読書感想文 田辺聖子 ジョゼと虎と魚たち
私にとっての標準語がいかに大切なことか。
若かりし頃、田辺聖子氏の源氏物語を読んで文章が分かりやすく感じたのを覚えている。あれから何十年振りかの田辺作品。帯には「いくつになってもこんな恋がしてみたい」的な文言が印刷されている。確かに大人の恋の話。結末がまたはっきりとハッピーエンドでもなく、ホワッと流されてどことなく儚いニュアンスが漂っている。尻切れトンボとかいう発想はこの場合多分ナンセンスで、皆まで言わない美学なんだろうと思う。文系の発想なのだろうか、文学の形を一つ見た気がする。
さて内容はと言えば、あまり入ってこなかった。どこか他人事のような気しかしなかった。何故か。それは、文章が関西弁だから。慣れない言葉で表現された文章に共感することはとても難しい。かといって、作者も慣れた言葉でないと繊細な機微を表現することは難しいのであろう。私にとっての標準語がいかに慣れ親しんだ大切なものなのか、言語とは何か、少し考えさせられた。
今度田辺作品を読むなら、標準語の本を選ぼうと思う。