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映画「呪餐 悪魔の奴隷」と「シャイニング」について

※この記事はインスタグラムにあげたものに、少し書き加えてあります。

ずっと気になっていたインドネシアのホラー映画「呪餐」を観ました。
前作「悪魔の奴隷」は未見ですが、これだけでもめちゃめちゃ怖かった…

舞台は海沿いの平地にぽつんと一棟だけ建つ14階建てのアパートメント。
終末感がすごい。佇まいがすでに事故物件です。
水害の危険がある地域で、建物ごと国の所有になっているため
住んでるのは仕方なくここに流れ着いた人ばかり。

それぞれ事情を抱えて、陽のささないアパートで疲れた顔で暮らしている人たちを見ているだけで既にしんどい。
この欠陥住宅で、エレベーターが落下するという不幸な事故が起こって10人が亡くなります。
救急車や警察を呼ぼうにも、豪雨による避難勧告が出ているので外部からの救援はこない。
住民は浸水の危険があるアパートで、遺体とともに嵐の一夜を過ごすことに…。

物語が動くのは半分を過ぎたころなのですが、それまでのじわじわと染み入ってくる心身ともに負担がかかるような恐ろしさがもう本当に嫌だ。
怖いけどここで見るのをやめたらさらに怖い。早く朝がきてぇーーーと祈りながら見てました。

※以下ネタバレありです、ご注意ください。

アパートが左右対称の作りになっていたり、外から助けがこなくて建物の中を逃げ回ったり、1階ロビーで遊んでいた4人の少女の背格好や服装が似ていたり、そしてラストに掲げられた写真の中に、今と全く変わらない人物が写り込んでいたり、あちこちにシャイニングオマージュと思われるシーンがありました。
シャイニングは雪山の綺麗な高級ホテルでしたが、こちらは海沿いの貧困層向けの集合住宅というのもなんだか対照的だなぁと。

タリは生き残ってリニの弟トニーと結ばれるのかと思いきや、いきなり死んでびっくり。
しかも死に方がダストシュートに落ちて…って嫌すぎる。

ダストシュートで必死に落ちまいとつかまるタリに、悪魔?の声が彼女は地獄にくるような悪いことをしたのか?と問います。もう一つの声が
「悪いことはしていない、ただここ(地獄?アパート?)にくるために正しいことをした」
と答えた後、タリに向かって口から胎児を吐き出して彼女を突き落とすわけですが。
あれは彼女が中絶をしたことを意味しているのかな、と思いました。

イスラム教での中絶は、年代によって禁止されていたり、殺人罪扱いになったり、母体保護のためなら許容されていたりと色々みたいです。
1982年にイランの法律でキサースの刑に処されるようになったとあるので、インドネシアでも法に反する行為とされていたのじゃないでしょうか。
キサースというのは、「目には目を」のハンムラビ法典にのっとった処刑法とのこと。
もしもタリが中絶をしていて、それが違法だった場合、産道を通って生まれ出ることができなかった胎児と同じように、ダストシュートの中から出られなかったのも納得がいくような気がします。

なぜ墓地の横にあんな高層アパートがぽつんと建てられたのかは謎ですが、国の所有地ということはカルト教団とのかかわりがあったのかも。
アパートの住民のほとんどはカルトの生き残りだと考察している人もいましたが、そうじゃない住民も半分くらいはいるような気がします。

イスラム教では人が亡くなったあと、体さえ残っていれば生まれ変わって天国に行くことができると信じられているそうです。
そのため亡くなったらすみやかに土葬にするのが一般的で、日本のようにお通夜やお葬式はせず、死者に祈りを捧げたらそれで終わり。
天国にいけるプロセスを踏んでいる途中なので、泣いたり悲しんだりすることはあまりないとのことで、イスラム教圏とゾンビとの親和性はどの国よりも高いのかもしれません。

いろんな闇や謎が次作に持ち越されたので、3部作の真ん中だけを見るという中途半端なことになってしまったけれど、呪餐だけでもいろいろ考えさせられるラストでした。

そういえば、亡くなった人に全身を白い布でぐるぐる巻きにして顔だけ出していましたが(カファンと呼ぶのだそう)
顔に白い布をかける日本とはだいぶ様子が違うなぁとそんなことを思いました。
顔だけ出てるのほんとに怖いから。

トニーが、自治会長のような役目をしている先生(イスラム教の牧師?)に、遺体が並べてある部屋の窓が開いてないか13階までちょっと見てきてくんない?マッチと懐中電灯どっちがいい?と聞かれるシーンはちょっと笑ってしまいました。
いやどっちも嫌すぎるよ先生 …。

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