ふたつの目線で写すわたしのブエノスアイレス
アルゼンチン人が写真を褒めるときに使うスペイン語に、「Tenes buen ojo」というのがある。直訳すると「あなたはいい眼を持っている」。「センスがいいね。」くらいの感じだけれども、作品よりも本体を褒められている感じがして、これを言われるのは好きだ。そして「あなたの写真で、自分達の街はこんなに素敵だったのか?と思うのよ。」と言われるのはもっと好き。
美しく魅力的なブエノスアイレスの街も、長く住む地元っ子にはそうは映らないみたいだ。自分の撮った写真が褒められるのは嬉しいのだけれども、少し照れ臭いので「旅行者の眼だからよ」と返事をしてみる。
南米のパリと呼ばれるブエノスアイレスの街は、石造りの建築物と、石畳の道、運河に高層ビル群と、昔と今が入り混ざった構成だ。またバリオと呼ばれる区ごとに違った雰囲気があって、街歩きには多彩な楽しみがある。わたしが特に好きなのは、そこに緑がたっぷり組み合わされている点。樹木と芝生が茂る大きな公園はいくつもあるし、街路樹もたっぷりある。
確かにこの街の人々が言うように、道にゴミが散らかっていることはあるし、路上生活者も沢山いるし、アート作品に紛れて落書きもあるにはある。でも、それよりも美しい場面に目を向けていたい。写真を通じて地上の美しさを伝えるのが、わたしのミッションのひとつと信じているから。
というのは、以前に体験したヒプノセラピーでそんなメッセージを受け取ったことに由来する。それは自分が地球に来る前の過去生を見に行ったときのこと。
宇宙空間から、地球を眺めた瞬間にはボロボロ涙が溢れ出た。あまりの美しさと愛しさに感動していた。あのセッションは、それを感じるだけで充分だった。この時に、自分が風景写真を撮るのが好きな理由が府に落ちたのだ。この感動を、地球が美しいということを誰かに伝えたいんだ、わたし。
だから、わたしが撮るブエノスアイレスは、美しい、その愛すべき一瞬に焦点を当てた、旅行者と宇宙人のふたつの目線で切り取った1枚なのだと思う。