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マインドフルネスとシロシビンの相乗効果

近年、マインドフルネス瞑想と向精神薬であるシロシビンは、それぞれ精神疾患の治療法として注目を集めています。両者は意識状態の変容や自己意識の変化など、類似した効果をもたらすことが知られていますが、これらを組み合わせた際の相乗効果についてはまだ十分な理解が得られていません。

本研究では、36名の経験豊富な瞑想実践者を対象に、5日間の瞑想リトリート中にシロシビン(315μg/kg)またはプラセボを投与する二重盲検試験を実施しました。リトリート前後でfMRI撮影を行い、集中型瞑想(FA)、開放型瞑想(OM)、安静状態(RS)における脳活動を測定。トポロジカルデータ解析(TDA)という新しい手法を用いて、脳活動の全体的な組織化パターンを分析しました。

主な発見

研究の結果、シロシビン投与群において特徴的な脳活動パターンの変化が観察されました。特に注目すべき点として、開放型瞑想と安静状態の間の脳活動パターンの差異が顕著に増大することが確認されました。この変化は、参加者が報告したポジティブな離人感と強い相関関係にあり、さらには洞察力の向上とも関連していました。

また、全参加者においてリトリート後に開放型瞑想の特性が強化され、脳ネットワークの中心性と範囲が拡大していることが確認されました。これは瞑想による意識状態の変化がシロシビンによって増強される可能性を示唆しています。特筆すべきは、集中型瞑想と開放型瞑想の脳活動パターン間の距離が縮まったことで、これは瞑想実践の深化を示す指標となる可能性があります。

考察と今後の展望

研究結果は、シロシビンと瞑想の組み合わせが、単なる加算的効果を超えた相乗効果を持つ可能性を示唆しています。特に、シロシビンによって誘発されるポジティブな知覚の変化と、瞑想練習による高められたメタ意識が組み合わさることで、より深い洞察が得られる可能性が示されました。

トポロジカル解析により、これまで捉えることが難しかった脳活動の全体的なパターンの変化を可視化することができ、瞑想とシロシビンの相互作用についての新たな視点を提供しています。

この研究結果は、うつ病や不安障害などの精神疾患に対する新しい治療アプローチの可能性を示唆しています。シロシビン支援下での瞑想プログラムは、従来の治療法を補完する選択肢となる可能性があります。

より大規模な臨床試験や、瞑想未経験者を含む研究の実施が望まれます。また、異なる種類の瞑想やシロシビンの投与量による効果の違いについても、さらなる研究が必要とされます。

Singer, B., Meling, D., Hirsch-Hofmann, M., Michels, L., Kometer, M., Smigielski, L., Dornbierer, D., Seifritz, E., Vollenweider, F.X., & Scheidegger, M. (2024). Psilocybin enhances insightfulness in meditation: a perspective on the global topology of brain imaging during meditation. Scientific Reports, 14, 7211. https://doi.org/10.1038/s41598-024-55726-x

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