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個人的2023年春のおすすめアニメセレクト
早いもので GW も終わって春アニメも折り返しですが(注: 執筆当初時点では GW が終わっていなかった…)、みなさんアニメ、観てますか?
私は例に漏れず十数作品をリアタイしています。
さて、春アニメは序盤から他のアニメの全ての話題を「推しの子」がかっさらっていく、前代未聞の展開で始まりました。
続きものなら別ですが、基本初タイトルであれば、いくら前評判が高くても、実際に本格的に話題になるのは1話から数話後になることが多いです。
去年大ヒットしたリコリコもぼざろも、ガンダムブランドの後ろ盾があった水星の魔女でさえも、1話段階ではそこまで話題にはなっておらず、3話以降で徐々に話題がフィーバーし始めるような形でした。
ところが、推しの子は「1話にプロローグの劇的な展開をすべてまとめて、1時間半もある”映画”として放送する」という前代未聞の賭けに出ます。
当初私も「1時間半もやるとか嘘だろwww」と思っていましたが、いざ見てみるとそのクオリティと展開に圧倒されました。
元々前評判は高かった上にまるで映画(実際映画として上映した)をいきなり1話でやったわけですから、まさに話題騒然。要は前代未聞の賭けに勝ったわけです。
私も推しの子は面白く観ていますが、あまりにも大衆ウケしすぎていて「浅い」アニメキャプ4枚アカウントに大量に取り上げられたりだとかで、どうしても冷めてしまうというか、逆張りしたくなってしまうのも事実です。実際めっちゃ面白いので逆張りできないんですけど…。
春期(新作のみ)のアニメ公式フォロワー数ランキングは 1位=【推しの子】(477114) 2位=地獄楽(171259) です。#推しの子 #地獄楽 pic.twitter.com/uCWjuvcHoa
— アニメフォロワー@AnimeAPI (@anime_follower) May 8, 2023
…こうして推しの子が春アニメの話題を圧倒的に独占した影響で、ほかの春アニメは残念ながらかなり埋もれてしまっています。Twitter のフォロワー数も圧倒的すぎて他が霞んでしまっている…。
これまで数年アニメを見てきましたが、ここまで1つのアニメに話題も視聴者も吸い取られる状況になったのは初めてのような気がします。水星の魔女が話題をキープできている程度で、ほかのアニメはトレンド入りすらあまりできていない…(なお鬼滅はもはや別格)。
実際推しの子は面白いので仕方ない面はあるのですが、ほかのアニメもたくさん見ているオタクとしては、クオリティの高いアニメが観られずに埋もれていくのは中々つらいです。
そこで、この記事では視聴中の作品から個人的にピックアップした、私が自信を持っておすすめする隠れた良作をいくつか紹介します。
みなさんもぜひ、ほかの春アニメにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
だいぶ長い記事になってしまいましたが、極論ここで紹介した作品を観てもらえるなら、この記事をすべて読む必要はありません。実際に自分の目で観ることでしか得られないものがあると思うので。
”””質””” ANIMATION
君は放課後インソムニア
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丁寧に眩しいくらいの””青春””と純愛が描かれる、雰囲気良すぎアニメ。EMOTIONAL…。
5話まで視聴。同じ不眠症でなかなか眠れずに悩む”中見 丸太”とヒロインの”曲 伊咲”が、仮眠場所としてたまたま見つけた学校の天文台で出会って秘密を共有し、徐々に思いを募らせていく純愛ラブストーリーです。
もちろんコメディ要素も色々ありますが、作品のテイスト的にはラブコメというより、純粋な青春ラブストーリーといった方が適切な気がします。
制作は「よふかしのうた」と同じくライデンフィルムです。
雰囲気アニメのテイストとしては比較的近いですが、私は「君は放課後インソムニア」の方が好きかな…。
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この作品、純粋に良いだけでなく ””あの”” テレ東がテレ東系列全国同時放送、BSテレ東で30分後に遅れ放送(2周目が可能)と、珍しく放送枠的にも非常に気合いが入っているのですが、その割に Twitter フォロワー 1.5 万人と、全然話題になっていないのが本当に惜しい…。
ただ、話題になりづらいのも頷ける作品ではあります。
これはいわゆる「質アニメ」に共通する課題でもありますが、どうしても話題になりやすいのは(今期で言えば「推しの子」のような)エンタメ色が強い(≒ツッコミどころやギャグが多く、派手な)作品が多く、「君は放課後インソムニア」のように、静かでゆったりとした、雰囲気や空気感を大切にした作品はどうしても SNS などで盛り上がりづらいためです。
とりあえず、この PV を観てください。私はこの PV が刺さりまくって即視聴確定しました。
この PV に本作の””良さ””がすべて詰まっているといっても過言ではないのですが、田舎、夜、星空、同じ悩みを持つ二人だけの秘密の共有… もうこの時点でエモくならないはずがないんですね!!!!!(クソデカ大声)
特に私は幼少期に田舎に住んでいた過去があるので、人一倍田舎の景色に対する憧憬があります。都会と違って騒がしくなく、何もないからこその空気感や良さがあるというか。
後の話数になるほどゆっくりじわじわ火力増していくタイプのアニメなので序盤からいきなりエモ〜〜〜!!!!!というわけではないのですが、とりあえず5話まで、せめて3話までは観てほしい…!
