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ドラマytv未成年は関係者による爆重熱量の上でできた神ドラマだった件

※このnoteには原作未成年を読んでの感想を綴っています。

 なろうのような記事タイトルで失礼します。
とうとう原作漫画を読んだので、読み終えた勢いでnoteを書きます。もちろんドラマも原作もネタバレしておりますのでご注意ください。

 まず言いたいのが、


・海と魚と空と月の比喩ドラマオリジナルなんかい

 これに尽きる。正直視聴している際に加害者・被害者・傍観者論については個人的にピンときていなかった。というのも、定義が狭すぎてそれ以外もあるだろうよという感想を抱いたから。実際、蛭川を助ける水無瀬は傍観者ではない。無理に定義つけるなら、被害者と庇護者あたりではと思う。(この考え方については、社会に出た経験がなく、視野が狭い高校生らしいけれども)

 と、まあ加害者・被害者・傍観者論にピンと来なかった分、ドラマを通して語られる海と魚時々空の比喩はうまいなあと思っていた。
 自分たちは魚であり、住む海が交わることはなかったはずだったこと。蛭川との境界が、境界が混ざり合った空と海のように混ざりあえばいいと思っていたこと。暗い高校時代を照らし出してくれた水無瀬を月に思い浮かべていたこと。本当にどれもこれも繊細で、美しくて素晴らしい比喩(隠喩)の表現だった
 が。……え、これがドラマオリジナルってことある?! ほんまか……!

 さらにいえば

・小説『未成年』がドラマオリジナル設定なんかい!?

 というところ。もう何が正解で何が虚構なんだよ……(決して、虚構などではない)『月に浮かべる』もドラマオリジナルかよ……脱帽もんだよ。


 ここまで茶化して書いたが。これはコミックという媒体の良さと、ドラマ・映画といった映像媒体の良さの違いだろう。

 コミックは小さなコマの中に絵と吹き出しを入れなければならず、画面の広がりに制約がある。その分、読者に伝える情報量をかなり絞らなければならず、比喩やら隠喩を盛り込むのが難しいという特徴がある。加えてマンガは長尺のモノローグに弱い。長尺モノローグは画面が動かなくなる分、極力入れない方がベターとまである(※全て持論)

 対して、ドラマというのは情報量が多い。画面の制限はありながらも、吹き出しを作る必要がなく、登場人物の背景にさりげなく情報を盛り込むことができる。その上で、音楽、演出、常に動く俳優の表情や声のトーン。一つ一つで作品に幅や深みを持たせることができる媒体だ。ものすごく比喩や隠喩を生かしやすい強味がある。長尺モノローグに関しても、音として映像に乗せることができる分、コミックよりは魅力を出しやすい。短尺モノローグになると、魅力がなくなるのが不思議なものだけど(※これまた全て持論)
 ……いいドラマはだいたい、走りながらなんか考えてるよな。長尺モノローグタイム。夢ならば覚めないで、つって。

 なお、今回ドラマ化にあたり、脚本家・監督・プロデューサー(をはじめとする制作サイド)でストーリーを練り上げてくれたようで。ものすごく丁寧に話合いが行われた上での映像化だったよう。

↓ここに書いてあるので絶対に読んでほしい


・ちょっとずつ印象の違う原作とドラマ

 比喩やらモノローグやらの違いだけではなく、ジンハと水無瀬、ヒチャンと蛭川にもちょっとずつ違いがあるなあと思った。

 まずドラマの水無瀬について。ジンハと比べると、他者への興味関心のなさがより色濃く出ている印象があった。というのも、多分これは根本との関わり方がそう見えさせてるんだろうと思う。(高校生時代期の根本と水無瀬は、柴が通訳にならないとほぼ一緒にいない)水無瀬の他者への興味のなさはもはや拒絶の域なのでは……
 あと、ジンハの方が水無瀬よりも可愛らしい。これは純粋に短尺のモノローグにより、その時々の内情が盛り込まれているからだろう。頬の赤さの表現により、ジンハが数倍増して可愛らしく見えるのも要因の一つ……頬染め描写って、コミックにおいて重要なんだな。
 本島純政はその日に撮るシーン分の原作を読み直し、気持ちを作った上で現場入りをした。と過去インタビューで語っていたが、脚本と原作で印象が違う分大変だったろうなあと思う。プロの仕事はすごいな……

