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ytv未成年感想③ 4話感想

※注意
ytv未成年1〜9話時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読) 


<4話あらすじ>

「もうキスなんてしないから」雨の中、殴られて傷だらけの姿で水無瀬の家の下に佇む蛭川(上村謙信)を見かねて、仕方なく自宅に迎え入れた水無瀬(本島純政)は、蛭川が好きな映画監督である父・義人(結城貴史)の試写会に蛭川を“友達”として誘う。

後日、宿泊学習で同じ班になった水無瀬と蛭川だったが、当日風邪を引いた水無瀬は部屋で一人休むことに。アイスを持って見舞いに駆けつけた蛭川は、熱を出した水無瀬に「人にうつすと治るらしい」とキスをする。動揺したものの、そばに誰かがいてくれることに心地よさを感じた水無瀬は眠りにつく。

無事に体調も戻り、宿泊学習から帰宅した水無瀬は、リビングに「帰ったら電話ください。大事な話があります」という母・沙紀(加藤貴子)からの書置きを見つけて―――。

出典:ytv未成年公式HP


〜4話感想〜

 伝説のアイスキスが描かれた4話。もちろん、キスシーン以外にも、かなり名シーンが多数の見応えのある回だった。

 冒頭は(勘違いから)水無瀬に避けられるようになった蛭川がわざわざ父親に殴られ、水無瀬の自宅の前で拾われるのを待つシーンで終わった3話に引き続いて始まる。

・水無瀬家でのあれこれ(恋の自覚)

「もうキスなんてしないから」雨の中、殴られて傷だらけの姿で水無瀬の家の下に佇む蛭川(上村謙信)を見かねて、仕方なく自宅に迎え入れた水無瀬(本島純政)は、蛭川が好きな映画監督である父・義人(結城貴史)の試写会に蛭川を“友達”として誘う。

※あらすじより引用

 かなりぼこぼこにされた蛭川。水無瀬家に入れてもらい、水無瀬により手当てを受ける。手当てをしながら、水無瀬は3話で見つけた女の子の手首を掴む蛭川の姿を言及。まさに嫉妬ながら、水無瀬は全くの無自覚なところのもどかしさがたまらない。

 蛭川は女の子といた理由を必死に弁明し、機嫌を損ねていた水無瀬へ(自分はキスにより水無瀬のことを翻弄しているのにも関わらず)
「もう許してくれる? 俺、お前のこと好きになったりしないから。"男同士じゃん"でしょ?」と、しっかり釘を刺してゆく。めちゃくちゃめちゃくちゃズルイ男だ蛭川。
「好きにならないから許して」って、もうすでに好きになってる人が言う事だってばあちゃん言ってた。ほんとだもん。トトロいるもん。

 ただ、蛭川側の感情を思うと(5話まで観るとわかるが)、4話のこのシーンでは蛭川自身「流石にこれ、俺って水無瀬のこと好きなんだな(意訳)」と自覚した直後のシーン。
 過去に蛭川は2話で水無瀬からの「俺のこと好きなの?」という問いかけに対し、「俺たち男同士じゃん」と答えている。おそらく今までの蛭川の性的指向の自認は、"多分ヘテロ"くらいの認識。性的指向の誤認に加えて、(おそらく)初恋ともなると、蛭川自身かなり混乱して臆病になっていたんだろうなと思う。
 高校生程度の精神の発達過程って、"自分は何者か"を探っていくのが主題で、その根底にもなりかねないセクシュアリティが覆るとなると余計。私自身バイセクシュアルだけど、バイかもって思った時はかなり混乱した。セクシュアリティ診断とか無駄にやったし、(相手からの距離感が変わると嫌なので)友達には言えねえ〜〜と頭を悩ませたこともある。ので、気持ちはわかる。セクシュアリティの悩みは、恋心のノイズになる。

