ。
漫画みたいな毎日を、ありがとう。