やなぎだ けいこの店 #14「もりのおふろ」
★「やなぎだ けいこの店」では、日々、我が家で選び楽しんでいる絵本や店主が読んだ本・最近おもしろいと思ったもの・こと・美味しいもの・やなぎだけいこレシピ、暮らしの中の発見・・・などなど、をマガジンにまとめ、紹介していけたらと思っています。★
今日のご紹介は・・・絵本「もりのおふろ」
〈もりの おくで おふろが わいています。〉
そんな一節で始まるこの絵本。
森の奥にお風呂が湧いている・・・と聞いただけで、日本人であれば、多かれ少なかれ、わくわく、してしまうのではないでしょうか。
「もりのおふろ」西村敏雄(にしむらとしお)さく
温泉の歴史
漫画「テルマエ・ロマエ」にも描かれていましたが、温泉利用の歴史について調べてみると・・・・
温泉利用が歴史に現れたものとしては、紀元前500年頃に、ギリシャで硫黄泉に入浴していたという記録がある。 ローマに有名なカラカラ大浴場をつくったローマ人は、温泉を好み、古代ローマ帝国時代にヨーロッパ各地で温泉を開発し、傷病者に温泉療法を広めたといわれている。
日本の温泉の歴史を調べていくと、古代までさかのぼってしまいまいた。そして、色々な神話もでてきます。神さまたちも、温泉やお風呂をこよなく愛していたのだなぁ・・・。
「もりのおふろ」では、様々などうぶつたちが、おふろにやってきます。
そして、おたがいの背中を流し合い、おふろを囲むように、環ができます。
お風呂や温泉はもともとは、こういう、見知らぬもの同士が、「お湯」を介して、なんらかの交流の場だったりすると思います。
長男などは、冷静に、「コレって、ライオンが背中を流してって頼んでおいて、ウサギを食べちゃうとか、ないよね?」とか言っていますが・・・
食物連鎖の観点から行くと、この絵本で最後に残りそうなのは、ライオンか、ワニか、狼・・・いや、ゴリラとかカバも強いよね?ゾウだって簡単には食べられちゃったりしないんじゃない?コブタや馬、ひつじ、ウサギは圧倒的に不利だよねぇ・・・。いや、でも逃げ足は早いよね?わかんないんじゃない?
と、まったく予想しない違う盛り上がりをみせることもあります。こんな楽しみ方も、絵本のもつ「許容範囲」の広さがあるからだと思います。
私と銭湯
私の父は銭湯が好きで、家にお風呂があるのに、毎日のように仕事が終わると銭湯に寄って帰ってきました。休みの日や、そうでない日も。
私もそんな父に連れられて銭湯に行くことが日常でした。
番台を見上げると、座っているのは、おばあちゃんの日もあり、おじさんの日もある。今では、脱衣所に番台があるなんて考え難いなと思いますが、男湯にも女湯にも、さまざまな人がお風呂に入るためにやってくる。
東京の下町で育った私には、それがあたりまえの景色で、小さい時は、男湯と女湯を行き来できる扉を勝手に行き来していました。
お母さんやお父さん以外のさまざまな体型の人がいて、若い人と年齢を重ねた人は、また当然ながら違います。「みんな同じじゃないんだな。」「自分もいつか歳をとっておばあさんになったりするんだな。」と、肌で感じていたように思います。
お湯を介して共感する。
我が家のこどもたちも、温泉が好きです。この絵本を選んだのは、温泉が大好きな3歳の末娘。家とは違う、広々したお風呂。露天風呂などはずっと入っていられるようです。
札幌は、中心部から車で30分も行くと、温泉があります。
関東に住んでいた時には考えられない恵まれた土地柄だなぁ、と温泉に向かう度に思います。
娘とお湯に入っていると、なんとなく話かけられたり、子育てを終えた人から懐かしいわ、という眼差しを向けられたり、同じ子育て中の人には、「きっと、今は大変は時期だよね。でも、ずっとは続かないからね~!」と心の中でエールを送る自分がいます。
「同じお湯に浸かる」ということだけなのに、街中で出逢ったら感じないような、親近感を覚えるのも、「お湯」の為せる技なのでしょうか。
お湯に浸かっているどの人の表情も、緩んでいる。大変な日常も、すぐに解決しない問題も、ちょっと脇に置いて、こんな気分なのだと思います。
「あ~ ごくらく ごくらく いいきもち!」
「もりのおふろ」の続編?「もりのおふとん」も素敵です。私は、お布団が大好きです。温泉とお布団で私の中の「極楽」は完璧です。
みなさんの暮らしの色が増えますように。 店主・やなぎだ けいこ