5話以降、どんどん”””アオハル”””の火力が増していくので乞うご期待。
「5話って実質折り返しじゃん!」という方もいるかもしれませんが、「君は放課後インソムニア」は BD 情報から全13話あることが確定してます。13話あるアニメってお得感(?)あっていいよね。
ちなみにこの作品、なんと OP の主題歌の担当がまさかの aiko さんで、この時点でポニーキャニオンの本気が伝わってきます。
曲自体も作品全体の雰囲気を伝えられていて素晴らしいです。
一般的にアニソンは 1:30 に収める関係で盛り上がりなどの構成が似ることが多いのですが、「君は放課後インソムニア」は OP も ED も良い意味でアニソンらしくない曲で、新鮮に感じます。
一方の ED も作品のゆったりとした雰囲気にあった、深夜に聞くのにふさわしい曲に仕上がっています。楽曲面があまりにも一流すぎる。
私がこの作品をラブコメではなくあくまで「ラブストーリー」だと捉えているのは、ヒロインレースや三角関係に発展してドタバタしたりするような、そうした典型的なラブコメではないからです。
ギャグもありますが、作品の軸はあくまで中見と伊咲の二人の関係性で、二人の心情を丁寧に描きながら静かに話が進みます。
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3話から天文部の先輩 OG として白丸結(白丸先輩)が登場しますが、主人公ら二人を見守り支えるような一歩大人な存在として描かれていて(そしてかわいい!!)、ライバルヒロインとして対峙したりするわけではありません。
公式に開かれていた Twitter スペースでも、伊咲役の田村好さんが『白丸先輩が出た時にあーライバルヒロインになるのかな…って思ったんですが、そうではなくて、ちゃんと見守らせてくれる、支えてくれるこのホワホワ感がいいなぁと感じました』と仰っていて興味深かったです。
監督いわく、「白丸先輩あってのインソムニアだし、3話からが物語の本番」とのこと。
個人的にこの作品で興味深いなと感じているのは、とにかくリアル/現実志向なことです。
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原作からのポイントでもありますが、まず特徴的なのは、最近のアニメとしては珍しく鼻の存在を省略せずに描くキャラデザなこと。
男性キャラはともかく、一般的にヒロインは基本鼻は省略されることが多いのですが、あえて描いていそうに感じます(シーンにもよりますが)。
デフォルメ表現もあるにはあるのですが、等身自体も現実の人間に近づけてあったりと、基本リアル寄りのキャラデザになっています。
リアル寄りのキャラデザにも関わらず、しっかりかわいく描かれているのが本作の巧さでしょうか。公式の Twitter スペースでも監督が「特に可愛く描こうとはしていないのに、可愛くなってしまう。そんな魅力がある」と仰っていて、やはりシチュエーション含めての「かわいさ」やヒロイン力なんだよな…と再確認しました。
リアル寄りなのはキャラデザだけでなく、舞台設定や周辺の人物、その関係にも及びます。
たとえば舞台設定は実在する能登半島の七尾ですし、高校自体も実在する七尾高校がモデルです。こうした実在の土地が舞台なだけなら他のアニメでもままありますが、背景がかなり写実的だったり、あとは普段何気なく見ているような景色が鮮やかに描かれていたり、あとは演出の質感もあって、実在感あるアニメーションに仕上がっています。
そして、周辺のモブ生徒間との会話がまたリアル。
女子は/男子はこういう会話するよね〜というたわいもない雑談の絶妙なリアリティ・空気感もそうですが、特徴的なのは「配慮がなかったり、シビアな描写も続けている」こと。
もちろんずっと胸糞悪いシーンが続くわけではありませんが、あえて必ずしもエンタメに寄せず、真摯に描いているのは特筆に値します。
中見と伊咲は同じ不眠症で、寝ようとしてもなかなか寝付けない様子やそのつらさが丁寧に描き出されています。私もそうですが、生活リズムが狂っていたり本当に不眠症を抱えている人にとっては、とても共感できることでしょう。
さて、アニメで学校が描かれることは日常茶飯事なわけですが、そうした作中で描かれる「学校」は、多くの場合ほとんどがファンタジーです。学校そのもののオブジェクトや「授業」というイベントがリアルだとしても、実際の生徒間のやり取りや行動は大きくデフォルメされていたりします。
今回の場合、一般的な日常アニメであれば「やさしいせかい」なので、そうした不眠症に対して、理解のあるクラスメイトだけで構成されていたりするはずです。
あるいは、エンタメ作品であれば、悪いことしてきたキャラは話数の最後の方で謝罪したり、痛い目にあったりして成敗されてスッキリ、という風に片付けることが多いでしょう。
しかし、残念ながら現実は残酷です。そうした優しい聖人だけで構成されているわけもなく、不眠症のような「弱者」に手を差し伸べずに『運動すればすぐ寝れるだろ!』『眠れないのは気合いが足りないからだ!』と根性論を展開する先生がいたり、悪気なく常に眠そうなことについて茶化したり陰口を叩いたり、ヘラヘラ陽キャが構ってきたりするわけです。
もちろん「弱者」に理解のある良い人(作中で言えば白丸先輩、顧問の倉敷先生など)が周囲にいる場合もありますが、全員がそうであることは稀でしょう。
もっとも、実際には悪気があっての言動ではなく、ただ無理解/無関心ゆえに起きているケースが大半でしょう。無知は罪とは言いますが…。
集団行動のしんどさがあったりなど、現実の「学校」はアニメで描かれるようなファンタジーはほど遠く、楽しい場所であるとは限りません。
私は学校システムからドロップアウトした側の人間なので、そうしたしんどい気持ちはとてもよく分かります。
「君は放課後インソムニア」では、そうした周囲の必ずしも「やさしくない」現実的な質感、ディティール、雰囲気を丁寧に再現して描かれています。当然そうしたシーンでは視聴者もストレスを感じますが、それは作中の中見も伊咲も同じはず。
もちろんやさしい人もいるが、一方ですべてがそうではない、そんな現実的な世界で、不眠症という社会的な「弱者/マイノリティ」である二人が、同じ共通点から意気投合し、想いを募らせていき、恋心に発展していく。
二人だけがお互いを相互に理解し、無理解によるストレスからお互いに想いを募らせていき、とびきりの”青春”を過ごす。
シビアな現実世界で悩みや不安を抱えるという、誰しも共感できるシチュエーションだからこそ、フィクションである純愛ラブストーリーが映える。
そんな魅力を持った作品だと感じます。
惜しむらくは、作画体制が割とギリギリなようなこと。
今のところ崩れたりというわけではなく頑張ろうとしているのは伝わってきますし、平均的なアニメと比べれば全然良いのですが、今期は特に動きがうま過ぎる SAKUGA アニメが多いこともあり、どうしても見劣りする感じは否めません。
「本当はフルスロットルで作画リソースを投入したいがそこまでのリソースはないので、中見と伊咲が二人で過ごすシーンは演出も作画も気合い入れる」と、見せ場に作画リソースを集中させているような印象です。限られたリソースを鑑みると賢明な判断だと感じます。
