見出し画像

アプリ登録と12歳の詩|日記|2022/3/20

三月二十日(日) 

午前三時四十分に目が覚める。最近、起床まで一度も目を覚さずに睡眠を摂ることができていない。無意識の内に何かストレスを感じているのだろうか。充電器が抜けていたので挿し直す。午前七時半に起床。

午前九時半、BOOKOFF出勤。今日はたくさんのお客様にアプリ登録の勧誘を行なった。単純作業が多い BOOKOFFの業務の中で唯一達成感を味わえる仕事であり、やりがい。

お客様にアプリ登録へ踏み切ってもらうために、自分なりの接客のコツがある。まず店員としてのかしこまった口調の中に、ラフさをいい塩梅で混ぜこむ。お客様にお得な情報をお伝えするわけなので、誰に対しても均一な店員としてではなく、一人の人間として接するような感じを加えるとよく話を聞いてもらえる。そして「今アプリ登録してもらうと100ポイントもらえますよ」というのではなく、「今アプリを登録していただきますと、こちらのお会計をすぐに100円引きできますよ」と直接的なメリットを感じてもらえるように伝える。加えてアプリ登録にかかる時間を実際よりも少し短く言う。そうすることで、お客様に「じゃあ、してみようかな」と思ってもらいやすい。

しかし、ここで気を抜いてはいけない。アプリ登録をしてもらっている際、お客様に店員を待たせているという気持ちを抱かせてはいけない。ここで誤ると「やっぱ今はやめておきます」と断られてしまうことがある。そうならないためにも、お客様のスマホに意識を集中し、声をかけながら一緒に新規登録の手順を進めていく。そうすることで無言の圧力のようなものを生まなくて済むし、スムーズに登録を完了してもらうことができる。今日はこの接客で10人以上のお客様に新規の登録をして頂けた。

午後六時帰宅。晩飯はチキボーンとポテトサラダ。一緒に250mlの小さい缶ビールを飲む。下戸の自分にはちょうど良いサイズ。大学の卒業式に親が参加できるのかどうかについてで母と揉める。父は最近鼻の手術をして鼻呼吸ができなくなっているため、「飯の味がしない」とよく口にする。その割に今日は目をひん剥きながら美味しそうにチキボーンを何本もしゃぶっていた。

食後は岡真史「ぼくは12歳」(ちくま文庫)を読む。12歳という若さで自らこの世を去った子供が残したいくつかの美しい詩。気を抜くと12歳の子供が書いていることを忘れてしまうほどに、世を達観した視点で世界を切り取っていく。この詩集の中で特に「ワイングラス」という詩に胸を打たれた。実際の年齢を軽々と越えた、青春真っ只中である19歳の「ぼく」を大人になった「ぼく」が振り返る詩だ。詩の中の言葉の一つ一つに感動を覚えると共に息が苦しくなってくる。この詩を書いている時の彼の心情に思いを馳せないわけにはいかない。自然と心は今現在から遊離して、何十年も前の彼の机の片隅に立っている。おそらくこの態度は詩に対する可能性を閉ざしてしまうものかもしれない。だけども今はそうせずにはいられない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?