実家じまいを終えて
父が2021年に、母が2022年に亡くなった。特に母は、父の葬儀後すぐ自身が肺がんステージ4だと言い渡されるという、悲劇的な末路を辿った。
仕事をしながら父の病院通いを一手に引き受け、身も心も酷使した挙句に重病を宣告されたのだから、その無念さは筆舌尽くし難い。
遠方に住む私は、ただでさえその距離に自分の無力さを感じていたが、ましてコロナ禍の折である。実家はさらに遠くなってしまった。
もう母の命がいよいよ危うくなってから、母の病院にへ駆けつけ、そのまま二週間付き添ったのち、臨終までを看取った。
さて、ここまでは2022年の話である。明けて本年2023年は、その母が暮らしたマンションを片付ける年となった。いわゆる「実家じまい」である。本人が死した事を境に、モノは急にその存在が希薄なものになる。希薄になって、それはゴミとして扱われる。
実家のモノのひとつずつにエピソードが染み込んでいるので、捨てるという行為は相当辛い作業だった。思い入れの強いモノは私の家に送ったが、それでも大半は捨てねばならなかった。
2023年も年の瀬となった。そして、ようやく実家じまいはほぼ完了した。きついスケジュールの中だったけれど、弟夫婦に沢山手伝ってもらいながら、何とか完了しつつある事は、本当に嬉しい事である。そして、実家じまいが終わるという事はつまり、これで私は実家を完全に失ったという事なのである。
2024年がもうすぐまで来ている。どんな年になるのか、不安と期待がないまぜではあるが、とにかく新年には期待したい。そんな前のめりの新年にまずやる事といえば、大量の段ボール箱を片付けつつ、実家の思い出にひたる事なのだけれど。