スイスのブドウ品種⑦&⑧ GAMARET & GARANOIR:ガマレとガラノワール
ボジョレーヌーヴォーの季節になったので、ボジョレーヌーヴォーの原材料であるブドウの子供たちを紹介させてください。
GAMARETとGARANOIRは、親が全く同じブドウ品種です(お気づきのとおり片親はGamey:ガメイです)。
そのため、姉妹と言われたり双子と言われたり…。
ちなみにあえて”姉妹”なのはフランス語で「ブドウ」は女性名詞で”vigne”
だからと考えられます。
見た目も異なるため姉妹の方がしっくりくるでしょうか。
原産地
ガマレもガラノワールも、来歴はしっかりしています。
1970年に、スイスのPullyにあるAgroscope研究センターで開発されました。
PullyはVAUDにあります。
ただし、ガマレとガラノワールが種(しゅ)として安定し、安全性や気候に対して耐えうるかどうか等を調べるために多くの試験を必要としたため、ブドウ品種として認可されたのは1990年と、実に20年後でした。
この開発の目的はブドウの病害に抵抗できるブドウを作ることでした。
ブドウ品種を新しく作るのは決して簡単な工程ではありません。
何十粒、何百粒、あるいは何千粒もの種子を発芽させるわけですが、同じ親品種から生まれたものでもそれぞれ個性があります。
望ましい結果を満たしたブドウ品種だけが市場に出る前に承認されるのです。
文献を色々と読んだ結果、どうやらガマレの方が少しだけ優秀なようです。
品質に厳しいフランスでも複数のAOCで認められている。
(特にボジョレー、ラングドック、ロワール渓谷、プロヴァンスetc)冷涼で標高が高いエリアにも適している。
カナダでも研究が進み、耐寒性の試験が一部成功を収めている。
安定しているため、更に交配して子孫を作ることができる。
ガマレとガラノワールに共通する特徴も沢山あります。
灰色カビ病(ボトリティス・シレネア)に抵抗性がある。
早熟で、酸が低く、フェノール(ブドウ香等)の安定後も糖度を増すために木の上で熟成可能。
酸度が低いため、ワインを作る時に構造の整合性を保つには難しいバランスを保たねばならない。
アメリカ西海岸にも進出。1999年にはワシントン州立大学で研究開始。
UC DAVISにおいても基礎植物として保管される。
ちなみにガラノワールには、プラムの風味と素朴な花の香り(Earthy flowers)というガマレにはない特徴があります。
GAMARETの名前の由来
流石に優秀なブドウ品種なだけあって、名前の由来は単純明快です。
ちなみに開発中の名称は (Pully) B-13でした。
GARANOIRの名前の由来
こちらは、市場に流通する直前までPully B-28と言われていたそうです。
最終的にこの名前に決まった経緯文書までは発見できずでした。
ただ、ガラノワールはワインに濃い色やタンニンを提供する役割が大きい
ため、そこから来た名称だとしても違和感はありません。
DNA分析結果
こちらは、分析するまでもなく交配種は疑い有りません。
ガメイはスイスでも良く育てられている品種ですから、後日別の記事で案内させて頂きます。
ワインお好きな方は説明がなくとも良くお分かりの方が多いかと存じます。
ガメイは毎年11月の第3木曜日に解禁されるボジョレーヌーヴォーの原料であり、最近はヌーヴォーのみならず質の高いワインが作成されることで知られています。
片親のReichensteinerは白ブドウ品種です。
ミュラー・トゥルガウと、マドレーヌ・アンジェバインと アーリー・カラブレーゼを交配した白ブドウで、1939年に初めて育成されました。
ドイツのラインヘッセン以外ではイギリスとニュージーランドで栽培されているものの、栽培は減少傾向です。
こちら単体でワインを作ると酸味が少なすぎて味わいがニュートラルに傾きがち、悪く言うと特徴がなくなってしまいます。
ただ、だからこそ安定したワインが造れる品種とも言えます。
GAMARETやGARANOIRから作られたワインの特徴
基本的に、GAMARETとGARANOIRを両方用いたブレンドのワインが造られます。
わざわざ親が同じブドウを混ぜるのは冗長だと感じるかもしれませんが
これによりそれぞれの特徴の良い所を組み合わせることができます。
GAMARET:深い色合い、力強いタンニン、立派な酸の構造。
ある程度の熟成に適している。
GARANOIR:独特なプラムや果実味を主体とした力強いアロマ、
コショウのようなスパイスのニュアンス
特にフランス語圏のスイスワインは軽くなりがちなのですが、GamaretとGaranoirの早熟性と濃い紫色が重厚感という特徴をもたらします。
造り手さんによって全く味の異なるワインです。
正直に申し上げますとワインをお好きな方ほど、飲む方によって
お好みの相性があると感じます。
もしかしたら違うかも、と思うことがあるかもしれません。
しかし、一度少し違ったと思ったからと言って諦めていただくには
ブドウのポテンシャルが高すぎるため、勿体ないのです。
是非、ご自分にあった造り手さんのものを飲んでからの評価をお願いしたいと思います。