確かに派手さや盛り上がりはあまりありませんし、このまま話題にならないままなのかもしれません。
ですが、エンタメ性だけがアニメのすべてではありません。ぜひその目で「エモさ」「雰囲気」を感じ取って欲しい作品です。
江戸前エルフ
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ゆったりのんびりしたやさしい日常アニメ。最高の癒し…………
8話まで視聴。
東京・月島を舞台に繰り広げられる、やさしくて笑えて、でも少しじーんと来る、そんな最高の日常アニメーションです。
この作品、「タイトルに ”エルフ” ってあるしどうせ異世界ものなんでしょ〜」とスルーしていた方もいるんじゃないでしょうか(現に私はスルーしかけました)。あまりに勿体なさ過ぎます。
ちなみに異世界要素は一切ありません。単にエルフが出てくるだけです。
さてこの作品、まず設定が巧くて、そのアイデアに驚嘆させられました。
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主人公の”小糸”は高校1年生です。小糸の家は月島の地に昔からある「高耳神社」の巫女を先祖代々務めていて、小糸も小さい頃に亡くなった母親から巫女を引き継いで務めています。
…ふつう神社の御神体はだいたい鏡かなんかですが(適当知識)、この「高耳神社」、御神体がエルフ(名前:エルダ)なんです。
最初「…は?」ってなるこの設定。しかし、考えてみればストンと腑に落ちる話でもあります。
エルフはその長い耳が特徴的な一方で忘れ去られがちですが(私は忘れていた)、非常に長命で、数百年から数千年生きるとされています。たかだか100年弱で死んでしまう人間よりも、圧倒的に長生きなわけです。
このエルダさんは、いわく「江戸時代に異世界から徳川家康くんに召喚された」とのこと(どういうこと…)。つまり、江戸時代から現代に至るまでの江戸(東京)の移り変わりを、すべて目のあたりにしているわけです。
当然、過去に巫女をつとめていた小糸の祖先の最期も見届けていますし、周囲の人間が歳を取って死んでいく中で、ひとりだけ永遠を生きていることになります。
こうしたバックグラウンドを鑑みれば、月島の人たちが、エルダを「神様」として祀っているのも強く頷けます。
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エルダをはじめ、本作に登場する「エルフ」は、「神様」として祀られているにもかかわらず、たまに聖霊をスマホ代わりに呼び出せたりするくらいで、特殊な能力を一切持ちません。
世界を変える能力も武力も、死者を生き返らせたり知り合いの老いを止めたりすることもできず、人間と比べてただ長生きなだけ。
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本作は基本楽しくかわいいコメディですが、時折そうしたエルダの悲哀と、エルフとずっと一緒に生きることはできない運命を背負った小糸の、お互いの向き合い方についても描かれます。
そして、この描写がとても丁寧で、エモーショナルなのです。
制作は「魔女の旅々」「プラオレ!」などを手がけた C2C 。
個人的には今まで中堅どころという印象が強かったのですが、雰囲気の作り方、魅せ方がとても上手く、1話を観た後は「ここまで高品質 𝑨𝑵𝑰𝑴𝑨𝑻𝑰𝑶𝑵 作れたんだ…」と、そのクオリティに感動したのを覚えています。
ひとえに「日常系」作品と括ってもさまざまな作品がありますが、「江戸前エルフ」は雰囲気もそうですし、コメディのテンポ、シリアスになりすぎないバランス感覚などなど、どれをとっても頭ひとつ抜けている印象です。
だって毎話めっちゃ面白いもん。
一般に日常系は「『日常』ゆえに大きな変化がなく飽きやすい」と言われることもありますが、本作はペース配分のバランス感覚も優れていて、笑ったり萌〜〜〜〜!!!!になっていたらあっという間に終わってしまいます。
笑って癒される最高のひととき。
そして、ED がまためちゃくちゃいいんですね…。
江戸前エルフは、今のところ ED の後に本編をやることがなく、必ず ED に入って締める構成になっています。つまり、本編が ED に入ったら作品の世界との別れの合図なわけです。
確か CloverWorks の梅原Pが「OP と ED は作品の世界に入る導線であり、出口だと思っているので、意識的に毎回やるようにしている」みたいなことをどこかで言っていた記憶がありますが(うろ覚え)、それをまさに体現していると感じます。
本編が終わった後、ED アニメーションを経て作品の世界から出ることで、私たち視聴者はどことなく寂しい感覚にさせられます。
ポップなもののどことなく哀愁ある ED のメロディラインや、抒情的な歌詞が胸に一抹の寂しさを抱かせます。
さらに本作はリアルタイムだと金曜 2:25 〜 2:55 という平日アニメ最後の非常に遅い時間帯に放送されているのですが、この ED を聞いた後に、どこか寂しいながらも温かい気持ちになりながら寝るのが最高です。
もっとも、放送枠の時間が遅すぎることで観れていない方もいるでしょうし、もっと早い枠で放送されていればより多くの人に観てもらえたのかな…と思わずにはいられませんが…(前枠のマジデスとスワップしてくれ…)。
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江戸前エルフ(@edomae_elf )
— 向純平 (@mukai_jumpei) May 7, 2023
エルダの部屋(実写)ビフォーアフター。なりのまま使える部屋がなく、一部柱や壁から美術で組んでます。3枚目は参考にしたアニメ用の美術ボード。#江戸前エルフ pic.twitter.com/xTeFSFmPmG
この ED 、曲も最高なのですが、ED アニメーションも最高にエモーショナルでめっちゃ良いんです…。
通常アニメの ED はアニメとして表現されることが多いですが、なんと本作の ED はエルダの部屋を再現した実写のセットにアニメを合成して作られていて、とても不思議な、そして実在感ある映像に仕上がっています。
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本作は背景がとてもリアルだったり、また「月島」という実在の場所や、実際に存在するお店、実在する土産物などが意識的に名前そのままで登場したりと、現実とリンクさせるような演出が随所に取り込まれています。それに加えて、この実写とアニメを組み合わせた ED アニメーションです。
小糸やエルダたちキャラクターの「実在感」、あたかも月島にいるんじゃないかと思わせてくれるような、そんな感覚をテーマに作られている作品なんだな…と感じさせてくれます。
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…さて、ここまで 𝑬𝑴𝑶𝑻𝑰𝑶𝑵𝑨𝑳 方面に振って紹介してきましたが、間で挟んできたキャプチャでお分かりの通り、「”””””萌”””””」方面でも大変素晴らしいアニメです。…萌すぎます…!!!!!!!!!!!!!!!
