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ytv未成年感想⑧ 9話考察・感想
※注意
ytv未成年1話〜10話&アフターストーリー時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読)
前回↓
<9話あらすじ>
法央大学に進学し、映画研究会に入った蛭川(上村謙信)。映画会の仲間・栞(古田愛理)や剛(山﨑光)たちが上映会の準備を進める中、出来上がったチラシを受け取るが誰も呼んでいないと言い、水無瀬(本島純政)のことを思い浮かべながらもはぐらかすのだった。
一方、水無瀬(本島純政)は蛭川のSNSアカウントを探すが、見つからず消沈。「未成年」というタイトルの小説の続きを書き進める。
ある日水無瀬は、根本(宮地樹)が片思いしている法央大学の映画研究会の女子と会うために、柴(今井悠貴)と3人で上映会に参加することに。
しかし会場に着く前にお酒で酔ってしまった水無瀬は、たまたま通りかかった栞に介抱されてベンチで眠ってしまい、結局上映会には行けず―――。
〜9話感想〜
離れていても無自覚に行動が同期されている、蛭川と水無瀬の大学編。
酒は飲んでも飲まれるなって。
・読まれない手紙
法央大学に進学し、映画研究会に入った蛭川(上村謙信)。映画会の仲間・栞(古田愛理)や剛(山﨑光)たちが上映会の準備を進める中、出来上がったチラシを受け取るが誰も呼んでいないと言い、水無瀬(本島純政)のことを思い浮かべながらもはぐらかすのだった。
蛭川カラーのパーカーを着て登場する水無瀬。実家から出て、一人暮らしをしている様子。親の呪縛から解放されていて、とても良い。あと、自室のごちゃごちゃ感に実家との対比を感じる……確実に蛭川から"生活感(家庭的)"を与えられているね。
小説「未成年」の中に綴られる"僕のことなんか忘れて好きな人と幸せに暮らしているかもしれない"とかいう一文が辛い。けど、確かに進学とかの、人生における節目を含んだ4年間って体感としてひたすらに長いんだよな……社会人は忘れかけてる感覚。
水無瀬は蛭川が最後の公園で、おそらく自分のことを「友達」と呼んだ瞬間に「俺との関係も捨てた」んだと思ってる。でも、蛭川が残した「読まれない手紙」により、自分たちは両思いだったってことも知っちゃってるんだよな。
自分で勝手に区切りをつけて、気持ちを一旦DVDに置いてきた蛭川とは違う。両思いだった過去がある事を知っている分、気持ちに区切りがつけられるわけがない。諦められるわけがないんだよな。恋愛って概ね区切りをつける側の方が清々してて、つけられた側は追っちゃうものだよほんと。(※個体差あり)
……でも対して、蛭川も水無瀬カラーのジャケットを着ているのである。脈アリじゃん。
栞ちゃん蛭川のこと好きだったんですか……! 栞って間に挟まるものの意味だもんね、ヤダーー。
とか思ってみたものの、「恋愛したことあるのか?」って聞かれて「好きな人となら……あるよ」って"""過去の恋愛めちゃくちゃ大切にしています。"""というニュアンスが、バチバチに伝わってくる回答に、こっちも動揺。
え、水無瀬のことだよね?! と喜んだのも束の間、「(好きな人)いないけど……」に水を刺されてしまう。(余談だけど、最終話まで見ると、多分ここの「いないけど」のニュアンスは、再会できていないけどのニュアンス。ほんま蛭川さあ……)
本当に短い一幕ながらも、蛭川が友人関係が上手に育めている様子が窺える。まあよく考えると、"高校生になっても集まれる中学の友人"がいる男なんだもんな。高校時代が彼にとっての異常だったんだろう。「父親のDVを隠すために不良の立ち振る舞いする」とかいう行為さえしなければ、ひょっとしたら真島とも健全な友人関係を育めていた可能性だってある。
……でも、そうだとすると、水無瀬とはこういう関係にならなかったのかもしれないな。と思うと複雑。人間関係っていうのは難しい。
水無瀬の連絡先わからない蛭川。「そんなことあるの? 友達なのに」と言ってくる先輩に、目を彷徨わせながら口元をもごつかせる蛭川。それって、水無瀬を友達と定義付けしたくせに、いまだに友達として割り切れていない証拠で。こんな端々の演技に、水無瀬の存在にまだしこりを感じている姿が見える。やっぱまだ好きなんだよね……と視聴者側として安心。
初の監督作品に「月に浮かべる」を撮った蛭川。「読まれないとわかっていて書いた手紙」最新版を、今度は世に放つ男。
「水無瀬に読まれないでいい」って思って書いて置いてきた手紙とは異なり、自分は水無瀬の隣に立てるようなまとも人間になれたから。だから、高校時代にずっと抱いていた大切な気持ちを表現して、大切に残しておきたい。そう思えるようになったんだな。
「見つけてもらえるといいね」
と言う栞に、「うん」と嬉しそうに言う蛭川。「いつか見つけて読んでくれたらいいな」と海に放つボトルメールみたいだ。
届かないと思っている手紙として、「未成年」を書く水無瀬。そして、「月に浮かべる」を撮る蛭川。会わなくても同じこと考えている。
