国語の資料集でおなじみ、襲(かさね)色目 のおしゃれがしたい!
国語の資料集が好きすぎて、もらったその日に家に持って帰りそのまま失くした経験があります。
どのページも眺めていて楽しかったけど、一番のお気に入りは平安貴族の装束のページでした。
中でも、異なる着物を組み合わせて、季節独特の色合いを表現する「襲(かさね)色目」が好きで、組み合わせと名前の並んだ表を飽きもせずに眺めていたものです。
こういう表、どの国語の資料集にも載っていましたよね。
繊細かつ、高い教養の要求される平安貴族の色彩感覚。かつては花言葉大好き、色見本大好き、高校生の当時はマジョマジョのシングルアイシャドー、今はリップモンスターの色の名前にときめくようなわたしですから、当然この「襲色目」にはオタク心を大変くすぐられ、資料集を失くしてからもずっと記憶に残り続けていたのでした。
時は流れ、先日わたしはNANOuniverseの店頭であるものを見つけます。
絶妙な光沢感をたたえた、シャカッとした素材の、フレアスカート……。
「シャンブレータフタギャザースカート」との出会いでした。
「襲色目」の話にどう繋がるのか? なんとこちらの縦糸と横糸を変えて織り合わせている「シャンブレー」生地というのは、平安時代の装束の布を織るときにも用いられた技法なんですね。
(ちなみにこの手の偏光生地についてはシャンブレーの他にも呼び方はあるっぽいですが、今回は商品名に合わせて「シャンブレー」で通します)
そう、襲色目にも種類があるのです。
一つ目は、着物の上に着物を重ねる手法
二つ目は、布の表地と裏地で色を重ねる手法
そして三つ目は、縦糸と横糸で生地自体に色を重ねる手法 です。
ちなみにわたしがこれを最初に知ったのは、国語の資料集からではなく、橋本治『桃尻語訳 枕草子』(全3巻)を読んでからでした。
現代っ子(といっても言い回しは平成以前の前の印象ですが)の口語で訳されてて、しかも注は清少納言本人(になりきった橋本治)が直々に解説してくれるというすごい本です。
上中下の3冊を一気に読み切るのは流石に難易度高いのですが、わたしはリビングテーブルの隣に置いて、暇な時にちょこちょことめくっています。かっこつけて書斎で読んでますとか言えないのが残念なのですが、これはこれで、適当なページを開いたら今の気分にぴったりくる話に出会えたりして、楽しい読書です。
さて、シャンブレースカートの話ですが、わたしが持っているのはブラウンとカーキという色です。便宜上そう呼んでいるのでしょうが、ここは襲色目だと何色になるか検討したいところ。
まずカーキの方です。
写真だと見えづらいのですが、やや青みかがったくすんだカーキと、明るい黄色の光沢感が織り混ざっています。素敵…!
これは「枯色」の襲色目なんていいんじゃないでしょうか。青の混ざった緑と、黄色の組み合わせと、冬らしい名前がぴったりです。
続いてはブラウンのスカート。
写真からもお分かりの通り、けっこう赤っぽいブラウンに、すこーし青みのある紺色っぽい陰がさす、なんとも奥ゆかしい色合いです。
実はこの色に関しては迷わずこれがいいと思った襲色目があるのです。
それが、「葡萄染」!
赤と青の掛け合わせで生まれる、清少納言たちのような、宮仕えをする女房のまとう定番の色なのです。情熱の赤と冷静の青…… 王朝文学にふさわしい組み合わせじゃありませんか!
もっとも、昔の「赤」って紫がかった色味だったらしいので、実際の葡萄染はもっと紫っぽいのかもしれず、このスカートを清少納言が見たら「ぜんっぜん違うんですけどォ?」って言うのかもしれません。
そもそも「あか」と言う語がが指す色の範囲・概念すらも、今の感覚よりもずっと幅広かったようですし。過去のことははっきりとはわからないので、わたしがこの色と思ったらこの色ということにしておきます。なんせ清少納言(CV.橋本治)も上述の書籍の注でこんなこと言ってますから。
今年の秋冬は、平安時代の色彩の力を借りて、うつくしいものを数えながら過ごしたいです。
こういう、オタクっぽいけど自分の趣味、いや「癖(へき)」をまとうおしゃれを、もっともっと楽しみたいな。