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ytv未成年感想⑨ 10話(最終回)考察・感想

※注意
ytv未成年1話〜10話&アフターストーリー時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読)

前回↓



<10話(最終話)あらすじ>

泥酔した様子の水無瀬(本島純政)から突然着信を受けた蛭川(上村謙信)が駆け付けると、そこには酔って寝てしまった水無瀬がいた。

蛭川が声をかけると、驚いた水無瀬の目から一筋の涙が頬を流れる。

水無瀬を抱えて公園に移動し、水を飲ませながら「酒飲んだら泣くタイプ?」と蛭川が聞くと「蛭川のせい」と言った水無瀬は、空っぽになった蛭川家で見つけた"手紙"の話を切り出し、お互い離れていた間のことを語りだす。そのまま水無瀬の家に帰った二人。

家で水無瀬が取り出したのは、あの日観られなかった蛭川の監督作『月を浮かべる』のパンフレット。

そこに掲載された蛭川のコメントを暗記するほど読み込んでいた水無瀬は、蛭川が新しい恋をしていると思い込んでいた。そんな水無瀬に蛭川は―――。

出典:ytv未成年公式HP


〜10話感想〜


・水無瀬を迎えにゆく蛭川

 9話ラストから繋がる10話。明かりのない暗闇の中に現れる蛭川。ytv未成年は青と黄色の光が意識して使われているなとよくわかる。……ここの本島純政の涙は邦画ドラマ界に名を残すほどの美しさじゃないか……??

 高校編とは異なり、大学編こと10話においては救世主の役割が反転。1話から8話までをなぞるように、蛭川が救世主になっている。つまり、「月に浮かべる」の"暗い夜の中に光を灯してくれる月"は、大学編においては蛭川。※月に浮かべるの話は前回参照

 ここで蛭川から水無瀬に水を飲ませるセルフオマージュ。アルコールって利尿作用があって脱水症状を起こしやすくさせる物。水がなけりゃ生きられない魚たちにとって、水がなくなるのって致命傷だ。9話ではアルコールによって巡り会えなかった魚が、水によって再びつながりを戻してゆく。
 蛭川の言葉により挟まれる1話回想シーン。ここでは蛭川が「下手すぎ」という直後、蛭川が笑うシーンが追加されており、Xで蛭川視点だからでは?と呟いている人がいた。(天才じゃん)

 余談だが、視点の話をすると、1話において水をかぶる蛭川の頬に、海面に反射する太陽光のような光がキラキラと当たる。同じシーンなのに、蛭川の回想である5話では、そのキラキラと光るシーンはほぼ使われていない。(おそらく編集尺の関係上、使わざるを得なかった数秒のみ)
 つまり、水無瀬視点だからこそ、蛭川のことが輝いて見えていたということ。無自覚ながらも一目惚れしていたのは、水無瀬の方も同じなのかもしれない。

 閑話休題。
 酒に酔った水無瀬ってこんなに可愛いいんだな。久しぶりに会ったのにミラーリングする2人。徐々に互いの境界が交わっているように見えてくる。

・過去回想

 高校卒業した蛭川。母親に大学に行きたいと本音を告げる。蛭川母が大学浪人+大学進学に対して、どこまで支援の手を入れてくれてるのか全く想像につかない。なんせ、おそらく専業主婦であり、蛭川に対して十分な資金援助が見込め無さそうな上、現夫と息子のこと会わせてなさそうな分、現夫から蛭川に対しての資金援助も見込めない(夫側が蛭川に資金援助をする筋合いはまあないが)その分、母親のあの「いいじゃん」が少し無責任に思えてしまう。
 けれども、他人に肯定されることにより自己肯定してる節のある蛭川にとってはかなり心強い後押しだったんだろうな。と思う。ytv未成年において、自立した後の大人は、自分の立ち振る舞いによっては、頼りになる存在にもなるのか思わされる一幕。

 おんぶされる水無瀬。水無瀬の服が白いのって、光の色を落とし込むためなんだろうな。ライティングによってオレンジ色に染まる服。貴方の色に染まるという、ウエディングドレスの役割と同じだな。

 水無瀬宅で過去の手紙を読む蛭川。わかるよ、私と10年後の自分へ書いた手紙読んでやられたことがある。SMAP解散の時期に書いた手紙だった。過去の手紙の青さにやられるのはみんな共通なんだな。

