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ytv未成年感想⑩ アフターストーリー考察・感想

※注意
ytv未成年1話〜10話&アフターストーリー時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読)

前回↓

(また会う日までと締めたのに、すぐに書いちゃった……ご愛嬌ということで)


<アフターストーリーあらすじ>

※できるだけネタバレを防止し、FODで確認してほしいため今回は割愛

観て損は、絶対にないのでぜひFODへ(notステマ)

〜アフターストーリー感想〜


・はじめに

 この感想文には、私のLGB観が混ぜ込められています。私もただの人間なため、無意識の差別が含まれている可能性もあります。もし気がつくところがありましたら、そっと教えてください。
※あと、当たり前ですが、これはマイノリティの総意でないです。あくまで私一個人の感想です。 


・蛭川と水無瀬の結婚について

 この時点の「結婚しよう」に対して正直思うことがたくさんあったのだが、それはまあアフターストーリーの感想で述べることにして。

※前回の感想文より

 上記は、私が書いた最終回の感想文の、ラストから引っ張ってきている一文。正直思ったことを、書きたいと思う。

 「結婚する?」に対して、正直ええ! 水無瀬がそんな不誠実なこと言っちゃうのか。と思った。というのも、ご存知の通り、日本の制度では、まだ同性婚は実現されていない。親から散々「堅実な将来」を押し付けられている水無瀬が。4話でセクシュアリティについて悩んでいた水無瀬が。いまだに実現していない制度を、本当に口にするか? と、正直なところ思っていた。
 彼らが自認をゲイとしているのか、私にはわからない。けれど、ゲイにとっての幸せのゴールって結婚ではないと思う。現状制度がない、選択肢がそもそもないのだから。だからもし、この「結婚」が、マジョリティ(ヘテロセクシュアル)にわかりやすい、幸せのゴールという符号として使われたのだとしたら……そうだったら嫌だな、と最終回を見たときには思った。それこそマジョリティの言う「彼ら」に対して、あまりに不誠実じゃない? と、(彼らの一員らしい)私は思う。

 ……が、アフターストーリーにて「いつする?」と尋ねる蛭川へ「法律が変わったら」と水無瀬は続ける。ここまで聞いて、よかった。ちゃんと私の知っている水無瀬だった、と安心。おっさんずラブ2の結婚みたいな概念じゃなくて良かった。と安心した、ひねた私がいる。
 同時に、実家にすら「幸せ」を見出しておらず、婚姻制度自体に執着がないはずの水無瀬が、蛭川と結婚したい、家族になりたいと思うのってものすごい愛だなと思った。愛されてるなあ蛭川。私たちできることってなんだ? 投票か? 選挙行こう……。なんせ大人だもん。

 話が逸れたが、ここのシーンの演出の面で言うと「もし(法律が)変わらなかったら……?」から自宅を離れてゆく晴喜までが夢かな? 「法律が変わったら」はちゃんと伝えてて欲しいという願望。

・結婚ラッシュブルー

 周りの結婚ラッシュにブルーになるのは、20代共通の課題だよなあ。「長く付き合っている彼氏がプロポーズしてくれない」やら、「親に結婚を急かされる」やら、「したいのに相手が見つからない」やら。……なんか名前ないのかな、結婚ラッシュブルー? 三十路ブルー? 

 職場でゴリゴリのハラスメントを受ける水無瀬。LGBの話になるとちょっと難しく考えがちだけど、基本は「相手から開示してこない事には踏み込まない事」だと、私は思っている。でもこれって多分、コミュニケーションの原則だよね?
 そういった点で、「水無瀬の結婚(恋人)」に勝手に踏み込んでくる職場上司は、ダメコミュニケーション。セクシュアリティ云々以前に、セクハラじゃんな……。作中はもう2029年(2028年?)なんだから、セクシュアルハラスメントの概念については身につけておこうよ……と思うんである。
 でも「同性だからノーカンでしょ」とか思ってる人が私の周りには多い。まだそこなの? って驚いたりする。(都会はそんな事ないのかな?) 