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まず公式サイトのキャラクターページで「切り替え」ボタンを押すとデフォルメ版のキャラクターデザインに切り替わる時点で、”””””””””””理解”””””””””””ってるな……と圧倒的に確信しました。
デフォルメは実写で表現できない、アニメならではの最高の醍醐味ですからね(持論)。デフォルメに真剣なアニメは名作。
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あと小糸の妹、小柚子ちゃんが登場する時にかならず💦がピクピクしてるのもめっちゃくちゃ良い。ブラボーーーーーーーーーーーーーー=!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
日常系作品が好きな方は”””絶対に”””今すぐ”””観るべきですし、日常系作品をふだんあまり観ない方にも十二分におすすめできる作品です。
江戸前エルフを観てください…!!!!!!!🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏
スキップとローファー
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8話まで視聴。
とにかくみつみちゃんの屈託のないピュアさと天然さに癒され、そして見守りたくなる癒しアニメ。性格も育った環境もタイプもまるで違う人々を繋ぎ、(本人は無意識に)人生を良い方向に変えていくやさしい世界が魅力。
公式サイトいわく、「共感度MAXのスクールライフ・コメディ!」な本作。安直に「学園ラブコメなんでしょ?」と括っていた方もいるかもしれませんが、違います。厳密にはラブコメ要素もなくはないものの、そこが主題の作品ではありません。
過去の作品で例えるなら、個人的にはなんとなく「明日ちゃんのセーラー服」と近いテイストを感じています。
もちろん共学の高校だったり違う要素もあるのですが、「天然で明るい主人公が、学生ならではの悩みや葛藤を抱えるクラスメイトたちを変えていく」という構成では近いものを感じます。
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…作品の良さを表現できる語彙がうまく出てこなかったのですが、公式サイトのイントロダクションが端的に本作の魅力を示していたので、ここに引用しておきます(公式なんだから当然ではある)。
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本作の特徴的な魅力のひとつは、キャラクター造形がとてもリアルなこと。
みつみちゃんは主人公ですが、いわゆる「美少女」って感じのキャラクターデザインではありません。
アニメでは登場するキャラクター全員が(モブキャラも含めて)美少女/美男子であることも珍しくありませんが、本作に登場するキャラクターには明確に顔面格差が存在しています。
少し残酷にも見えますが、残酷なことに現実世界でも顔面格差は確かに存在しています。そして、キャラクター(特に真ん中のミカさん)はその顔面格差についてコンプレックスを抱えていたりもするわけです。ここに共感する人も少なくないでしょう。
一方、明らかに端正な顔立ちの結月さん(右から2番目)は、周囲からは完璧超人の美人として見られがちなものの、本人はそれはそれで悩みを抱えていたりします。
キャラクター造形のリアルさは、何もキャラクターデザインだけではありません。内面の造形もとてもリアルで、多かれ少なかれ誰しもがどこかに共感できるのではないでしょうか。
たとえばみつみちゃんと一緒に行動することが多くなる志摩くん(左から2番目)は、あまり親に恵まれない環境で育ったことで、表面上明るく取り繕っているものの、その裏では黒い感情も抱えています。
誰しも完璧で表面的に見えるキャラだけやっているわけではなく、裏では別の感情を持ち合わせたり、悩んだりしています。
生活すべてで「良い人」「聖人」ぶれる訳もなく、裏では嫉妬したり黒い感情を持ってしまうのも、人である以上当然とも言えるでしょう。
クラスメイトの誰もが表と裏、学生ならではの葛藤を抱える中で、眩しいくらいに純粋で、天然でどこかズレているみつみちゃんの振る舞いが、周囲のクラスメイトの心を揺り動かしていく。
天然だから失敗することもあるけれど、それでもめげずにスクールライフを続けていくみつみ。その姿に私たち視聴者も感化され、心の中で応援せずにはいられません。
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さわやかで、毎回観終えた後にあったかい気持ちになれる本作。
クラスメイトキャラクター造形は現実にいそうなくらいリアルなものの、全体としてはギスギスすることなくやさしい世界で収まっていて、安心して観られるのも魅力のひとつです。
もちろん現実世界では人間関係のトラブルで揉めるなんてのはよくあること。しかもクラスメイトはリアルなキャラ造形な上にそれぞれタイプが違うわけで、現実であれば揉めないはずがありません。実際に、作中にも揉めかけるような描写もあります。
でもそこは、みつみちゃんの言動が(無自覚に)周囲をふんわり感化させることで、結果的にみんなハッピーな形に収まっていく。
みつみは、人が大人になって成長していくにつれて自然と失っていく、人を素直に信じる透き通った純粋さを持っています。
このみつみの存在こそがフィクション的であり、作品世界を現実ではありえない、やさしいせかいに彩ることができている要因でしょう。
この点では前述した「君は放課後インソムニア」と対称的なアプローチだとも感じていて、興味深いところです。
フィクション的な要素と現実世界に近いリアルな要素の塩梅が秀逸で、リアルさに共感しつつ、エンタメとしてもしっかり楽しめる作品に仕上がっています。
総じてド健全なアニメでハードな展開も一切ないので、まさに万人に強くおすすめできる作品です。特に生きるのに疲れた人に向いています。こういうのでいいんだよな…。
