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【ネタバレ有】綺麗事で描けない社会「ラストマイル」を振り返る

 先日、映画「ラストマイル」を観てきた。監督は塚原あゆ子さん、脚本は野木亜紀子さん。ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」に続くシェアード・ユニバース作品とのことで、本当は公開日に行きたかったのだけど、奇しくもコロナに感染してしまい、観るのが遅れてしまった。まあ、その話はまた別の機会で。

 前作2作品は全て観てきたので本当に楽しみにしていた。もちろん観ていなくても話は分かるのだが、過去作のキャストも出演しているので是非観てほしい。私の推しは中堂さんです(どうでもいい)

 とにかく、映画の題材、キャストの演技、ストーリーがとても良かったので、ここで振り返ってみることにした。めちゃくちゃネタバレあるので注意です。


⚠️以下ネタバレあり

1 登場人物

前作に登場するUDI、MIUメンバーの説明は省略しています。

舟渡エレナ
 通販サイト「DAILY FAST」西武蔵野LCセンター長。前任のセンター長が退職後、本社アメリカから日本支社へ異動した。筧からの犯行声明が事前に本部に届いていたことを受け、本部の誘導で社員名簿から山崎佑のデータを削除した。

梨本孔
 DAILY FAST西武蔵野LCに2年勤めているチームマネージャー。以前はホワイトハッカーとしてブラック企業で働いていた。

八木竜平
 運送会社である羊急便の関東局局長。過酷な労働環境の中に身を置かれていたが、エレナの叱咤によりストライキを決行する。

五十嵐道元
 DAILY FAST日本支社の総括本部長。かつて西武蔵野LCのセンター長を担当しており、山崎は当時の同僚だったため、目の前で山崎の自殺未遂を目の当たりにした過去を持つ。

佐野昭
 佐野運送を経営している羊急便の委託ドライバー。息子と共に配達を行う。高齢ながらも強い信念を持って仕事をこなす。

佐野亘
 昭の息子。かつて家電メーカーである日ノ本電機に務めていたが、倒産したため父の見習いを行う。

松本里帆
 二児のシングルマザー。
松本海空/七海
 里帆の娘。母の誕生日としてDAILY FASTを利用する。

山崎佑
 DAILY FAST西武蔵野LCのチームマネージャーだった人物。現在は事故により5年以上植物状態にある。

筧まりか
 DAILY FAST西武蔵野LCに派遣社員として勤務する女性。山崎の恋人で、山崎の自殺未遂をきっかけに今回の連続爆発テロを起こす。偽のCMを作ったのも彼女で、「DAILY FAUST」と誤字の状態でSNSに犯行声明を載せた。事件発生当初は行方をくらませていたが、実はまったく別の男性の戸籍を使い、男性の名でアパートに住んでいた。1ダース、つまり12個分の爆弾を仕掛けたが、そのうちの一つである起爆不良の商品を自ら起動させ自殺する。

MIUメンバー

UDIメンバー

2 ストーリー

 アメリカに本部を置くネット通販の大企業「DAILY FAST(デリファス)」。その日本支社に、新しくセンター長としてエレナが就任する。デリファスがブラックフライデー期間を控える目前、宅配物が開封時に爆発する事件が立て続けに発生する。被害やリスクを案じたエレナが部下の孔と共に対応に追われる中、警察は全商品の出荷停止を命じた。
 エレナらが事件の犯人や犯行の手口について調査を進めるなか、エレナはSNSで「DAILY FAUST」の名が使われた存在しないはずのブラックフライデーCMを発見し、その中に「1ダースの爆弾をプレゼントする」という投稿が含まれていたことから、事件との関連性を疑う。その一方で出荷停止による損害額などのリスクを危ぶみ、エレナが事件の隠蔽を通そうとしたため、孔はエレナに不信感を抱く。
 その頃、調査を進めていた警察は件の偽CMが山崎佑の名義で発注されていたことを突き止め、彼の捜査を始める。第4機動捜査隊(MIU)も出動し、伊吹藍と志摩一未は山崎の家を訪ねるが、彼の姿はそこにはなく、①部屋から女性の匂いを感じたこと、②マンションの防犯カメラに女性が映っていたこと、そして③聞き込みの情報から、彼と恋人関係にあった女性に疑いが向けられる。
 山崎は、病院で植物状態で見つかった。5年前、彼が勤務していたロジスティクスセンター(LC)でベルトコンベアへ飛び降り自殺をしようとした。彼は過労で錯乱し、自身がベルトコンベアへ飛び降りることで流通を止めようとしたが、その一件は山崎が退職し、退職手当と労災に加えて訴訟をしないという誓約で闇に葬られたうえにベルトコンベアがその後止まることはなく、彼の身投げは無念にも散った。警察は山崎の恋人は彼の仇を討つべく犯行に及んだと推測した。
 山崎の恋人の正体がわからない中、孔は過去の勤務データがないエレナが怪しいと詰問する。緊張感のある対話中、エレナが開けようとした荷物の箱に爆弾が仕掛けられていることに気づく。爆弾処理チームが到着するまでの間、エレナは山崎の恋人について過去にアメリカで僅かに面識があり、協力を求められたが断ったこと、その後重要な役職を引き受け、その重圧から不眠症になり、休職を経て今に至ることを語る。孔は山崎が過去に使っていたロッカーに意味深な文字が残されていて、それを消さないようにと社員間で申し送りされていたことを明かす。
 エレナらは犯人の手口が物流の裏技を使ったものだと推察。ブラックフライデー前に購入した商品に爆弾を仕掛けたものを出品し、再出品のシールを剥がすことで、他の出荷物に混ぜ込んでいたと突き止める。エレナは孔と共にブラックフライデーの数日前にデリファスで購入した形跡のある社員のデータベースを洗い出し、過去の爆発物と購入物が一致した筧まりかという女性の存在を発見する。一方で、警察は爆弾を作った男を突き止め逮捕に至る。爆発で死亡したとされる男性の解剖調査をしていた不自然死究明研究所(UDI)内でも、遺体の正体が女性であったことが判明し、筧まりかが男性の戸籍を使ってアパートに住んでいたことが発覚する。
 筧が購入した番号と一致する商品を処理していきながら、エレナは契約していた運送会社・羊急便のもとを訪れる。その頃羊急便では事件による混乱、配達員の人手不足などから危機に陥っていた。エレナは羊急便の関東局局長、八木竜平にストライキを後押しし、他社の後援も含めた運賃の値上げをデリファスに交渉。日本支社総括本部長の五十嵐が一連の責任をエレナに詰ると、エレナは責任を受け入れながらも、当時センター長だった彼が、目の前で飛び降りた山崎について会社の責任を逃れようとした罪を指摘する。
 こうしてストが成功し、無事物流再開の目処が立ったと思われたが、12個の爆弾のうち筧が使用したものが動作不良のものであったことが判明し、出荷済みの荷物の中にまだひとつ残っていることがわかる。荷物は既に松本里帆一家のもとへ届けられており危うく爆発するところを、配達員である佐野親子の機転で救われる。
 一連の事件は幕引きを見せる。責任を負ったエレナはデリファスを解雇され、次期センター長を孔に託す。エレナは松本家に代品を届け、事情聴取を控えるパトカーの中で眠りにつくのだった。

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