「俺じゃないのがムカつくけど」
 いや、お前だろ。水無瀬のことが大好きって、ばちばち顔に書いてある。蛭川が好きなのぜってーお前だろうよ……柴ごめん。水無瀬は寂しくないの? に対して顔をみろとか言ってたけど、水無瀬も大概だったよ。(※水無瀬がこうも拗らせているのは蛭川のせいです)ここの上村謙信の、「まだわからない?」とでも言いたげな、モゾモゾした表情の演技が好きだ。
 ノンタイムでキスしていい? と聞けるほど成長した蛭川。俺のこと好きなの? に対して、ちゃんと頷ける蛭川。ようやく気持ちが交わった2人の後に映る三日月。この闇夜との境界が溶けて交わるような月は、最終回において救世主が反転してる分、蛭川の「月に浮かべる」とも役割が逆転。闇夜の水無瀬と、月の蛭川が交わり合うメタファーだなと思う。青が水無瀬で、黄色が蛭川という色の役割も戻ってきてる。
 2人の心の近さとか交わりを海で表していたのを、ここで月で表すのはオシャレだなと感動した。

・ようやく結ばれた2人

 7話と違って身体の向きが向き合う2人。ようやく隔たりなく結ばれたことがわかる。一つに寄り添い合う姿は、二つに分たれていた果実が一つに戻るように見える。枕が一つなのも意識されてのことなのかな。
 色の役割が戻ったことを示すように、黄色いパーカーを身につける蛭川。演出的なことを外すとそのまま泊まったんだろうなぁ。ポップコーンのシーンはセリフ以外は全部アドリブらしい。息があってていい演技だ。

 お風呂で歯を磨きながらイチャイチャする蛭川と水無瀬。蛭川と水無瀬におけるアイスのことを、勝手にオレンジの片割れの比喩だと思ってるので(これは過去の感想②参照)風呂に入って歯を磨く蛭川と水無瀬は、アイスイメージしてるんだろうなと思っている。口に含んだ歯ブラシがアイスの棒であり、2人は一つのアイスに戻ったってことなんだろうなって。実際蛭川の真似をして、水ではなく泡を飛ばす水無瀬。

 でた、本島純政のスマホケース捌き!
 蛭川の撮った「未成年」上映会へ。過去のインスタライブの中で、柴田監督はこの映像の監督を本当に上村謙信にさせたと言っていた。憑依型俳優の上村謙信に、本気で蛭川を憑依させるためのフォローをしていたんだろうなと思う。監督すごいなと、改めて思わされた裏情報。(TVジョンcolors Vol.59 にも、監督との交流について書かれていた。こちらに書かれてある内容も、監督が俳優達を本気で育てていたことが伺える。すごいのでぜひ読んでほしい)

 監督との秘話以外にも、かなりのボリュームがあるのでぜひ(※ステマじゃないよ)

 「未成年」に拍手を受ける蛭川。監督を務めた上村謙信自身も嬉しかっただろうなと思う。

 20:52〜の公園の池に映る蛭川と水無瀬の姿。 住む海が同じになった魚のようだ。公園で結婚の約束をした2人は、新婚旅行の予定を話し合う。思い出の公園で、最後に蛭川がいなくなった方向から滑り台を潜り抜け、2人の船へ。
 この時点の「結婚しよう」に対して正直思うことがたくさんあったのだが、それはまあアフターストーリーの感想で述べることにして。

・さいごに

  以前にも書いたが、私は恋愛してないバイセクシュアルである。自分のセクシュアリティを自認した思春期、説明のつかない不安感にずっと悩んでいた時期があった。誰にも言えずに、結果の変わらないセクシュアリティ診断にかぶりついてみた時期もある。妹に女の子と付き合っているのではないかと探られて、彼女のことをただの友達だと誤魔化した夜だってあった。
 だからいまだに、ノンケだと自認していた人間が、同性に対して急に恋愛感情を抱いたのに、混乱もなく受け入れる描写を見ると、それは嘘だろう。と反発心を抱きたくなるひねた部分がある。
 恋愛は自由で、同性愛はおかしいことじゃない。そう頭では理解しているし、実際おかしいことじゃない。けれども、それが自分事になった時に、すぐに素直に受け止められるとは、私は思わない。度合いは人によるだろうが、間違いなく混乱する。感情が揺れる。そしてその感情の揺れは、時に恋心を阻んだりする。視聴者として、ここの感情の揺れの描き方が甘く感じる作品のことを、私は正直苦手にしていた。(※あくまで私の感想です)
 ytv未成年においては、ここの感情の揺れであったり運び方が、私にとっては全て納得のいくものだったなと思う。好きになるための根拠が。それを阻む根拠が、たくさん用意されてあるからこそ、蛭川は水無瀬を、水無瀬は蛭川のことを、全部飲み込んで好きだと言えたんだなと思った。
 こんなに好きになれる作品がまだまだあるだなんて、エンタメは本当に面白い。ytv未成年で懸命に役を演じてくれた皆様、本気で丁寧に作品を作り上げてくれた製作陣のみなさま、本当に本当にありがとうございました。間違いなく、2025年マイナンバーワンドラマです。(おそらくこれが覆ることはないでしょう)


 さて、①〜⑨までの拙い感想文にいいねをつけてくださったみなさまも、ありがとうございました。また会う日まで。

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