描かれるのはたわいもない日常ですが、そのたわいもない日常が愛おしく、美しい。そういう意味では、十分日常系といえる作品だとも思います。
さて、本作を制作しているのはかの P.A.WORKS 。
オリジナルアニメを制作することが多いスタジオですが、直近では「パリピ孔明」の原作付きアニメ化も手がけています。
…とはいえ、直近だと「アキバ冥土戦争」「Buddy Daddies」と銃ブッ放したり人がバンバン死ぬような治安の悪いアニメを連続でやっていただけに、やさしい世界のスクールコメディというそのギャップに最初は驚きました。まあ単純に別々の制作ラインで同時並行で作っていただけだとは思いますが…。
画作り自体も、P.A.WORKS 作品は比較的ビビッドな色づかいのアニメが多かっただけに、「スキップとローファー」のペールトーン的な淡い色づかいはかなり意外でした。
元々画面クオリティに定評のある PA が良い原作のアニメを作るとこんなに素晴らしいクオリティになるんだ…と、感動せずにはいられません。
近年の PA 作品はそこそこ観てきたつもりですが、私は「スキップとローファー」が一番好きかも。
そうそう、言及し忘れていたのですが、「スキップとローファー」は OP が本当に魅力的。
アニメの OP でメインキャラクターがダンスする作品自体は多数ありますが、この2人がカメラ目線ではなく、本当にありのままの姿で心から楽しそうに踊っているのが良いんですよね。かの須田景凪(バルーン)さんの楽曲もさわやかな雰囲気にマッチしていて素晴らしい。
このあたりはゆうさんの記事がよくまとまっていたので、興味があればぜひ。
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もともと例に漏れず前評判全く注目されていなかったのですが、いつの間にか口コミか何かで評判が広まったようで、Twitter フォロワー数も 6.1 万 と今季のアニメの中ではかなり上位まで登り詰めてきています。
素晴らしいアニメが観てさえもらえず埋もれてしまうのは本当にもったいないので、徐々に評価されつつあるようで嬉しい限りです。
今現役で高校生をやっていて悩んでいる人。大人になって人生にひたすら疲れている人。さわやかな”””アオハル”””に触れたい人。
いろいろな人に深くマッチする作品だと思うので、本当におすすめです。
人を選ぶが一見に値するアニメ
天国大魔境
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確かに人は選ぶが、死と隣り合わせのハラハラの中に楽しさと面白さが同居していて、めちゃくちゃ面白い。総じて映画クオリティの映像で、圧倒的。
9話まで視聴。
未曾有の大災害で日本中が廃墟になった、ポストアポカリプス的な未来の荒廃した日本を舞台に、”キルコ”と”マル”の二人が「天国」と呼ばれる謎の場所を探して旅をする—— という、ロードムービー的な要素を併せ持つ SF アドベンチャー作品。
めちゃくちゃ高クオリティで面白いアニメなのですが、なんと夏時間連打を独占したことで悪名高いあのネズミーディズニープラスが配信を完全に独占しているため、視聴方法が録画 or ディズニーにお布施するしかありません。黒ネズミ許さねぇ……
特に今から観始める場合、事前に録画していないなら、基本ディズニープラスに入る以外に観る手段がないのがあまりに痛すぎる。
作品は覇権取っても良いレベルで高クオリティで素晴らしいだけに、独占配信のせいで全然話題になってないのが本当にもったいない……
さて、私は基本アニメに癒しを求めていることもあって、シリアスが入ったりバトルが多めだったりする冒険活劇(?)系の作品は見ないことの方が多いです。
ただ、本作は信頼できるフォロワーや 5ch のアニメ監督本人が質問に答えるスレで「作画陣が豪華でめちゃくちゃ期待できるよ」と書かれていたのをたまたま見つけることができました。
ここで「ものは試し」と1話を見てみたところ、その独特の世界観と圧倒的な映像美にすっかり引き込まれてしまいました。いや〜やっぱり百聞は一見にしかずって本当なんだな、と改めて痛感。
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まずとにかく映像美が全編通じて””””圧倒的””””と言わざるを得ないほど本当に美しく、それだけで観る価値があります。
作画も画面演出も今期トップクラスの素晴らしいクオリティで文句のつけようがないのですが(もはや映画)、書き出すとキリがなさそうなので割愛・・・。映像面のクオリティは一切心配不要です。
ストーリー面でも伏線が散りばめられた世界観の謎と、それを解き明かそうとするキャラクターの丁寧な心情表現で魅せていくタイプの作品で、「萌えアニメはいいっす…」という非オタクの人にもおすすめできる作品です。
私はオタクなので非オタクの人が実際にどう感じるかはわかりませんが、サブカル要素(萌え、お約束展開、オタク要素など)に寄せてないこともあり、受け入れられそうな気はしています(そういうサブカル要素が入ったアニメがダメという訳ではまったくなくて、趣味趣向と傾向の話)。
アドベンチャー系の作品とひとえに括っても「ジャンプっぽい分かりやすくて少年漫画的で王道展開(例:鬼滅)」や、異世界もののようにサブカル方面に振ったものなど、様々なタイプがあります。
その点で天国大魔境は、ストーリー上もキャラクターデザイン的にもサブカル方面の類型にあまり寄せず、少年漫画的なコテコテな展開でもなく、その独特な世界観で視聴者を惹き込む、総じて独特な作品だと感じます。
それでいて、物語の流れにキャラクターが動かされるのではなく、キャラクターが主体的に動いて発見して、物語を構成していくタイプの作品です。
映像面や演出面での圧倒的なクオリティに裏打ちされた、生き生きとした丁寧なキャラクター表現も魅力のひとつ。
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「ロードムービー的な作品」と前述しましたが、実はこの作品にはもう一つ、シェルターで守られた謎の施設で安全に育てられた子どもたちが描かれる「天国パート」があり、”キルコ”と”マル”のふたりで「天国」に向けて旅をする「大魔境パート」と不定期で何度も入れ替わりながら進行していく構成になっています。
