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スイスのブドウ品種⑥ HIMBERTSCHA:ヒンバーツァ 

Himbertscha(ヒンバーツァ)は「失われた品種」とされたブドウ品種です。
1970年代にJosef-Marie Chantonによって再発見されたため、ほぼChantonの畑でしか作られていません。
ワインとして販売されるのはChantonのみ、今は、息子のMarioさんが父が発見したブドウを守ってワインの生産を続けています。

  • 春の野草やハーブを思わせる風味で、辛口だが豊か

  • 鯖のへしこと大変良く合う

  • スイス最高標高とされるVisperterminenの畑で作られるため繊細な風味

Himbertscha

原産地

Valais北側が原産地だと考えられます。

1970年代にWädenswil(チューリッヒの北側)のワイン醸造家学科を卒業したJosef-Marieが消滅寸前の極限状態だったHimbertschaを再発見しました。

Josef-Marie Chantonさん(Himbertschaを再発見したころ)
Josef- Marieさん、現在。

救出後、再栽培が開始したのは1986年です(一部、1984年の表記がみられるもののChanton公式の情報を優先)。
一部Chantonから他の醸造家にも分け与えられ、場合によってはChasselasとブレンドしてワインが造られているようです。

ただ、Himbertscha単体のワイン生産はChantonのみとのこと。

なお、Himbertschaはブドウ品種的に収量が高くなりがちなため、質の高いワインを作るには厳しく制限されなければなりません。
腐敗もしやすいブドウ品種であるものの、Valaisの理想的な気候条件によって上手に
栽培されています。

Himbertschaの名前の由来

im Bercla : 棚にある
※ Berclaはイタリア語の”Pergolaペルゴラ:棚仕立て”のドイツ語

ブドウの木の棚仕立(ペルゴラ)

なお、ドイツ語でラズベリーのことを”Himbeeren”といい、語感は若干似ているものの、そちらとは全く関係がありません

シノニム(同義語)はHIMBRAETSCHA / HIMPERTSCHA /  PERGOLA です。
ブドウのシノニムは多数存在する場合もありますが、Himbertschaは大変覚えやすいと思います。

DNA分析結果

2004年に最大50個のマイクロサテライトマーカーを用いて、推定近縁種の
解析が行われました。

Himbertscha = Humagne Blanc × ?
HimbertschaはHumagne Blancとは各遺伝子座で少なくとも1つの対立遺伝子を共有しており、親子関係にあると考えられる。

Vouillamoz et, al. Identity and parentage of two alpine grape cultivars from Switzerland (Vitis vinifera L. Lafnetscha and Himbertscha), January 2004, Vitis -Geilweilerhof-43(2):81-87
Himbertschaの親の一つとされるHumagne Blanc

Humagne BlancはValaisの写本に記録される最も古い品種のひとつです。
その名前は、12世紀(1313年)のRegistre d'Anniviersに登場しました。

これ以上に古い品種がValaisでは見つかっていないことから、Himbertschaの片親はHumagne Blancである、と結論づけられた形です。

Palaeogenomic insights into the origins of French grapevine diversity (Nature Plants | VOL 5 | JUNE 2019 | 595–603)

もう一つの親は正確にはわかっていません。
ただおそらく、Valaisではもう栽培されていないMuscatの交配種ではと
予想されています(予想が覆るのは良くあります)。

Himbertschaから作られたワインの特徴

まず、麦わら色と言いますか、金色と言いますか、艶のあるカラー
特徴の一つです。

生産者のMarioさんはHimbertschaのワインを以下のように表現しています。

Mario Chantonさん。2008年からマネージングディレクターに就任。

春のハーブ、野生のニンニク、タンポポ、ヘーゼルナッツ、レモンのアロマがある。味わいは苔、レモン、ブラジルナッツによく似ている。

確かにレモンのニュアンスはあるとはいえ、どちらかというとレモンバームが近いと感じました。
苦みよりも若干ナッツのまったりした雰囲気、タンポポは言い得て妙です。

野生のニンニクはわからなかったのですが、繊細ながらも記憶に残る味が
その強さを感じさせます。

ペアリングもこの風味に合わせて推奨されています。

  • 魚のタルタル

  • レモン風味の魚

  • マス

  • 前菜全般

私個人としては和食の懐石に合わせた際の、八寸にありました
鯖のへしこと一番良く合うのが、意外性があって楽しく感じました。

飲んだことのある方、是非この意見への賛否両論お待ちしております。

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