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ytv未成年感想⑤ 6話考察・感想

※注意
ytv未成年1話〜10話&アフターストーリー時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読)

前回↓


<6話あらすじ>

蛭川(上村謙信)は水無瀬(本島純政)を連れて、母・晴華(西原亜希)と異父妹のひなたが暮らす家を訪れる。ピクニックで母親との和やかな時間を過ごした後、水無瀬と二人になった蛭川は、自分も父・正彦(オクイシュージ)のように暴力をふるう人間になることを恐れていると話す。それを聞いた水無瀬は「俺が見張る」と抱きしめ、二人は初めて一夜を共に過ごすことに。

翌日、帰る途中で立ち寄った海辺で蛭川は「俺、殴られっぱなし、やめる」と父に向き合う決心を語り、水無瀬も蛭川の支えになることを同時に決意するのだった。

ある日、買い物の帰り道に蛭川と電話をしながら歩いていた水無瀬は、真島(堀家一希)の万引きを偶然目撃してしまう。慌てて蛭川にその事実を伝えるが、蛭川からの連絡はそれ以降途絶えてしまうのだった。

出典:ytv未成年公式HP


〜6話感想〜

 ドキドキ実家ご挨拶デート。と書くと聞こえはいいが、実際のところ情緒が振り回されるジェットコースター回。話タイトルが「互いの海は混ざり合うはずだった」なのが、もうまずもってずるすぎんか?
 というのも、水無瀬くんは蛭川と自分のことを
2話・9話で「住む海が交わらない魚(※意訳)」
4話で「空と海のように(※これまた意訳)」って比喩してる。
 ……ってことはもうタイトルの時点で、「混ざり合うはずだった海は混ざり合わなかった」=「水無瀬と蛭川は心を重ね合わせることができない」って示唆されちゃってるのである。(監督はヴィクトル=ユーゴーなのか?)

・蛭川家へようこそ

蛭川(上村謙信)は水無瀬(本島純政)を連れて、母・晴華(西原亜希)と異父妹のひなたが暮らす家を訪れる。ピクニックで母親との和やかな時間を過ごした後、水無瀬と二人になった蛭川は、自分も父・正彦(オクイシュージ)のように暴力をふるう人間になることを恐れていると話す。それを聞いた水無瀬は「俺が見張る」と抱きしめ、二人は初めて一夜を共に過ごすことに。

※あらすじより引用


「殴られてることとか知らないから適当に話し合わせてくれない?」って頼む蛭川。それに対して、水無瀬は「得意」と答える。家庭状況がそのまま見えててかなりキツイ。自分の母親に対してもそうなんだろうよ。

 住む海は分かれていて、水が交わることはない。……はずだった。って交わりそうなミスリードやめて欲しい。タイトルで爆速否定してるんだからよ。
 蛭川父家と比べて非常に手入れされた、綺麗なお家である蛭川母家。観葉植物ってなんだかんだ手間がかかるのに、かなりの数が部屋の中に存在する。育休中なのかと思ったけど、専業主婦だったりする? 家の規模からも旦那相当稼いでるよね?(ゲスな考察)

「卒業したら自力で生活する。それが俺の夢だから」
蛭川の建前がここで発動される。水無瀬との心の距離が縮まっていても、まだ本音は言えない蛭川(もちろんこの時点で家を出たいというのは本心だろうけど)

 そして、ワクワク(?)ピクニックへ。
 蛭川母と蛭川の関係性見て複雑そうな顔する水無瀬。そうだよね、手料理が与えられて冗談を言い合うって、水無瀬の家庭にすら無い暖かさだもんね。蛭川は自分すら持ってない幸せを持っているのに、普段父親にボロボロにされている。全部知っている水無瀬にとっては、複雑な風景。
 ここで母親の発言より父親のコミュニケーション手段が、学生時代から暴力(ケンカ)頼りだったことがわかる。そんな父親に似てると言われる蛭川。本当可哀想。離れて住む息子のことを"母親だから"という理由で全てわかった気になるのは横暴だよ。朗らかピクニックに見えて水面下がグロすぎる。蛭川の怪我について言いかけて誤魔化す水無瀬。誤魔化し方好きだ。不自然じゃない。
 
 その後、2人きりの海のシーン。今まで建前でのらりくらりと交わしてきていた蛭川が「親父の息子だから水無瀬のこと殴っちゃうかも」と、ようやく本音を話す。
「留学行けよ、(行かないでは)ただの本音じゃん」って、自分の発言や存在を踏み躙られてきた人が発する言葉だよな。自分の発言に重みがなくて、何の力もないって諦めている人の発言。
 だから水無瀬が慰めてくれても、
「留学行けよ、行かないとダメだから」
と、建前で押し戻してしまう。
それでも、もう一度「行かないで」と言ってしまうのは、彼らの背景にうつる押しては返す波のように、葛藤している最中なんだろう。そう、まだ葛藤の最中なんである。背景は夕日。海と空が少しずつ同じように交わってゆく=蛭川と水無瀬の境界が少しずつ溶けてゆこうとしているメタファー。
 それにしてもここのシーン、セリフがいまいち聞き取りづらいのに生きた高校生を感じる。(これは監督の妙だなあ。そのまま使うあたりに、伝わりやすさよりも現場で出た呼吸を重要視してる事が伝わる)
 いじいじと蛭川のパーカーを掴む水無瀬に、触れたくてたまらない。離れたくない。という意思が感じられていじらしい。本島純政すごいな。

 からのベッドシーン。青基調としたライトに、黄色い光がシーリングファンの動きによって混ざり合う姿が、水底に降り注ぐ太陽の光のようであり、心を通わせる蛭川と水無瀬のようだ。室内がやたらと白統一になっていたのは、この光の演出がしたかったからなんだな。
 余談だけど、この横並びになりながら、互いの感情を静かに確認し合うシーン、CMBYNに似ている。

・ようやく交わる2人の海……?