・月に浮かべる
タイトルが「月に浮かべる」なのは、蛭川が月に水無瀬を投影させているから。なんだろうと思う。
というのも、ytv未成年における夜は恐ろしいものだと、アフターストーリーの蛭川セリフから読み取れる。(夜は空と海の境界が一番近づく時だが、蛭川はその瞬間を怖いと思ったと明言している)
魚にとっての月は、暗く恐ろしい夜を、明るく照らし出してくれる存在だ。そして、遠い空の高くはるか向こうにある、焦がれようとも絶対に手に入らない存在。けれども、夜であれば、水月(海に浮かぶ月)として側に訪れてくれる。遠いのに近い、幻のような存在。
そして、蛭川にとっての水無瀬も、父親により暴行され、人から見放される辛くて苦しくて寂しい日々に、突如として現れた光。自分とはあまりに違う、雲の上の憧れの存在なのに、自分の隣に来てくれる。自分を救ってくれる。遠いはずなのに近い存在。
月に、そんな水無瀬のことを思い浮かべているから「月に浮かべる」なのかな、と思う。(特大の愛じゃん)
・再会
ある日水無瀬は、根本(宮地樹)が片思いしている法央大学の映画研究会の女子と会うために、柴(今井悠貴)と3人で上映会に参加することに。しかし会場に着く前にお酒で酔ってしまった水無瀬は、たまたま通りかかった栞に介抱されてベンチで眠ってしまい、結局上映会には行けず―――。
大事な用事がある前にお酒を飲むのはやめなさい。このドラマ、全体を通して本当に酒が全てを台無しにする……。
「高校時代とは違って、単なる青春の一ページとは違うわけですよ。大人の恋愛は」
と、めちゃくちゃ致命傷を水無瀬に喰らわせてくるジョージ。蛭川との過去を思い出して、あれも蛭川にとっては、単なる青春の一ページだったかのもしれないと静かに傷つく水無瀬。ジョージめ……。
(というか大事な用事の前に、チャミスルみたいな度数の高い酒をカパカパ飲むのはやめなさい……。)
酒に酔った上に、蛭川との過去を否定されたが故に、水を求める魚もとい水無瀬。酔いによりダウンし、蛭川とすれ違ってしまう。
後日、学生証をなくして再び蛭川の大学へ。落ちた学生証は、無事に回収されていたものの、部室で蛭川がそれに気づくことはない。ちょっとずつ噛み合わないのがもどかしい。というか水無瀬もジョージに協力して貰えば良いよ。
そんな中、蛭川と再会。蛭川はなぜか一度通り過ぎてしまう。何故! (原作を見ればわかるよと、優しいフォロワーが教えてくれた。絶対見るよ、ありがとう)
一方水無瀬は、根本が否定した蛭川との「青春の一ページ」が、めくるめくようにフラッシュバックする。
一番記憶に新しい蛭川との別れのシーンから、暖かかった愛おしい過去のシーン。それらを締めくくるのが「もう連絡しない」のシーン。極め付けに、今自分の隣を通り過ぎていった蛭川。この数秒間の中で、「蛭川の気持ちはもう自分にはない」のだと理解してしまう水無瀬。息を飲んだ本島純政の瞳にゆっくりと涙の膜が溜まってゆくのが綺麗。
諦めきれずに、一度だけ振り返る水無瀬。ピンと張り詰めていた、冷たい空気の中、ゆっくりと発せられる蛭川の「水無瀬、だよね……」に観てるこっちまでヒリヒリする。
連絡先の交換をねだられて目を右往左往させる水無瀬。そりゃそうだよな、蛭川は自分のことを思い出す瞬間なんてなかったのかも……と思った直後な分困惑もする。
タバコをやめた蛭川。「好きな人が吸ってなかったから」関係ないけど栞ちゃんピアスばちばちなの惚れる……ジョージ羨ましい。「蛭川と付き合っているか水無瀬に確認された」ことに、静かに動揺する蛭川。4年のブランクってでけえ。なんでそんなこと聞いたんだって思うよな。まだ好きだからだよ。それではお聞きください。
また君に恋してる。
酒を飲む水無瀬。全く飲んだことのないはずの当時19歳の本島純政、酔った人間の演技がうますぎる。
「水無瀬も寂しくないの?」
いや、柴見ろよ顔。顔がばちばちに寂しいって言ってるよ水無瀬。顔に書いてあるってこういうことなんだな、ってくらい寂しいって顔してるよ。
再会した蛭川の嬉しそうな表情を思い浮かべる。蛭川はもう俺のこと思ってないはずなのに、なんであんな顔をしたんだろう。何考えているかわからない。寂しい。まさにそんな顔。(本島純政演技がうまい)
一方、部室でまた水無瀬の似顔絵を描き始める蛭川。蛭川って水無瀬の顔見なくても似顔絵描けるんだな……って脳内の豊田が言っている。(これは消え恋)
蛭川も水無瀬も互いへの連絡先を見つめる。また共鳴してるのか。店員のグッドジョブにより、再び交わり合う2人の海。(バイト終わりなのに、カップルのトンチキ騒動に巻き込まれるあなたへチップを授けたい)
店に向かって走り出す蛭川。背景の暗い闇の中に、ラストシーンまで途切れることのない、光り輝く電車が走る。(3話と7話構図のセルフオマージュ。光の中幸せ満ち溢れる3話、闇の中悲しみに向かう7話と対比し、暗い闇の中に幸せを掴みにゆく9話という粋な演出)
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