この「天国パート」、最初はまったくつながりが見えてきませんが、観続けていくうちに徐々に「大魔境パート」とのつながりが示唆されるなど、興味深い描写になっています。
もっと魅力について触れようとすると大体ネタバレになってしまうのであまりいえないのですが、この「天国パート」の存在も、本作を際出たせている重要な要素です。
本当は全然万人におすすめできる作品なのですが(現に普段この手のアニメを見ない私もとても面白く観れている)、あえて「人を選ぶ」枠に入れたのには理由があります。
一つは「過激な」描写が含まれること。
アニメ化にあたりかなり抑えてはいるようですが、たとえば序盤では名前のないゲストキャラとはいえ”マミる”シーンがありますし、回想や幻覚とはいえ主人公たちの手足が怪物に食われる描写など、土曜22時台に放送している割には残虐なシーンがちらほらあります。その点では人を選ぶでしょう。
とはいえ、全体で見た割合としてはわずかですし、グロがメインの作品でもありません。
文明が崩壊し荒廃した、「ヒトクイ」と呼ばれる人食い怪物がウロウロしている世界である以上、必然的に主人公たちは死と隣合わせの中で生きています。私はそうしたシビアな世界を精緻に描く上で、必要な表現に抑えられていると感じました。
確かにエグい描写ではあるものの、少なくとも鬼滅のグロが OK なら全然いけると思います(鬼滅見れてないけど、グロシーンは鬼滅より全然少ないと思う)。
どちらかというと、その独特でシビアな世界観に対する相性の方が人を選ぶかもしれません。あくまで SF ジャンルなこともあり、リアリティラインもかなり現実に近いラインに敷かれています。
描かれるモブキャラクターの造形もリアルな質感で描かれているのですが、シビアな世界観だけに普通のアニメよりも生々しさを感じがちです。特に「天国パート」では、気味の悪い舞台設定が徐々に明かされていきます。そうしたリアルさが魅力でもあるのですが。
もう一つの理由は、意外とエロ描写があること。
と言っても、サブカルに寄せたアニメでありがちなラッキースケベとかお色気シーンとかそういうのでは全くなく、純粋に人間の欲望、渇望としての性欲を真剣に描いています。ここも詳細はネタバレになるので控えますが、そうした性描写が本編にも密接に関連していたりします。
天国大魔境は実際かなりエロいのだが、露骨にセクシャルというより本来そんなエロくなかったはずのものがシチュエーションとか性欲が含まれた挙動を経て見方が変わってきて匂いたつようなエロスが立ちのぼってくる感じがいいと思ってる(2話のラストみたいに)
— 人間が大好き (@hito_horobe) April 8, 2023
ある意味、よくあるお色気シーンやコメディとしての露骨なエロ描写の方がライトに消費できて良いのかもしれません。
直接的な表現ではなく、荒廃した世界に生きる人間の欲望としての性欲を真摯に描き、そのシチュエーションがエロスに繋がる形で表現されています。持ち前の圧倒的な映像美もあってかなり良いシーンになっていますが、人によっては生々しいと感じる人もいるでしょう。
ざっくり言えば硬派な大人向けの作品、という印象ですが、薄暗いシリアス一辺倒ではなく、ロードムービー的なシーンでは(危険と隣り合わせではありつつも)冒険する楽しさが視聴者にも十分に伝わってきますし、和ませるギャグシーンも多くあります。
このあたりの描き方の絶妙なバランス舵取りも最高に上手く、文句のつけようがありません。
まずはとにかく1話を観てほしい…!!
1話で惹き込まれたら、2話目以降も観てみて損はありません。
ちなみに今のところ一番好きな話数は8話です。圧倒的な画面レイアウトもストーリーテリングも圧巻の一言。
ただ、(私はテレビリアタイと録画でなんとかしているものの)今から見るならディズニープラスへの課金が必須で、そこが本当に玉に瑕…。
個人的にディズニープラス(の STAR とかいうディズニー微塵も関係ない作品の詰め合わせみたいな謎のブランド仕草)が大嫌いなので、課金しろとも言いづらい。
ワンチャンどこかで一挙放送やるか、夏時間連打みたく1年ちょいで独占配信から釈放されるのを待つかしてみてもいいのかもしれません。本当はちゃんとリアルタイムで追って観てほしいところですが…。
アイドルマスター シンデレラガールズ U149
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”ロリコンアニメ”、あるいは”続き物アニメ”と雑に捉えてスルーするの、もったいないです。
作画も演出も超ハイクオリティなリッチアニメーション…。
6話まで視聴。
…まあ ”ロリコン(御用達)アニメ” という括りだとそれはそう…と言わざるを得ないのですが、少なくとも続き物の作品ではないので、「アイマス微塵も知らない」という人でも安心して楽しめます。
その特性上一応「人を選ぶ」枠に入れはしましたが、内容的には全然健全で、多くの人が楽しめる作品に仕上がっていると感じます。
アイマスを「あーインターネットでよく見るアイドル育成ソシャゲなんだな〜」くらいのふわふわとした認識しかなかった私でも十分楽しめていますし、むしろ「原作」を知らない初見視聴者の方が、より純粋な気持ちで楽しめる作品のような気さえしています。
一応「アイドルアニメ」ではありますが、物語面では「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」と似たテイストと言えばわかりやすいでしょうか。もっとも当然違う部分も多くあるのですが、
一話ずつ多くいるキャラクターの中からひとりにスポットを当てて、丁寧に深掘っていく一話完結スタイル(お当番回とも)
プロデューサー(≒虹ヶ咲で言えば高咲侑)が毎話数でスポットが当たったキャラクターに対して適切にアシストしていく流れ
あたりは比較的近しい部分を感じます。
さて、この作品の魅力はなんといっても、アニメーションが素晴らしすぎるという点に尽きます。
もちろんそれ以外にも素晴らしい点は沢山あるのですが、全編通してキャラが活き活きと動いていて本当に視覚的に気持ちよいアニメに仕上がっていますし、「神作画」目的だけでも、十分見る価値があると断言できるクオリティです。
