8.〝石丸ヨイショ映画〟の後味の悪さ
市長になりたくて市長になっただけの市長でした
「#つぶやき市長と議会のオキテ 劇場版」が広島でロードショー公開された6月7日、八丁座でこれを鑑賞した。
この映画が先行試写されはじめた段階で、まだ観てもいないにも関わらず「ユーチューブ切り抜き動画に毛が生えた程度の作品だろう」と予測し、ネットでもそう酷評してきたのだったが、まさにその予見どおりの作品だった。
本編に観るべきものはほとんどなく、虚言と愚行で議会をかき回した石丸伸二という手のつけられないパワハラ市長のやりたい放題を検証もせずに垂れ流し、そこに田舎のひとのいいおじさん議員を執拗に追いかけては拾って歩いた失言を適当にインサートしただけのロードムービーならぬローワー・ムービー、皮肉を込めていえば冒頭で石丸市長を紹介したスーパーと最後にアリバイづくりに映されたテロップ、そしてエンドロールにクレジットされた某法律事務所の名前だけが興味深かったという映画だった。
まず、その冒頭のスーパーでは、石丸前市長をつぎのように紹介していた。
「職業・安芸高田市長」
これには、個人的に失笑を禁じえなかった。
というのも、市政の私物化が露骨だった石丸前市長が安芸高田市の公式チャンネルを私的に使ってやっていたYouTubeのライブ番組で、「ぼくは職業で市長をやってますから」と、シラーっと公言したのを記憶していたからで、それをこんなかたちで映画が追認していたのがおかしかったからだ。
石丸前市長と同様に、一期目にして地金が剥がれて再選が望めず二期目を断念した内藤前徳島市長との同番組での対談の中でのことだった。エンディング近くになって石丸市政を回顧して施策がほぼ通らなかったことを内藤から問われたとき、石丸が「その責任は反対した議員たちを選んだ市民にある」と、持ち前の他責主義を展開した文脈のなかでこのセリフを吐いたのだが、崇高な理念も具体的なビジョンも持ち合わせず、政治的な思想・信条を体現するためでもなく、ただただ「市長になりたくて市長になっただけの市長だった」ことを、いみじくも本人が任期終了間際に語っていたのが印象に残ったのだった。
あまりにも傲慢卑劣、なにより提訴された請負代金未払い裁判、恫喝発言でっちあげ裁判のふたつの案件で敗訴している規格外に非常識な人物が市民の信託をえられるはずもなく、安芸高田市長の二期目を断念して、つぎの〝転職先〟にと狙った都知事選への出馬表明のなかで「私の人生くらいなら賭けてやる」だの「東京から日本を変えてみたい」だの「これが20年後の危機を回避する最後のチャンスだとみてます」だの、あいもかわらずの虚言、大言壮語ぶりを見たとき『職業市長』がよくいうよ、と苦笑したのはいうまでもない。
虚言市長が名誉毀損で敗訴した事実をスルーした悪意
また、映画の最後のテロップというのは、ご覧になった方ですら記憶にないかもしれない。石丸前市長が恫喝裁判で提訴された際の原告市議の記者会見は本編の中で伝えたにもかかわらず、その裁判で敗訴した結果はスルーして、最後の最後に観客があくびして席から立とうとするころに数秒のテロップで映じて見せるという姑息な編集をこの映画はしているのだ。
このテロップ1枚に、この〝石丸ヨイショ映画〟が秘める原告の人権を軽視した偏向ぶり、詐術が凝縮されているともいえるだろう。
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