蝉の声

今年最初の蝉の声を聞いた。

もう、そんな夏になったか……

蝉の鳴く声を聞いて、思い浮かんだ光景は、
走馬灯のように、さまざまな場面が流れた。

随分と蝉に思い出があるんだな。

母の帰省で田舎へ遊びに行っていた頃のことが
ずっと頭から離れないでいる。
とても楽しかった思い出なのだろう。

蝉の鳴く声を聞いて、従兄弟たちと捕まえていた。
純粋な心を楽しんでいた子どもの頃を思い出した。

娘が小さい頃、蝉の抜け殻に興味を持って、
虫かごいっぱいに拾い集めていた。
集めてどうするのだろうと、娘の行動を
楽しく笑って見ていたことを思い出す。

友達家族とキャンプへ行った時に出逢った、
幻想的な蝉の羽化。

夜中に木々にとまっていた蝉の数は、何十匹。
いや、百匹以上ではないだろうか。
辺り一面にある低い木々の全てに、沢山の蝉を見た。
月明かりに光る白い羽は、まるで一面に花が咲いている様。
一斉に蝉たちが羽化をする瞬間の幻想的な夜。

蝉の声に、夏の思い出に浸れた。

“閑かさや岩にしみ入る蝉の声“

芭蕉に似た閑かさを今感じているのかもしれない……

夏に訪れた、濃溝の滝を思い出しながら。

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