雑記:『無職転生Ⅱ』15話特別ED「ツバサ」のセンスの良さについて語りたい
遅ればせながら『無職転生Ⅱ』第15話「遥か」をみて「やりやがった! マジかよあの野郎ッ やりやがったッ」となったので、雑に書き殴ってみます。
※原作未読な上、近年のアンダーグラフの活動からも遠ざかっているので、ガチ勢の人は生温かい目でスルーしてください
『無職転生』の楽曲に感じる職人魂と「ツバサ」について
これまでも『無職転生』は大原ゆい子に多くのOP・EDを任せており、楽曲からも作品の世界観を作り上げている。
アニソンの地位が著しく向上している現在、この試みは並大抵の覚悟ではない。TK from 凛として時雨「unravel」やYOASOBI「アイドル」のように、アニメ主題歌は世界的大ヒットの起爆剤となるからだ。『無職転生』ほどのヒット作となれば、タイアップの枠も舌なめずりで狙われているはずで、あけすけに言えばもっと売れ線のアーティストに任せてもいいはずなのだ。
そんな楽曲面にもプライドを感じる『無職転生』で、また職人魂を感じる楽曲が公開された。アンダーグラフ「ツバサ」。あのエレキギターのイントロが流れた瞬間に、奇声を発した方も少なくないだろう。
「ツバサ」はアンダーグラフのメジャーデビュー曲であり、最大のヒット曲でもある。当時『世界の中心で、愛をさけぶ』で一躍有名となった長澤まさみがPV(あえてMVとは言わない)に出演したことでも話題になった。
リリース日は2004年9月で、まだまだCDが数十万枚売れる時代。そのなかで「ツバサ」は年間チャート29位に位置づけており、いまランキングを見返してもなかなかに異彩を放っている。
上京の心情を歌った曲であることから卒業ソングとしても定着したので、世代がズレていても馴染みがある人も多いかもしれない。ざっくり言えば、王道とは異なるヒット曲として人々の記憶に残っていたんじゃ。
とはいえ20年前の準ヒット曲で、Mr.ChildrenやBUMP OF CHICKENなどのモンスターバンドの楽曲がカバーされるのとはわけが違う。ここまでの雑な解説だけでも、「そんな渋いバンドの曲を持ってきたのか」と『無職転生』らしさを感じる選曲だと理解してもらえるはずだ。
ナナホシにアンダーグラフを歌わせるセンスの良さ
もしやと思い調べてみると、やはり『無職転生』とアンダーグラフの直接的なリンクがあった。Wikipediaによれば『無職転生』の掲載は2012年からで、その時点で「前世の男」が34歳。つまり2024年現在も「前世の男」が存命であれば46歳であり、アンダーグラフのボーカル真戸原直人と同い年という計算になる。
視聴者側についても、雑に調べた範囲だが『無職転生』のボリュームゾーンは40代にあるようで、「ツバサ」の選曲はマーケティング的にも理に叶っているだろう。制作側・視聴者側ともに刺さる青春ソングとして、「よくここに目をつけて、企画を通したな!」と、思わず膝を打つ選曲だ。
参考:https://gem-standard.com/columns/485
そしてなにより、アンダーグラフというバンドの曲をナナホシに歌わせるセンスが憎らしい。実は初期のアンダーグラフの楽曲には、過去への憧憬や上京の心情を歌う曲が多い。離れた町で暮らす「君」へ向けた曲、失われた日々を歌う曲……異世界からの望郷の心を重ねてみることで、ナナホシがアンダーグラフの曲を歌うことのいじらしさは、筆舌に尽くしがたい。
ナナホシは事故当時(異世界転生時)高校生なので、小学校のころに流行っていた曲という位置づけになるだろうか。
※本当かどうか知らんが、2012年時にナナホシと同世代だった若山詩音も「子どもの頃によく聴いた」といっている。
参考:https://mantan-web.jp/article/20240422dog00m200076000c.html
このように楽曲と現実の時系列を結びつけることで「登場人物たちがこの世界にいた」というリアリティを演出し、異世界転生の世界観を補強している。マーケティング的にも理にかなっており、楽曲的にも的を射ている選曲センスを含めて、視聴者が思う以上にすごいことをしているのだ。
雑記のなかの余談。
アンダーグラフ「また帰るから」 をナナホシの望郷の気持ちと重ねて聴いたらすごい良かったので、ぜひ歌詞と合わせて聴いてみてほしい。シングルの歌詞カードにも「五月病の人は是非聴いてみて下さい」とあるので、今の季節にぴったりです。
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