 続いてヒチャンに関して。ヒチャンの思考回路は、基本蛭川と同じながらも(原作なので当たり前)割と飄々としていて、妙につかみどころがない印象のある男。DV親父に対して、憎い気持ちは持ちながらも「酒」や「暴力」という要素に対しての思い入れはないため、自身も全然未成年飲酒する。加えて、他人を殴るという行為自体に対してはあまり意味合いを持たせていない。(殴られることに対しては意味を持たせているが)
 一方で、蛭川はヒチャン以上に臆病で怖がりだ。その血筋により他者を傷つけることに対して、必要以上に怖がっている。この繊細さ、多分演者が上村謙信だから、という点もあるんだろうなあと思う。
 ytv未成年を観終えてから約ひと月。キラリ配信やブログなどを通して、謙信くんを少し追ってみた。その中で、彼自身かなり繊細な部分を持った人なんだなと感じている。そんな彼というフィルターを通しているから、蛭川がより繊細な男に見えるんだろう。ドラマの空気にかなりフィットしていて良かった。 

・一進一退するヒチャンとジンハと、ひとつに悩み解決し切らぬままふたつに悩む蛭川と水無瀬

 上記で書いたように、原作には小説『未成年』は存在していない。原作未成年は、高校編・大学編の順に時系列に、ジンハ(ドラマ版においては水無瀬)の視点で進んでゆく。ウェブトゥーンとして隔週連載されていただろう原作においては、おそらく読者の購読意欲を掻き立てる必要があり、事細かにときめきシーンを盛り込む必要があったんじゃないかと思う。美術室に呼び出し二人きりになるシーンや、修学旅行中部屋から抜け出し話をしたり。なかなかに魅力的なシーンの宝庫だった。
 ただ、その分急流のように二人の心境は不安定。互いに頬染めて「まじお前にゾッコンLOVE……」って顔してた翌日に「いやでも俺好きって言われてないわ……」って悩んで、そしてそれがちょっと解決したら、また同じようなことに悩んでたりする。まさに一進一退。
 本作は感情の揺れが激しい、思春期の高校生時期を描いている作品。原作のジンハとヒチャンの感情の揺れ方が一進一退で不安定なのは、逆にリアルだなあと思う。(でもそれはそれとして、「くそっ…じれってーな 俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!!」と思わないでもない)

 ドラマの方はご存知の通り。原作という一本の骨組みを少し切り離して付け加えて、丁寧に肉付けされた分、蛭川と水無瀬は一つに悩み、解決せぬ間に二つが襲いかかり。とまさに社会の理不尽さに、不幸に、押しつぶされそうになる。
 一本の作品として見るときに、一つに悩んで解決しきらぬまま二つが増えて……っていうドラマytv未成年の編成の仕方もまた好きだなと思った。

・あと、ドラマで付け足されたシーンもまた良い

 水をかぶる蛭川だとか、プールで逢瀬をする二人だとかいうシーン。これらは、原作になかったり、原作にあるシーンを改変し、それに色をつけてたりする。
 中でも、「試写会デート前、落ち着かなくてタバコを吸ってしまい、水無瀬の前ではいい匂いでいたいから香水で誤魔化すシーン」がドラマオリジナルの描写であるのにときめいた。ほんの数秒だけど良すぎる……(ワックスの改変だね)


・本気で作品作ってくれてありがとうytv未成年

 ここまでで何が言いたいって、ドラマytv未成年がしたことって本当に凄くないか!? って事で。未成年原作の良さを殺さず、要素はしっかり付け足して、既存のシーンには色をつけて映像化する。

 あまりにもプロの仕事すぎて……低予算だろうのに、深夜帯のドラマで本気の作品作りをしてくれたことがものすごく伝わってくる。なんてありがたい事なんだ。
 (演者も含む)製作陣みんなに共通して「作品を作ることに対しての誇りや執念・信念」がなかったらできないよこんな素晴らしい仕事。


 未成年という作品に出会えて本当に良かった。原作とドラマの違いを見比べるのも、また新たな気づきがあると個人的に思う。(シーンが前後している部分がある分、原作の心情の運び方とドラマの心情の運び方にはちょっと違いはあるがその違いも面白い)ドラマファンにはぜひ原作も読んでほしい、そう思う。

※LINEマンガやピッコマで無料配信もされているため、まだ全話購入に踏ん切りがつかず、迷っている人はそちらからも是非(notステマ)

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