空の境界 第5章 「矛盾螺旋」 ネタバレ感想
原作未読。
ストーリーは非常に難解で時系列に追いつくのに必死でちょっと何言ってるかわからないシーンは多々あった。
が、それが本章(ひいては空の境界という作品)にはまってしまう要因の一つであるだろう。
一度で全てを理解でき、飲み下せる作品なんてきっと退屈だ。
もちろん、一本芯の通ったストーリー、完全に置いてきぼりにさせない適切な距離感、美しい作画や美術があって成立している非常に絶妙なバランス感覚があってのことではあるが。
日常という螺旋、逸脱の矛盾
タイトルにもあるようにテーマは矛盾と螺旋だ。
それぞれが何を意味しているか自信はないが、日常と非日常なのかも知れないと思った。
変哲もない日常は螺旋のように、予定調和が日々繰り返される。
それが破壊されるときに初めて、その螺旋は矛盾する。
終盤における臙条巴のセリフは結局荒耶宗蓮に仕組まれた感情の中でしか動けない自分の状況に対する切なさが痛いほど伝わる良ゼリフだったな。
……ああ……この螺旋が矛盾していたら良かったのに……
演出・構成良すぎ
時系列がバラバラで非常に難解ではあるものの、その繋ぎ方が非常にお洒落で、かつカットもセンスに溢れている。
冒頭裏通りの行き止まりのシーンでライトが徐々に落ちて次のシーンに繋がる部分や、ドアノブのシーンなど切り替え方が巧みであり、ぐるぐると移り変わるシーンが本性の主題である螺旋と矛盾をより浮き彫りにしている。
主題歌「sprinter」が良すぎ
毎回のように言ってるけども、梶浦由記さんの作るKalafinaの主題歌が良すぎる。
曲名にもある通り、全体として「走る」ことがテーマになっている。
sprinterという曲が臙条巴を象徴しているわけだが、劇中の巴が走ることを諦めざるを得なかったという背景もあり情感に訴えてくるテーマなのだ。
閉じる螺旋に逆らって
泣いて叫んで消えて行く僕等は
生きて、いるんだ
此処に、いるんだ
曲の終盤のこの部分は何回聴いても涙が出てくるので外では聞けない。
螺旋の中で生きて行くしかないとわかっていても、それでも自分の感じる心に従って、自分の生きる意味を見出すために走るその心情が伝わってくる。