 蛭川自身混乱しててまだ訳分かってないけど、恋心を自覚した分、好きな人に離れて行かれるのは嫌。だから「許して、好きにならないから」って、何が何でも引き止める言葉伝えちゃうよな。自分が恋愛的アプローチを我慢すれば、水無瀬が離れてゆく可能性を減らせられると思ってるから。本心からの懺悔なんだろうことが取れて辛い。

 余談だけど、「お前はいい男だよ」と言ったり、離れてゆく手を引きとどめるように自らの手を重ねるシーンやら、それこそ「好きになんてならないから」と言うシーンたちに、"ちょっと背伸びしたアダルトな魅力"を出せるのは、演者がすでに大人の上村謙信くんだからこそ。このシーンは、圧倒的に蛭川の表情の演技が視聴者を惹きつけていたんじゃないかと思う。

 閑話休題。一方、水無瀬の方は奥歯にネギが挟まったような、ちょっともごもごした晴れない表情を浮かべる。……つらい水無瀬の感情も読めちゃう視聴者側からすると、この「好きになんてならない」ってセリフめちゃくちゃ罪深〜〜(大の字)

 なんせ、この時点で水無瀬も無自覚に蛭川を気になってるんだもんな……。「無関心」の水無瀬が、
・可哀想と思うから部屋にあげる
・蛭川が何故キスをしようとしたのかを知ろうとしている
・女の子と一緒にいる姿に嫉妬する
なんて、気になっている以外ない。

*****
 
 2人で布団を並べて「俺たちって、友達なのかな」と、聞くシーンの蛭川にも不安が現れていた。俺は君のこと好きだけど、君はどう思ってる? せめて「友達」の境界は許してくれる? と言わんばかりの「俺たちって友達なのかな」が非常にいじらしい。(この期に及んで試し行動する蛭川)
 聞かれた水無瀬は少しずつ蛭川に惹かれていることに一切自覚がないために、"名前がつけられないから「友達」"としてしまう。ほんの少し落胆したような蛭川の表情が痛い。まだ世界が狭い未成年の2人。(視聴者側は)一目でわかったの、this is love this is love。。。

宇多田ヒカル女史も言ってる(言ってない)

・いざ宿泊学習(水無瀬の自覚)

後日、宿泊学習で同じ班になった水無瀬と蛭川だったが、当日風邪を引いた水無瀬は部屋で一人休むことに。アイスを持って見舞いに駆けつけた蛭川は、熱を出した水無瀬に「人にうつすと治るらしい」とキスをする。動揺したものの、そばに誰かがいてくれることに心地よさを感じた水無瀬は眠りにつく。

※あらすじより引用

 みんなにバレないように足を小突く蛭川のシーン、割とガチ目に失われた青春思い出して甘酸っぺえ……ってダメージ食らった。好きな子と同じ班ってだけでたまんないのに、目の前に座ってくれたらそりゃ足も小突きたくなる。上村謙信、ここのほくそ笑み顔演技うますぎる。アイドル様家業で養われた輝きが抑えきれていないのに、ガチで好きな子を目の前にした等身大の高校生の顔してた。すごい。

 メッセージアプリで恋愛の一番楽しい時期のやり取りする蛭川と水無瀬。(おやすみって言い合うのはもう好きのそれじゃん)
 2人の部屋や小物使いが蛭川は黄色、水無瀬は青が多い印象。意識されたイメージカラーかな。リュックも青いね。体温計やバスのナンバーの373は(みなせ)だと、インスタライブで監督がコメントを残していたので、遊び心のある監督なんだなと思う。

 水無瀬を看病しにきた蛭川へ「独りなら慣れてる」とか言う水無瀬。そういう家庭だよなあ……ってしんみりしたのも束の間、家庭の暖かさを知っている蛭川が母親から愛された証であるアイスをわけ与える。自分の知る幸せを、水無瀬に半分こしてくれる蛭川。好きな人に自分が知る愛を与えてあげたい。1話から3話を通して、傷の手当てや住居の提供など、親がする無償の愛を提供していた水無瀬が、初めて蛭川から愛を返されるシーンだった。

 初めはアイスをそれぞれが食べていたものの、いてもたってもいられなくなった蛭川が水無瀬のアイスをかじる。"水を飲ませる"シーンを実質キスとして描いてたらしい1話(監督インタビューより)に倣って、水無瀬のアイスを食べる蛭川もおそらく実質キスとして描かれてるよね……?