翌日、帰る途中で立ち寄った海辺で蛭川は「俺、殴られっぱなし、やめる」と父に向き合う決心を語り、水無瀬も蛭川の支えになることを同時に決意するのだった。

※あらすじより引用

 からの翌朝。背を向ける水無瀬。
 
2人は蛭川家を後にする。再び海に向かう蛭川と水無瀬。天気は曇天、空と海の境界が見えないほどの曇天。
 ……って、これ確実に昨夜好きって言ってないね。なんなら、行為も最後までしてないね。好きも言えない蛭川が最後までできるわけがない。(実際好きと言ってなかった事が8話で判明する)
 というのも、4話ラストにおける「空と海の境界が混ざってわからなくなるように。僕と君の境界線が溶けてひとつになればいい」が実現したのって、蛭川家を出た後のこの海のシーンなんである。蛭川と水無瀬が心を通わせた(ように見えた)のってこのシーンが大サビ。

 ベッドシーンが「粉雪時に頼りなく心は揺れるああ〜↑ああ〜→」だとすると、
蛭川家を後にした海のシーンは「粉あ雪い〜!ねえ!心まで白く」というラストの特大大サビだ。

 ラブロマンスとは、ラストの特大大サビで一番心が近付くもの。加えて、ytv未成年は一貫して、境界が交わるか否か=心の距離にかなり重きを置いている。
(めちゃくちゃメタな話すると、ラブロマンス作品において、登場人物が「好き」というシーンを視聴者に見せないのはよほどな理由がある。何故なら見せ場になり得るシーンなので)

「母さんに新しい家族ができて、親父しかいなくて。だから怖かった、親父に捨てられると1人になっちゃうんじゃないかって。でも、もう……」

 水無瀬がいるから……とは、言えない蛭川。代わりに「まともになりたい」と伝える。水無瀬の隣にいるには、まともにならなければいけないと思い込んでいるが故。まだ現時点の蛭川は、自分のことを水無瀬の隣に居られる人物だと思っていない。
 しっかりと水無瀬に向かって、すり替えた本音をぶつける蛭川。水無瀬の手を引いて、空との境界がない満ち足りた海の中に入る。家庭から「無関心」を引き継いでいた水無瀬も、蛭川に向かって「寂しかったら俺に言って」と伝える。相手への関心。
 5話のモノローグで蛭川が水を浴びるのは、「汚い自分を洗い流すため」と言っていたが、2人はここで自分たちを洗い流している。"自らの罪を洗い流し、新しい自分に生まれ変わる"という、キリスト教における洗礼みたい。(BGMが讃美歌がじみているのも、意識されたものなのか?)

 そして、2人だけでは解決できないはずの、親やとか家庭のことを、全部解決したみたいに晴れ晴れとした顔に。満たされた海の中。住む場所が交わった魚たち。よかった、いい作品だった。おめでとう👏……で、終わらないのがytv未成年である。

 海に入ってぐしょぐしょに濡れた2人は、バスに揺られる。この"計画性のなさ"に、まだ2人が子供で、確約された将来がなく、未来のことなんてさっぱりわからないと言われているようで残酷だ。
バスの中で揺られる2人が実際にまだ少し濡れているあたりに、意図が感じられる
(海に入るシーンはアナザーストーリーでもセルフオマージュしてくるんだが、これは交通器具が自分たちの車に置き換わる分、自分たちで未来が決められる最低限の計画性がある社会人を表していてまた良い。)

 誕生日に手紙を書く約束をする2人。確実にこの先留学してしまう水無瀬に、手紙という切れない繋がりを求めているようでいじらしい蛭川。二つに別れていたオレンジの片割れが一つに繋がり、分かれ道でふたたびふたつに分たれる。スローで見せないでください……不穏。

・真島の乱と交わらない海

ある日、買い物の帰り道に蛭川と電話をしながら歩いていた水無瀬は、真島(堀家一希)の万引きを偶然目撃してしまう。慌てて蛭川にその事実を伝えるが、蛭川からの連絡はそれ以降途絶えてしまうのだった。

※あらすじより引用

 場所は学校へ。真島くんの不服そうな訝しげな視線と、柔らかに微笑む水無瀬の姿が対比される。真島くん必ず比較役に使われるね。可哀想。

↓真島のことはこっちで書いたので割愛

 プールサイドに再び呼び出される水無瀬。感情を交わらせた海の中と、決別してしまう水の張られてないプールの中。同じ水を司る場所でも、水が張られていない場所では魚は生きていけない。感情を交わらせられない。

「お前もクズじゃないからやめろ」と、真島へのケジメをつけて、まともになろうとする蛭川。一方、"君子危うきに近寄らず"思考で育った水無瀬は、蛭川のケジメの付け方が理解できずに「何やってるんだよ」と怒る。
 まともになるためのケジメの付け方が水無瀬と蛭川で形が違うだけであって、これは蛭川なりのケジメの付け方なんだけども。2人を決別させてしまう。(蛭川のケジメを蔑ろにするように、教師の「君はどこまでクズなんですか」という発言がまた効く。)

 おそらく5話でキスをした場所あたりから撮られたフレームにより、水無瀬と蛭川が断ち切られるラストシーン憎すぎる。これ、8話において滑り台でも同じことやってるのがまた憎い。物理的に2人の心の距離や弊害を示してくる。

 波のように近づいては離れてゆく、これまた怒涛の6話だった。(波瀾万丈じゃない回がないよytv未成年)

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