 で、そんなセクハラを受けた水無瀬は「ものすごく愛している恋人の存在を、周りに公表できないこと」に悩んでしまう。母親からはチクチク結婚について刺されて、友人達は結婚・幸せラッシュ。自分だってこんな好きな人がいるのに、「理解されない・周りからの接し方が変わってしまうかもしれない」ことが怖くて、公表できない。

 わかるなあと勝手に思ってしまう。何もこの「周りからの扱いが変わるかもしれない恐怖」の全てが、差別される恐怖に起因するとは思わない。関係値の変化も、これに含まれると思う。

・余談

 私の話をするので、また飛ばして欲しい。わたしは現在恋愛をしていないバイセクシュアル。と、もう何度も書いたことだが、私にも同性の友人がいる。一度も恋愛感情を向けたことはない、ただの友人だ。
 水無瀬の苦悩から比べると、本当に申し訳ないくらいの悩みなのだけれど、私もその友人にカミングアウトはしていない。私の場合は、現在同性の恋人もなく、今更カミングアウトする必要がない。むしろ、カミングアウトをすることにより、関係値が変化してしまう可能性が怖かった。
 私という人間は変わらないのに、「バイセクシュアルの人を傷つけないようにするには」という考えが入ってしまうかもしれないのが嫌だ。共に旅を楽しみたいのに「ホテルで同室を選ぶのは」と気を遣わせるのが嫌だ。下心なんて断じてないので、何か起こるわけがない。(のに、わざわざこうやって書いていることに対して、読み手のあなたは猜疑心を抱いてないか?)
 本当に小さな悩みだから。今のままの交友関係を続けたいからこそ、わたしはセクシュアリティを飲み込む。
 とまあ、「マイノリティを理解する」って難しいよなあってほんまに思うわけで。差別心を抱き、その心のままに接する人が絶対悪なのは間違いない。でも、良かれと思って、特別優しく接するのもまた違うよなあと思ったりする。

 今まで気兼ねない関係だった相手に「気を遣わせる」という変化って、ものすごく嫌だったりするんだよ。

・関係値が育った蛭川と水無瀬

 話を戻す。寂しくて蛭川のSNSにいいねを押しまくる姿、いじらしい。アフターストーリーにおいて、「お前といると弱くなる」「俺はお前といると強くなれるよ」が徹底して反映されている。
 撮影先からわざわざ連絡してくれる蛭川素敵だな。あと水無瀬やっぱり1人になると食事が疎かになるんだなあ。生まれとか育ちって簡単には変わらない。ゼリーを食べる姿を見て思う。
 アフターストーリー、画面が全体的に暗いのは、後編で蛭川が言及する恐ろしい象徴としての夜を表しているんだろう。明けない夜に飲み込まれる水無瀬を表している。
 22時半までひとり仕事をする水無瀬。頼るの苦手なところが出ちゃってないか……極め付けに、母からのお見合い催促メールはキツイ。苦しみの波に飲み込まれる怒涛の展開。ソウルジェム濁りまくりだよ……。

 地にまで落ちた気分の中、颯爽と車で登場する蛭川。救世主だ。……からの路駐キス。
「俺はいいけど、いいの? ここで」
 職場付近でキスするの気になるよな……夜だから大丈夫だよ。社内誰もいないんだもん。水無瀬残業手当絶対つけろ、せめて労働に見合った対価を得てくれ。😢
 そして「ダメ……」と言いながらも、堪えきれずにキスしてしまう水無瀬。ここのシーンには、ラブロマンス作品としてのフェティシズムを感じる。胸キュン有識者による仕事ですよねこれ。知ってますこの手法。

 ようやく明るいライティングになる入浴シーン。アフターストーリー前半において、陰鬱なほどに描かれた水無瀬の不安を、蛭川が一つ一つ取り除く。まさに後編で蛭川が言及する「暗かった夜がそのうちに明るくなって、海がキラキラと輝いて見えた(意訳)」を表しているシーン。
 言葉不足で離れ離れになってしまった過去を持つ彼らが、5年も経つと言葉で不安を取り除いていけるほど成長したんだな……と感じる。「俺たちが知っていればいい」これもアフターストーリーにおいて度々言及される課題。蛭川と水無瀬の幸せは、まだ自分たちだけで飲み込まなきゃならない段階なんだと、視聴者に何度も訴えかけてくる。