※監督インタビュー(できれば前半から読んでほしい)

 水無瀬のアイスを食べたことにより、怒られるのではなく「風邪がうつる」と心配された&風邪をうつすと治るに対して「こんなんじゃ治らないよ」により、キスの承認を得た蛭川が「もうキスしないから」をおおよそ14分で大撤回。(早すぎるョ)水無瀬にキスをする。
 蛭川は最初からおそらく最後まで、相手の承認を得ないと行動が起こせない。これは令和の倫理観! ……とかではなく、純粋に本音や希望を踏み躙られてきた、傷つけられた人だからなんだろうなと思う。少しずつ試し行動をして、承認をしてもらってからじゃないとアクションができない。水無瀬という人間の境界を、少しずつ少しずつどこまで許してもらえるか確かめながら侵食している最中なんだろうなあ。

 演出としては、BGMが入っていた2話のキスシーンとはまた異なり、俳優が発した生のセリフが際立つように無音。それにより、人間の人生のワンシーンを切り取り、垣間見ているような、そんなキスシーンだった。

「溶け始めちゃったね」は、互いの境界も含むんだろう。アイスは青く水無瀬の色をしていて、アイスを食べた蛭川の舌を青く染める。一方、蛭川側から当たるライトは、オレンジの暖かな光(蛭川の色)をしている。キスシーン後、蛭川が水無瀬から離れると、蛭川で遮られていた、オレンジの光が水無瀬の頬をオレンジ色に染めるというかなり美しい映像演出になっている。(互いの境界が溶けて交わり始めている証拠)

 「ここにいるから安心して寝て」って母親に言われたことなんだろうなあ蛭川……。

・現実の不条理(親への反抗)

無事に体調も戻り、宿泊学習から帰宅した水無瀬は、リビングに「帰ったら電話ください。大事な話があります」という母・沙紀(加藤貴子)からの書置きを見つけて―――。

※あらすじより引用


 そうして、宿泊訓練から帰ってきた蛭川と水無瀬はそれぞれ親から、夢を醒まされてしまう。
蛭川は"汚された宿泊訓練のお知らせ"により、楽しかった記憶は汚され、親同様にお土産を汚す(ゴミ箱に投げ入れる)という方法で反抗。
水無瀬は"綺麗で無機質な用紙に書かれたお手紙"により水を差され、親同様に紙を洗い流す(水道で手紙を洗い流す)という方法で反抗する。

 反抗する相手が親であっても、社会に出たことがなく、世界が狭い未成年である彼らは反抗の方法すら親をなぞらえることでしかできないことが皮肉。あまりにも皮肉。
同時に、荒れた蛭川家と綺麗ながらも無機質な水無瀬家の対比がされている。(どっちも形の違う地獄)

 そして、2人は思い出の公園に逃避し、水無瀬と蛭川は初めて互いに弱音や本音を吐き出しあう。
「留学なんて行きたくないよ」と言う水無瀬に対し、「行かないで」と言う蛭川。(※個人的に次話である6話で大変効いてくるセリフ)

 このシーンは本島純政の演技が光っていたなと思う。本島純政本作を通して度々、近所に住む高校生の水無瀬くんになるんだが、まさにそれだった。ytv未成年、等身大の高校生を描き出すのがやたらと上手く、リアリティー番組を観ているように錯覚する時がある。

 4話はそうして、初めて互いの弱さと強さを見せ合い、「僕と君の境界が溶けてひとつになればいい」と願う水無瀬のシーンで終わる。4話二人の心情を知る上でも、良いシーン多かったなあという印象。


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