こうしたアニメーションの良さを言語化するのは中々難しいので、気になる方はぜひ実物を見ていただければと。
アニメーション制作は CygamesPictures ですが、監督はあの無職転生1期の監督を務めた実力派の岡本学さん。ちなみに無職転生2期の監督はほかの方に交代するそうで、無職転生の続きよりロリコンアニメを選んだんだな…という風にはなった…。
参加されているアニメーターの方も、いわく「動かし屋」「Web 系」と呼ばれる、完全デジタル作画で自主制作からアニメ業界に入ったような、”動かす”ことが得意な若手実力派アニメーターさんが勢揃い。
個人的には ヤマノススメ/DIY → おにまい と近い系譜だと感じています(昨今一部で「今をときめくアニメ演出家」として注目されている、伊礼えりさんが参加されている点でも共通している)。
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演出面でも、毎話とてもリッチでキレッキレな画面でキャラクターの心情を丁寧に描くことに成功していて、すべてにおいてレベルが高すぎると言わざるを得ません。
また、本作は背景のリアルさや撮影効果からも窺える通り、現実と地続きなリアルな世界が舞台なのですが、そうした中で、子どもが持つあどけない可愛さを自然に表現することにも成功しています。「萌」はアニメにとって重要ですからね。
さて、演出面のアプローチとして(是非はともかく)興味深く感じているのは、プロデューサーが不器用で、良くも悪くもあまり大人っぽくない、子どもと大人の中間的なキャラクターとして描かれていることです。
そうした描き方は、成人男性としては少し幼い顔立ちで、低身長なキャラクターデザインからも窺えます。
プロデューサーは U149 のメンバーから見れば十分大人ですが、新入社員なのにいきなりプロデューサーに抜擢された立場である以上、周囲の会社の人間は全員年上のおじさんで、弱い立場にあります(アニメでは、そうした年上のおじさんをやけにリアルで生々しく、汚い姿で描いている)。
プロデューサーは大人に対しては強く要望を通すことも、その権限もない。一方で子どもには頼りなく映り、本来あるべき「頼れる大人」だとは思われていない。要は子どもと大人(おじさん)との間で板挟みになっているわけです。
一般に U149 のような幼いキャラクターがメインの作品では、基本「大人側が子どもを(健全に)保護して、その活動を見守る」という描かれ方になることが多いです。これは大人に求められている社会的役割そのままであり、理想の世界とも言えます。
しかし、現実は理想通りの世界ではありません。子どもは親の一方的なエゴを押し付けられがちだし、それ以外にもステレオタイプな子どもとしての役目を演じさせられたり、大人の悪意に晒されることもあります。
U149 はその点で現実的な描き方をしていて、たとえば U149 のメンバーの中には自分から望んだわけではないのに親のエゴから U149 に強制的に入れさせられたキャラがいたり、あるいは本人の素の性格とは異なるにも関わらず、テレビディレクター側が撮りたい「ステレオタイプなお嬢様像」を演じさせられたりといった、”汚い大人”の存在が描かれています。
一方のプロデューサーは「汚い大人」に染まっていない善良な存在として描かれてはいますが、汚い大人との板挟みゆえに強いアクションは出せず、また不器用なこともあって、子どもたちをしっかり保護できているとは言えません。特にありすなどの大人びた性格のキャラからはたびたび「ちゃんとしてください」とツッコまれる始末。
そうした世界でも、U149 のキャラクターたちは子どもと侮るなかれというほどには強く、大人の十分な保護が得られない中でもたくましく(時にはプロデューサーのアシストを借りつつも)自己成長・自己実現していく様子が描かれています。
自分はU149を大人の都合によってアイドルになる・嫌な仕事をこなすというどうしようもない苦難に立たされた女の子たちが、苦難を受け入れてその中で自己の成長や実現の道を模索するという非常に現代的な作品だと思ってるので…てらまっとさんの「子供に社会変革を担わせるな」批判とは相容れないな
— 藤吉なかの (@na_fujiyoshi) May 15, 2023
別に彼女らは変革を担ってはいないでしょ、彼女らが頑張ったところで大人たちの無自覚な邪悪さってのは無くならんわけだし
— 藤吉なかの (@na_fujiyoshi) May 15, 2023
もはや「嫌な時代を俺が変革してやる!」という発想がオタクに受け入れ難い非現実的な熱血思想になってるのを『リコリコ』のオチからも感じるので、U149もその文脈で見るべき
アイマスのアニメである以上もはやアイドルであることは逃れられない現実としてあって、「逃れることのできない(割と胸糞悪い)現実」を変えることなくその中で自己実現や成長を見出していく事しかできない…ってのは現代オタクに刺さる要素だと思う
— 藤吉なかの (@na_fujiyoshi) May 15, 2023
U149 のこうした描き方には賛否多くの感想がありますが、私はこの方の批評を支持したいです。
つらく厳しい現代を生きる私たちと同様に「理想とは真逆の、逃れることのできない、変えることのできない現実」が土台にあって、その苦難(本作で言えばアイドルであること)を受け入れつつ、制約の中でも自分らしく成長や自己実現を模索し、最終的に自分が納得できる形で生きていく。
そんな幼くとも健気な彼女たちの姿に、自らの希望や生きる活力を見い出してほしい。純粋にエンタメとしても楽しめる本作ですが、裏にそうしたメッセージも込められている作品だと感じました。
神無き世界のカミサマ活動
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今となってはもはや空気。扱いもだいぶ酷くて笑う。神とは……
固定観念にとらわれない新しい表現を圧倒的なテンションとギャグの元に繰り出す、完全自由形アニメーション。ヤバすぎるし面白い。
6話まで視聴。