 からの熱烈なキスシーン。これも胸キュンマイスターの仕事ですよね。わかってます、ありがとう……🖐️  マイノリティの苦悩が描かれるとなると重くなりがちな分、甘いシーンがしっかりと甘くとられている。俳優の2人とも身体を張ってくれてありがとう……お陰で蛭川と水無瀬が右往曲折しながらも、2人でいる日々は確実に幸せなんだろうとわかるよ。
 腕枕をする水無瀬に甘える蛭川。「明日あいつらに言ってみる? 俺たち付き合ってるって」に対して、目を瞬かせ、不安げに揺れる水無瀬。枕が黒い……。そんなところにまで現れる不安のメタファー。

・胸キュンマイスターの仕事すごいな

 勝手にいなくなってた人が、ちゃんと帰ってくる家になってるんだな……😭不安に思う水無瀬には申し訳ないけど、そう思っちゃった。
 「家庭性」を母親から引き継いでいる蛭川。相変わらず料理ができる。作ったのはパンケーキと、目玉焼き(サニーサイドアップ)太陽のメタファー。
 そんな、忘れ物と言ってキスを強請る方法があるんですか……!? すごい、やっぱプロの胸キュンマイスターによる仕事だ。胸キュンマイスターの資格が欲しくなっちゃうな。そして、普段は蛭川の方が甘えたなんだろうなと、このシーンで確信したよ。

 ……さて真面目に話をすると、蛭川の着ているニットはグリーン。青と黄色の混色であり、2人の関係の揺るぎなさを感じさせる。

・根本の結婚祝いへ

 高校時代の話に花を咲かせる仲間たち。
「無茶苦茶尖ってたんだから、高校時代の蛭川」
という柴のシーンで、水無瀬と視線を合わせる蛭川。
 ……ここ、すごい。恋愛って感じのする視線の合わせ方だ。視線で語り合う、2人だけの世界がそこにある。勘のいい人間なら2人の関係性に気がつきそうなものなのに、周りおそらくみんなヘテロな分、性別のバイアスがかかってて誰も気が付かない。
 それとこのシーン。みんながお酒を飲む中、ソフトドリンクを飲む蛭川の姿がある。父親のトラウマによりお酒を飲まないんじゃないか、という考察ツイートを見つけてノックアウトされた。さりげなく描くんじゃない。

 カミングアウトもどきのジャブを打つ蛭川。飲み会の場は混乱する空気に……。耐えられなかった水無瀬が、冗談の方向に舵を切る。
 ち、違う水無瀬、これは多分拒絶されたわけじゃない。「明日からボツワナに移住する」って言われた時と同じなのである。「は? ボツワナ? 俺イマイチ理解できてないんだけど」ってなるだろう。これがボツワナ人の同僚がいたり、熱狂的にアフリカ旅行に行くアフリカオタクがいたら「へ〜、ボツワナかあ」ってなるのと同じ。
 あのシーンの反応だけでは、柴や根本の同性愛(両性愛)に対する考え方までは描かれていない。嫌悪感で顔を顰めるものは1人もいなかった。薮から蛇が出たように、思いもよらない発言へどう言葉を返すべきかあぐねている姿だったと私は思う。多分柴や根本の身の回りには、カミングアウトしているマイノリティがいなくて、あんな反応になったんじゃないかな。マイノリティが身近だった場合、もっと違う反応になったのではないだろうか。
 いや、でも……たかがセクシュアリティでそんな、反応されたらたまんないぜ。10人に1人だぜLGBTQ……今、隣にいるくらいの気持ちでいてくれという気持ちもわかる……。

 あの瞬間に出ていた水無瀬の「どうせ言ってもわかんない」というのは、水無瀬側の偏見でもあるんだよな……。あの場で腹を決めて「本当は付き合ってるんだよ」って言えば、混乱しながらも理解してくれた可能性もあるかもしれない。理解ってなんだ……キモいな。待って、理解ってキモいな! ただ付き合ってるだけなのにな(二度目)

 偏見はマジョリティ(多数派)側だけに限らず、マイノリティ側にも存在すると私は思う。もちろんマイノリティ側は、マジョリティと違って「傷つけられるかもしれない」側。その分、臆病になるのは当たり前。互いに価値観をすり合わせていくしか無いんだが、それにより傷つく可能性が高いのはマイノリティ側。というのは、ちょっと割にあわないよね。言わないほうが楽だもん。

