6週目。本に呼ばれる
「あなたが素材を選ぶのではなく、素材があなたを選ぶ」
6週目のテーマは買い物。2週連続で調理自体ではなく、その周辺がテーマ。
買い物にいってもまだ食材の価格に慣れていなくて、これは相場と比べて安い/高い、ものがいい/傷んでいるがすぐにはわからない人間としてはゆくゆくはそういうのもわかるようになりたいな、と思う。
今回の章で一番興味が惹かれたのが、冒頭の言葉。
「再度述べますが、自炊では、素材ありきの料理から始めるのが得策と私は考えます。よい買い物先が見つかれば、なおさらそうなります(後略)」
Instagramで流れてくる見栄えのよい料理にも惹かれるけど、自炊者初心者としては、まずはこの心持ちの方が自分には合っている気がする。
もちろん現状では「素材が私を選ぶ」感覚はあまりわからないが、この言葉を読んだときにしっくりきたことがある。自分にとって本にはこの感覚が既にある、と。
「あなたが本を選ぶのではなく、本があなたを選ぶ。」これにはしっくりくる。
まさに今文章を書いている理由である、「自炊者になるための26週」とはそういう出会い方をした。
三軒茶屋にあるtwililight(トワイライライト)さんという本屋に行ったときである。
失礼ながら訪れる前から知っていたわけではなく、たまたま同じビルにあるカフェに行く際に、ビルの下に古本が棚に飾られていたのが目に入った。本屋自体が好きなので、その時点でワクワクしていたのだが、お店に入るとセレクトされた本が並んでいて平積みになっている本の中にこの一冊があり、手にとってパラパラと眺めるた時に、凄くこの本に呼ばれた気がした。
本に呼ばれたと思ったときは、大抵迷わず購入している。もちろん買った後に合わないなと思うこともあるが、こうして買った本は自分にとって重要な一冊になっていることが多い。思い出せば大学院に行くきっかけになった本も、同じように呼ばれた感覚を持った本だ。「自炊者になるための26週」も、今まで何回も思って自炊をしていなかった自分を、少しずつ自炊の世界にいざなってくれている。バイアスがあるのは承知だが、本に選んでもらった気がする。
理屈づけをすれば、今回で言えばそもそもぼんやりと自炊をしたいとは思っていたこと、帯に自分が好きな國分功一郎さんの推薦文があったこと、お店の雰囲気が素敵でここで平積みにされている本は合うんじゃないかと思ったこと。色んな掛け合わせで、呼ばれた、選んでもらったと思ったんだろう。
結果としてたまたま訪れた本屋の出会いから、自炊もして、文章も書きたいなと思って書いている。とてもありがたい。
「素材があなたを選ぶ」ももしかしたら同じような感覚なのかもしれない。そうだとしたら、この先その感覚に出会えるチャンスがまだあるということが、まだみたことのない世界を旅できる機会が残っているような、開けた感覚を味合わせてくれる。
「本に呼ばれる」も最初からあったのではなく、小さい頃から本と本屋が好きだったので、数えきれないくらいの本屋に行って、本を読んで、面白いなと思ったり、合わないなと思ったり。
その繰り返しで、いつの間にか気がついたものである。勿論その感覚のために繰り返したわけではなく、ただ本が好きだっただけ。必要なのは、その繰り返し。
本に書いてある通り、今週は気になっていた八百屋と、魚屋に足を運んでみた。
確かに店頭でおすすめされていた素材は、シンプルな味付けでも美味しい。いきなりお店の方に声をかけて相談するのはハードルが高かったのでまた今度にして、めげずに繰り返し足を運ぼうと思う。
「素材に選ばれる」いつかその感覚にも出会えるといいな。