タイトルが微妙に長くて覚えづらいこのアニメ(語呂的になぜか「かみさまみならいヒミツのここたま」とごっちゃになる…)。
『はいはいただのしょうもない異世界無双俺TUEEEEEEEEE系でしょ〜』と言ってスルーしている人が大半だと思いますが、全く違います。
…そもそも”””””異世界転生アニメではありません”””””。
もともと原作が比較的マイナーなこともあり、元から注目度もさほど高くありませんでした。しかも一見異世界ものに見えることもあってか、見てる人は毎クール20本以上追ってるようなコアなオタクくらい。
それでもその面白さからすでに「第二の冰剣枠」と言われているほど、(私を含め)コアなオタク層に大ウケしている、そんな作品です。
このアニメは一貫して「宗教アニメ」です。
まず宗教というセンシティブな題材を取り上げるアニメ自体が珍しいのですが、『元の世界から召喚されてきた「ミタマ」を神として新興宗教を立ち上げ信者を拡大し続けることで、自分たちのささやかな暮らしを守る』という物語構造になっているのも、唯一無二と言っていいでしょう。
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…ここまで言うと真面目アニメなのかと思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
まず上のキャプチャをご覧ください。これはアニメです。
もう一度言います。”””これはアニメです。”””
カミカツみたいなマイナー原作で、ここまでの位置に行ったら僥倖だよ。 pic.twitter.com/aNFGmFazos
— 朱白あおい@ミームミーム九州佐賀局 (@akashiro_aoi) May 13, 2023
「農業機械のシーンで実写を使いたい」という提案が僕のところに来た時、やっぱり監督さん狂気の人だわと思ったけど、#カミカツ #サガテレビ
— 朱白あおい@ミームミーム九州佐賀局 (@akashiro_aoi) April 28, 2023
これをアニメと言い張る勇気。実際実写を申し訳程度に加工してアニメの顔を載せただけというだいぶヤバい映像なのですが、これを ED 曲とともに開始早々に持ってこられたらただ爆笑するしかありません。
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カミカツ6話よく見ると止め絵のPANで全然動いてないけど止め絵を勢いよく連発して強引に押し込んでるし、同じシーンの反復もセリフごと反復する天丼ギャグにしちゃってる OP/EDを変な場所で流すのも毎話変わるドット絵EDを節約しつつ意外性ある演出にしてる 制約下でのアイデアが凄すぎるアニメだ
— 人間が大好き (@hito_horobe) May 10, 2023
これ以外にも明らかに浮きまくってる 3DCG だとかドット絵だとか、予算とリソースがない中で、いかに型にとらわれず、純粋に視聴者を笑わせる映像を作るかに本当に隅々まで趣向が凝らされている作品です。
もはや芸術の域と言っても過言ではありませんし、根本から型破りな表現技法の面でも、アニメ史に強く刻み込まれる作品になるでしょう。
監督の”””””センス”””””が隅から隅まで光っていて、『アニメってこんな表現もできるんだ/していいんだ』と言う新しい発見すらあります。
総じて下品でドB級ですが、エロを挟みつつ超ハイテンションなギャグを猛スピードで毎話趣向を凝らしながら繰り出していくという狂気の作品です。
…と思えば、実は縦軸(ストーリー)面でもめちゃくちゃ面白いんですね…!!
ここに触れるとネタバレになってしまうので避けますが、中盤で実はまんまとミスリードに乗っかってしまっていたことに気づくはず。その後のあっと驚かされる展開は…ぜひ本編で。
実際、ストーリー面では少しシリアスな側面もある本作ですが、そこでシリアスになった気持ちを決して引き摺らせずに、ギャグで吹っ飛ばしていくのがこの作品のテクニカルで凄いところ。うまい具合に縦軸要素が挟まれて縦軸要素だけで面白く感じつつ、全体としてもただゲラゲラ笑ってるだけという、技巧のアニメーションです。
これは原作の面白さでもあるんでしょうけど、(その圧倒的なトンチキさの割に)話の構成とプロットはしっかり作り込まれていたりします。
そのプロットの堅実な面白さにアニメでトンチキ要素がドカ盛りされ、トンチキギャグを欠かすことなく自然に面白展開を広げていく点でも、製作陣のテクニックが光るアニメです。
…この面白さを伝えるには一度見てもらった方が早いので、1話だけでもぜひ…! 1話で少しでも面白いと感じられたなら合っていると思います。
「流石に出オチだろ…」と思う人もいるかもですが、2話以降もこのノリがさらにパワーアップしていくのでそこはご安心を。
ちなみに1話単体で見ても、作品の世界観や主人公のバックグラウンドをそれとなく伝え、方向性を明示していると言う点でシンプルにとても良くできています。
いやーとんでもなくぶっ飛んだ7話でしたね。大人たちが全力でふざけるのがカミカツなんです。これ映して大丈夫なの?と思いながら脚本書きました笑 #カミカツ https://t.co/KvyZiQFNqP
— 江嵜大兄 (@ezaki0403) May 17, 2023
型破りでB級的な面白さをすべて綿密な計算の上で繰り出している稲葉監督(カミカツが初監督らしい)、既に今後の作品が楽しみです。
おわりに
元々 GW 明けに書き始めたのですが、アニメの感想やレビューは普段あまり使わない方向の頭を動かすのか、かなり疲れます。
しかも普段過ごしていても感想文が出てくるときと全然出てこないときがあって、結局やろうやろうと思いつつ後回しにしてたらもう5月も終盤に…🥺
作品によって視聴済み話数がズレているのは、こうした事情でセクションごとの執筆時期に差があることによるものです。
ほかにも特筆に値する作品はいろいろあるのですが、あまり多くなってもあれなので、2つのカテゴリに分けた上で厳選して紹介しました。
少しでも作品の魅力が伝わっているようなら幸いです。
この記事で紹介した作品はどれも本当に面白いので(あまり注目されていないのが本当にもったいない…)、ぜひ目を向けていただければ。