 なんか、もっと気軽に話できる世の中になればいいよなと思うよね。あと何年かかるんだろうな、そんな世の中。特効薬がない分、まだまだかかりそうでやだな。

・二人の海へ

 高校時代2人を引き裂いた花火が、闇を照らす光として使われるのすごくないか? ここの蛭川、綺麗だね(お前しか見えてない)状態すぎる。

 蛭川により、夜が怖いものとして語られる。まさにアフターストーリーにおける2人を表すセリフ。「闇に飲み込まれようとも、空が明るくなれば、海をキラキラと照らしてあげられる(意訳)」度々空として比喩されてきた蛭川だからこそ意味のあるセリフだ。闇に飲まれようとも、俺がそばにいる限り、君のことを照らしてあげられる。そんなの愛すぎるよ蛭川……。あと最終回でも頑なに「好き」って言わなかった蛭川が「愛してる」を伝えるの狡すぎるな。これはなんて技なんですか胸キュンマイスター!

「結婚なんてできなくても、ずっと仁のそばにいるから。だから不安になる必要ないよ」強い意志を持って発する蛭川。
 1話からずっと居場所を求めていた蛭川。それがアフターストーリーにおいては、「ずっとそばにいるから」と水無瀬の隣に自分の居場所を確信している。凄いな、蛭川。ようやく居場所を見つけたんだな。本島純政は涙を流すのが上手い。

 あと、おそらく水無瀬にとっての結婚って多分「蛭川母と蛭川のような暖かな家族になる」っていう側面と、「繋ぎ止めるための制度」って側面がある。そして、その繋ぎ止めるための側面を求めるが故に、結婚に執着しちゃうんだろうな。なんせ、蛭川は過去にふらっといなくなった男なので。蛭川のことを絶対に自分の元に留めたい、という気持ちがそうさせる。
 だから逆に、「法律が変わらなかったら」蛭川が他の人と結婚してしまうかも(また離れていってしまうかも)と、冒頭で不安になっていたわけだ。そんな水無瀬に「結婚なんてできなくても、ずっとそばにいる」と言えるのは、あまりにもカッコ良すぎる。それはそれとして、本当は結婚したいカップルに結婚を諦める発言をさせる日本の現状はどうかしようね。

 車内で目を覚ます水無瀬。苦しみの波、不安を取り除かれた水無瀬は、目を覚まして隣に蛭川がいなくても気を取り乱すことはない。視線の先に「水の音」の水際の少年のように、佇む蛭川の姿を見つける。
 ロケーションは互いの気持ちが一つになった、6話と同じく、空との境界が見えない海。大人になった魚たちは、再びひとつの海へ入る。
 6話とは違って帰りの手段は、自分たちで行先が決められる車。彼らにこの先困難が訪れようとも、2人でなら立ち向かえるだろう。そう思わされるような、希望のあるラストシーンが描かれていた。(ずっと幸せでいて!)

・蛇足の感想

 本当に感情の裏付けが上手いドラマだったな、と思うytv未成年。短尺なのにも関わらず、ちゃんと感情の根拠が描かれている。演出による遊び心もあり、何度見返しても新たな発見があるあたり、マニア心のくすぐり方を心得ているなと思う。すごいな。何回見ても気づきがあるよ。

 アフターストーリーにおける水無瀬は、周りの結婚ラッシュやら社内でのセクハラやらにより、特別不安定になっていた時期のシーンが切り取られていると思う。というのも、(私だけかもわからんが)マイノリティが365日マイノリティについて考えているかと言われると、そうじゃない。当たり前だけど、全然普通に仕事めんどくさいとか、旅行楽しみだなとか考えている。水無瀬も常に不安定なわけじゃないと思うんだよ。

 なので、マイノリティを理解することにおいて、「大変だったね🥺苦しいよね🥹」とかいう理解の仕方って多分、正解でもないと思う。(その反応を求めている人もいるかもしれない。マジで人によると思う)
 私は普通に接してくれ、と思う。そしてもうマイノリティ関係なく、セクハラをやめよう。とりあえずこれからなんじゃないかな。


(長くなりましたが今度こそお付き合いありがとうございました)

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